第40話 本命チョコ?

 土曜の夜になった。琴音さんは珍しく早く帰ってくる。


「ただいま、星七」


「お帰りなさい」


 早速ランデビ琴音に変身している。僕のまぶたの裏には大量の画像が張り付いているのだ。最近少し変化が起きている、それはパンツやブラにも色んなデザインがある事を認識した。


 僕はもう自分が変態になってしまったと思う。まだ高校1年なのに女性の下着にくわしいなんて絶対に人にはいえない。そう思うと琴音さんが憎く思た。


「ねえ星七、ちょっと来て」


「なんですか?」


「星七はチョコは嫌いじゃない?なんか苦手な味とかある?」


「いえ、別に好き嫌いはほとんどないです」


「じゃあこれでいいか」そう言って液晶画面を見せた。


見るといかにも高価そうなチョコが、宝石箱のような箱に入っている。


「高価そうなチョコですね」


「星七と玲司さんにはこのチョコにしよう、他の人にはこれで良いよね?」


次に見せられたチョコも高級そうだ、しかも値段が8千円と表示されている。


「えっ、これをもらった人は本命チョコだと思っちゃうんじゃないですか?」


「そうかなあ?」不思議そうな表情だ。


「ちなみにさっきのチョコの値段は?」少し不安になる。


「さっきのは値段なんてわからないわよ、だってベルギーから取り寄せてるからね。毎年ママが大切な人にって輸入してるやつだからね」


「え〜!」言葉が出ない。


 一体、琴音さんのママはどんな人なんだろう?その存在が怖くなった。


「ねえ、茉白ちゃんから本命チョコはもらえそう?」小悪魔顔はもはや通り過ぎて魔女のような表情で見てくる。


「そんなのまだ分かりませんよ」眉を寄せる。


「しっかりアピールしとくのよ」笑っている。


「琴音さんは玲司さんへ本命チョコを渡すんですか?」


「う〜ん、玲司さんは本命じゃないけど、お世話になってるからね」表情が少し曇った。


「そうなんですか?」


「本命は星七だけだよ」口角を上げる。


「からかわないでください、純情な高校生を」


「もちろんからかってないわよ、大好きなのは星七だけだもん」


「はいはい、イトコですからね」僕は話を打ち切った。



「明日レブルでそいとげの家へ行ってきます」


「そう、寒いから気をつけてね」心配そうな顔だ。


「バレンタインに和菓子のチョコ風味を作ろうって事になったんです、それで協力するんですけど、どうしてもレブルが見たいってうるさくて」


「そうなんだ、良いアイデアだね、もしかして星七のアイデア?」


「まあ、そうですけど………」


「星七のアイデアはとてもいいと思うよ、女の子のバイクの企画もよかったし」


「あれは琴音さんのサポートがあったからですよ」


「そうかな、星七の発想はいいと思うけどなあ」


「そうですか?」僕は半信半疑だ。


「良い発想なんだから、広めるにはしっかり宣伝することよ、多くの人の目に留まらなければ良いアイデアも埋もれてしまうわ」


「そうですか………そうかもしれませんね」僕は考え込む。


「しっかり写真を撮ってチラシを作り目立つ所に置いてみたら?」


「そうか、それは良いかもしれませんね」


「そいとげ君に提案してみたら?」


「はい、そうしてみます」


「きっとあのお父さんなら良い物を作れると思うし」


琴音さんは優しく微笑んだ。

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