第37話 Hな本の横に………

 僕は吉城寺駅を出てそいとげの家へ向かった。和菓子屋さんへ到着するとそいとげがニヤニヤ出てくる。


「ヤホー、裏へ回れよ」親指で方向を示す。


「何だよ、面倒臭いなあ」仕方なくお店の横から裏へ回る。


「ジャーン!見てくれよ俺の愛車を」駐車場にある一台のバイクを指差した。


赤いカマキリのような形をしたバイクでCT110とロゴが入っている。


「へ〜、このバイクを買ったのか?」僕は瞬きする。


「かっこいいだろう?、ハンターカブだぞ」得意顔でバイクをさすっている。


「ハンターカブ?」


「何だよ、知らねーのかよ」少し不満そうだ。


「うん………」


「ヤホー、お前本当にバイク好きなのか?」


「僕は好きになったのが最近のことだからなあ………」


「そうなんだ、やっぱりミコトさんの影響か?」


「まあそんなとこかも」


「なんだかんだ言ってもミコトさんに影響されてんじゃん」


「まああの人は影響力強めの人だからねえ」


 それからそいとげは僕にカブの講義を始めた。僕は寒さに震えながら仕方なく話を聞いている。


 そいとげのお父さんが、お茶を用意して中に入るように言ってくれた。僕は助かったと思った。


 そいとげの部屋へ初めて入った。車やバイクのポスターが所狭しと貼ってある。そしてベッドの横にはミコトさんがバイクの前で微笑んでいるポスターが貼ってある、僕はなんかいやな気分がした。小さな本棚に美琴さんがサインした雑誌を置いてある、しかしその横にはHな本も置いてある。僕はミコトさんが少しかわいそうに思えた。


「なあヤホー、バイクは買わないのかよ?」


「えっ………もう持ってるけど………」


「うそ!何買ったんだよ?」僕のかたを掴んで揺さぶった。


「レブル………」


「え〜!レブル買ったのか?」驚いた後少し元気がなくなった。


「いいなあ、お前の両親は理解があって………」


「うちの父親はかなり強めのモーターファンだからね」


「そうなんだ………」ますます羨ましそうな表情だ。


ふと壁のポスターに目が止まる。父さんの乗っているG T Rだ。


「僕の父さんが乗っている車はアレだからね」指差した。


「えっ!G T Rに乗ってるのか?」椅子に崩れ落ちた。


「僕はあまり好きじゃないけどね、ボ・ボ・ボってうるさい車だから」


「す、すげ〜なあ………」ほとんど固体化している。


 僕は不思議になった、そんなに凄い車なんだろうか?しかしそいとげの様子を見ると認めざるを得ない気がした。


「なあヤホー、レブルを見せてくれよ、それにG T Rも見たいし」


「えっ、父さんは今出張中で車もないよ」


「じゃあレブルだけでも見に行くよ」


 僕は困った、マンションにそいとげが出没するようになると、琴音さんとの二人暮らしがバレてしまうかもしれない。


「じゃあ今度天気がいい日曜に乗ってここへ来るよ」


不本意ながら約束してしまった。僕はガックリと疲れて家へ帰った。


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