第36話 手作り弁当!
今日は朝から雪が降っている。僕は茉白ちゃんからプレゼントされた手袋をして学校へ行こうとしていた。
突然後ろの襟を掴まれて引っ張られる。
「ゲホッ!何するんですか?琴音さん!」
「ねえ星七、可愛い手袋してるじゃん、どうしたのかなあ〜?」ニヤニヤと見ている。
「これは茉白ちゃんからのクリスマスプレゼントです………」俯いて答えた。
「へ〜、じゃあ星七は何をプレゼントしたのかなあ?」さらにニヤけている。
思わずクマのクリスタルが脳裏に浮かぶ、しかしそれを言うわけにはいかないのだ。じわっと焦りが体を支配する。
「あのう………小さな人形です………」
「ふ〜ん、どんな人形?」さらに問い詰めてきた。
「座敷童の人形です」またとんでもない事を言ってしまった。
「座敷童の人形???」
「黒髪のコケシみたいな人形で茉白ちゃんみたいに可愛かったので………」僕の嘘は収拾つかなくなっている。
「そう、黒髪の人形?」眉を寄せて天井を見ながら考えている。
納得はしてないようだがそこで話が終わったので僕は少しほっとした。最近僕は嘘つきになっていると思い少し落ち込んだ。
今度何かきっかけがあったら茉白ちゃんへ座敷童の人形をプレゼントしようと思った。それで嘘がチャラになるわけじゃないが、心の中に言い訳が欲しかったのだ。
授業が始まった、しかし全く身が入らない。もう昼休みが待ちどうしくて仕方がないのだ。茉白ちゃんの手作りお弁当が食べられると思うと気分はルンルンなのだ。
そいとげが急に袖を引っ張った。
「何だよ!」せっかくの楽しい気分を邪魔しやがってと思い、少し睨む。
「今日の放課後、俺ん家にこいよ、見せたいものがあるんだ」
「いやだよ、雪降ってて寒いし」眉を寄せる。
「いいから来いよ、来なかったら絶交だぞ!」
「OK、絶交で問題ないよ」
「いいから来いよ、ヤホーも好きなものだからさあ」
あまりにしつこいので渋々行く事にした。
待ちに待った昼休みになった、僕はお茶を二つ買って図書館へいそいそとやってくる。しばらくすると茉白ちゃんがトートバッグを下げてにっこり現れた。僕と茉白ちゃんは奥のメンテ室へと入って行く。
「なんかいつもより上手く行かなかった、緊張したからかなあ?」少し唇に力が入る。
「どんな感じでも僕は最高に嬉しいです」心の声がダダ漏れする。
早速テーブルの上に置かれたお弁当の蓋開けると、卵焼き、ウインナー、唐揚げ、そしてピクルスが入っている。ご飯には小さい梅干しと海苔が乗っている。
「うわ〜!いいなあ、美味しそうだよ」僕は拍手して喜んだ。
「どうぞ召し上がれ」茉白ちゃんは微笑む。
「あっこれ、お茶を買ってきたのでどうぞ」
お茶を渡すと向き合って手を合わせ『いただきます』そう言って食べ始めた。
「卵焼き美味しいなあ、香りもとってもいいよ」
「そう、気に入ってくれた?」
「うん!」僕は何度も頷く。
「唐揚げもとっても美味しいよ、サクサクでいい感じ」
「それは竜田揚げだよ」
「竜田揚げ?」
「そうよ」
「ごめんね知らなくて………」固まってしまった。
「いいの、美味しいと思ってくれたんなら」優しく微笑んでくれた。
「これから茉白ちゃんに料理のことをいっぱい教えてもらえたらいいなあ」
「うん、しっかり教育してあげるわよ」クスクス笑っている。
「「ごちそうさまでした!」」
僕の幸せなお昼休みな名残惜しいが終わりを迎えた。
「そうだ、今日は放課後佳ちゃんと会うの、だから図書館に来れないんだけど………」申し訳なさそうに呟く。
「大丈夫だよ、僕が来て簡単に済ませるから、それに僕もそいとげの家に行かなくちゃあいけないし」
「そう、じゃあ作業は明日の放課後にしようよ」少しほっとした表情になった。
「そうしよう、じゃあまた明日ね」
二人とも手を振って教室へ戻った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます