第38話 お茶会?
教室はやっと落ち着いてきた。1月も半ばになると浮かれた雰囲気はなくなり、淡々と日常が過ぎていく。
隣のそいとげはこれまでと違って圧迫感が無くなっている。僕がバイクを持っていることがショックだったらしい。肩の力が抜けたそいとげは話しやすくなっている。なんか不思議な感触だ。
図書館の仕事は雪村先輩が来なくなって溜まる一方だ、改めて先輩の偉大さを知った。亜斗夢先輩が来てくれると助かるのだが、噂では大変らしいのでお願いするわけには行かないようだ。
僕と茉白ちゃんは遅くまでバタバタと働いている。ブラック企業ってこんな感じかなあと思った。
「ふう………今日も残業か………」ため息が漏れる。
「どうしたんだよヤホー?」そいとげがチラッと見た。
「図書部員は3年生が来なくなって作業が大変なんだよ」
「そうなんだ、俺手伝おうか?」
「えっ、本当に?、だったら助かるけど………」
「分かった、今日から手伝うよ」ニッコリしている。
う〜………優しくて気持ち悪いかも、でも助かるからまあいいいか。そいとげなら茉白ちゃんも知ってるしいいかもしれない。
「デザイン部の方は大丈夫なのか?」
「大丈夫、図書館で研究するって言ったら出られるし、それに俺はそんなに期待されてないからな、ハハハ」乾いた笑いが溢れている。
「じゃあお願いするよ」
「OK!任せとけよ」憎めない笑顔を見せた。
放課後になってそいとげと図書館へやってきた。なんと茉白ちゃんがイトコの佳さんを連れてきた。どうやら茉白ちゃんも助っ人をお願いしたようだ。
「奇遇だね、お互いに助っ人を連れてくるなんて」
「そうだね」
僕と茉白ちゃんは顔を見合わせて少し笑った。佳さんはそれを見てニヤリとした。
「僕の友人のそいとげです」僕は佳さんへ紹介する。
「初めまして、2年の赤松佳です、よろしくね」ニッコリ手を出した。
「よ、よろしくです」そいとげは恥ずかしそうに握手する。
早速作業の説明をして始める。四人でやると流石に早い、2時間ほどで溜まっていた作業の半分が終わった。
「助かったよ、残り半分になったから」僕は頭を下げた。
「また明日も手伝うから大丈夫よ」佳さんが口角をあげる。
「あっ、俺も手伝います」そいとげまでニコニコしている。
「じゃあ今日はこれまでにしてお茶にしようよ」茉白ちゃんは準備していたらしくお茶とクッキーを準備した。
僕は茉白ちゃんの気遣いに思わずニッコリ見てしまう。佳さんがまたニヤリとしている。机を寄せてお茶会が始まった。
「ヤホーの家はいいなあ、親が理解があって」そいとげが何気なく一言漏らす。
「そうなの?」佳さんがチラッと僕を見る。
「だって、バイクの免許取ったらすぐにバイクを買ってもらえるんだよ」羨ましそうに言った。
「そうなんだ、そういえば誕生日のプレゼントは高価なパッドだったよね」茉白ちゃんまで僕を見た。
「そ、それは………」
「何、何、ヤホー君はおぼっちゃまなの?」佳さんが身を乗り出して見た。
「だって車はG T Rだよ、多分2千万くらいするんじゃない?」そいとげが変なフォローをしてくる。
「「凄〜い!!」」茉白ちゃんと佳さんがハモるように言った。
「ねえねえ、ヤホー君、仲良くしようよ」佳さんがすり寄ってくる。
「佳ちゃん、やめてよ、お金に目が眩んで近づくみたいな感じは」
「あっ、茉白が怒ってる、ヤホー君に近づいちゃいけないのかなあ〜?」笑っている。
「知らない!」茉白ちゃんは頬を膨らした。
「あ〜!茉白が赤くなってるう」佳さんはさらにイジっている。
「えっ!ヤホーと茉白ちゃんってそんな関係だったの?」
そいとげの一言が一瞬時間を止めた。図書館に冷たい風がヒューっと流れた。
「だって茉白の部屋にはヤホー君からのプレゼントが大切そうに飾ってあるもの」ニヤニヤしている。
え〜、まだイジるんだ。僕は佳さんに恐怖を感じ始めた。
「佳ちゃん!」茉白ちゃんは唇を噛んで睨んだ。
僕は何か話を変えたいと思った。
「僕の家は大したことないよ、それよりそいとげの家は老舗の和菓子屋さんで吉城寺の商店街にお店があるんだよ、しかも三代目で跡継ぎだからね」僕は話の矛先をそいとげに向けた。
「えっ!そうなの?」佳さんは上手く食いついてくれた。
「えっ、まあそうですけど………」オロオロしている。
「じゃあ、そいとげ君!仲良くしようよ」佳さんはそいとげにすり寄った。
「あっ、はい、仲良くしたいです」そいとげは固まっている。
「でも、なんでそいとげって呼ばれてるの?」首を傾げている。
僕はそいとげの由来を説明した。
「いいじゃん、老舗の跡継ぎで、しかも一生愛してくれるんだよね」
「え………」そいとげは完全に固体化した。
茉白ちゃんは何度も瞬きして見ている。
「あれ〜!茉白、そいとげ君に近づいても嫌がらないのね、どういうことかな?」
「え………」茉白ちゃんも固体化した。
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