第39話 和菓子プロジェクト?

「茉白はバレンタインデーにチョコを作るんでしょう?」佳さんが覗き込む。


「え………それは………」


「いいなあ、ヤホーは本命チョコがもらえるんだ」そいとげが羨ましそうに言った。


「えっ、僕がもらえるなんてまだ決まってないと思うけど………」


「おや、ヤホーくん、君は茉白の本命チョコが他の人に渡されてもいいのかな?」小悪魔顔で覗き込んできた。


「えっ、それは嫌ですけど………」僕は俯く。


「佳ちゃん!」茉白ちゃんは佳さんの腕を思い切りつねった。


「イタタタ!そいとげ君助けて〜」顔を顰める。


「茉白ちゃん………少しお手柔らかに………」そいとげはオロオロしている。


 茉白ちゃんは頬を膨らしたまま手を離す。僕は話を変えようと思ってそいとげに言った。


「バレンタインは和菓子でやらないのかよ」


「え〜、和菓子にチョコは無いからなあ」眉を寄せた。


「でも、和菓子でチョコ風味だったら有りなんじゃない?」


「そうかなあ………」考え込んでいる。


「良いかも、みんながチョコをあげてる時に、これチョコ風味の和菓子だけどって渡したら目立つかも」佳さんが食いついてくれた。


「そうですか?」そいとげは考え込む。


「ハートの形で心とか書いてあったりして」佳さんはさらに乗ってきた。


「そうだね、みんなからチョコをもらうと飽きるからチョコ風味の和菓子だと目立っちゃうかもね」茉白ちゃんまで頷いている。


「そうか、そうかもしれない」そいとげは徐々に乗り気になってきたようだ。


「そいとげの入っているデザイン部にデザインしてもらったらいいんじゃない?」


「そうだね、デザイン部のみんなに相談してみるよ」


 変なキッカケだったが、バレンタイン和菓子プロジェクトが始まった。



 翌日また図書館に集合して作業を始める。溜まっていた作業はほぼ終了した。


「助かった、ありがとうございます」僕は佳さんに頭を下げる。


「そいとげ君、ありがとうね」茉白ちゃんもお礼を言った。


「いいんです、俺凄い収穫があったんで逆に感謝してます」


「えっ?」


「これ、お茶のお供にどうぞ」


 そいとげは箱を差し出した。開けてみるとハートの形をした和菓子が入っている。


「もうできたの?」僕は驚いて箱の中をのぞいた。


「可愛い〜!」佳さんと茉白ちゃんも覗き込む。


「昨日帰ってバレンタインの話を父さんにしてみたんだ、そしたら案外良いかもなってこれを作ってくれたんだよ」


「そうなんだ」


「よかったら食べて見てくれよ」そいとげは嬉しそうに言った。


茉白ちゃんがお茶を用意してくれた。10個程入っていたので、試食してみる。


「美味しいじゃん」佳さんが思わず漏らす。


「そうですか?」そいとげは嬉しそうだ。


「うん、チョコ風味だけど和菓子の良さも感じられて美味しいよ」茉白ちゃんもニッコリしている。


「よかった、俺デザイン部に相談してやってみるよ、ありがとうなヤホー、それに佳さんと茉白ちゃんもありがとう」


「上手くいくといいな」僕は心から応援する気持ちになった。


「そういえば今度の日曜は天気が良いらしいから俺ん家に来いよヤホー、レブルも見たいし」


「良いけど………」


「私もそいとげ君の家に行きたい」佳さんがそいとげを見る。


「もちろんいいですよ、佳さんも茉白ちゃんも一緒にきてください、お店の奥に喫茶コーナーがあるのでお茶会しましょう」そいとげは何度も頷いた。

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