第41話 株価急上昇?

 日曜日はいい天気になった。僕はライダージャケットを着てレブルで出かける。琴音さんは心配そうに見送ってくれた。無事にそいとげの家へ到着する。


「こんにちは、お邪魔します」声をかけるとそいとげが出てくる。


「おっレブルの新車か、白なんだ、いいなあ。裏の駐車場に入れろよ、もう二人は来てるし」


「えっ、二人はもう来てるの?」


 裏の駐車場に停めると佳さんと茉白ちゃんが出てきた。


「凄い!星七君のバイクカッコいい」佳さんが近づいて見ている。


「星七君、バイクに乗る時はそんな服なんだね」茉白ちゃんがじっと見てくる。


「茉白ちゃん、そんなに見たら恥ずかしいよ」僕は頬がほんのり赤くなる。


「おや〜、星七君が赤くなってるぞ〜!」佳さんのいじりが始まってしまった。


「佳ちゃん、やめてよ」茉白ちゃんが嗜めてくれた。


「茉白、後ろに乗っけてもらったら?」


「何言ってんの」茉白ちゃんが眉を寄せた。


「すみません、免許を取って1年経過しないと2人乗りはできないんです」


「真面目か!」佳さんが笑った。


 どうも佳さんのペースにはついていけないと思う。


「皆さん、お茶が入りましたよ」そいとげのお父さんが優しく声をかけてくれた。


 4人は店の奥にある喫茶スペースへ移動した。とても香りの良いお茶と和菓子が用意されている。


「「「ありがとうございます」」」挨拶して席へ着く。


「どうぞ」そいとげは嬉しそうだ。


 喫茶スペースはテーブル席が5席ほどあって和モダンのいい感じだ。しかし最近は使われていないらしい。


「一真君、美味しいね」佳さんが微笑む。


「嬉しいです、佳さん」そいとげから笑顔がこぼれ落ちる。


 佳さんが一真と呼んでる事に不思議になった僕は大きく瞬きした。それを見たそいとげは、僕に近づき耳打ちする。


「佳さんとLINEで繋がって話したんだ、父さんの前で『そいとげ』と呼ばれるのはちょっとな………」


「そうだな」僕は軽く頷く。


 どうやら佳さんは心遣いのできる人だったようだ。あんなに人をイジるキャラなのに、そう思うと不思議な気がした。


 お茶と和菓子はとても美味しい、流石だと思った。琴音さんが、あのお父さんならと言った意味が少しわかった気がした。


「なあ、そい……一真、バレンタイン用を作ったら、写真を綺麗に撮ってチラシやポスターにして人目につくところへ置いたらどうだろう?」


「えっ………そうだな」視線が斜め上になった。


「それいいんじゃない?デザイン部が作ってくれるよ、プリンターとか有るし」佳さんが頷く。


「星七君のアイデアっていつも凄いよね」茉白ちゃんが僕を見つめる。


「お〜!!星七君の株価が急上昇してます!」佳さんがイジってくる。


「佳ちゃん、いい加減にして!」茉白ちゃんが睨む。


「は〜い」佳さんは舌をぺろっとだしてニンマリした。


「ちょっと待って」そいとげは店の奥に入って行った。


しばらくするとニコニコと戻ってくる。


「チラシやポスターは商店街や駅ビルに置いてもらえるらしい、地元商店街の活性化でそんな場所があるらしいんだ」そいとげは力強く拳を握った。


「いいねえ、じゃあカッコいいポスターやチラシを作ろうよ」佳さんは乗り気になっている。


「その前に綺麗な和菓子を作らないといね」僕はそいとげを見た。


「大丈夫、デザイン部の数人がもう進めてくれてるんだ」


「そうなんだ、よかったな一真」


「ああ、ヤホーのおかげだよ」ニコニコと僕見ている。


僕は名前じゃなくてヤホーのままなんだと何となく思った。


楽しい時間を過ごして帰ったきた。

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