第32話 プレゼント?
クリスマスの朝僕は急いで駅ビルへ行き、もう一個クマのクリスタルを買った。琴音さんと同じ物になってしまったが、今から別のものを探す余裕はなかったのだ。
いつもの駅カフェで待っていると、茉白ちゃんが小走りでやってくる。
「ごめんね、遅くなっちゃって」少し曇ったメガネも可愛いい。
「ううん、僕も今来たばっかりだから」
「そうなんだ、よかった」茉白ちゃんはゆっくりと胸を撫で下ろす。
クリスマス限定のホワイトチョコケーキと紅茶でささやかなクリスマス会が始まった。
「あのう………これ」僕はプレゼントを差し出す。
「えっ、プレゼント?」少し驚いたようだったが、嬉しそうに受け取って開けてみる。
「カワイイ!素敵!星七くん何で私がクマさんが好きなのを知ってるの?」首を傾げる。
「うん、カバンに小さいクマさんが付いてたから好きなのかと思って」
「あっそうか、そうだったね」少し恥ずかしそうにニッコリした。
「あのね、私………お小遣いあまり多くないから、こんなのでごめんね」そう言って茉白ちゃんは紙袋を差し出した。
「えっ、僕に?」
「うん」
僕は満面の笑みになって紙袋を開けた。綺麗な手袋が入っている。
「あっ、手袋だ、欲しいと思ってたんだ、ありがとう」僕は手袋をしたままほっぺたを触る。「あったかいなあ」
「喜んでもらえてよかった」少しホッとしたようだ。
「大切にするよ」僕は手袋を紙袋に戻す。
「ううん、大切にっていうより、いつも使って欲しいなあ」
「そうか、じゃあそうさせてもらうよ」コクリと頷く。
「この前公園で手を繋いだときはドキドキしちゃった」
「僕もだよ」思わず俯く。
「でも、その時に思ったの、指先が少し荒れてるなあって、だからあったかくしてあげたいと思ったの」恥ずかしそうに言葉を漏らす。
「えっ!」僕は自分の手を見て固まる、そして急激に恥ずかしくなった。
「僕は自炊してるんだ、だからかも………」繁々と手を見つめる。
「えっ、星七くん自炊してるの?」茉白ちゃんは大きい目をさらに大きくしている。
「うん高校生になって両親が帰れない日が多くなったから自炊を始めたんだけど、失敗ばっかりだよ」
「そうなんだ、私は中学の頃から料理してるから星七くんよりは少し先輩かも」嬉しそうにしている。
「そうか、だったら色々教えて欲しいなあ」僕は新な話題ができて広がりそうで嬉しくなった。
「うん、私でわかることなら教えてあげるよ」ニッコリ頷いている。
そこからフライパンをダメにしたことや日頃の失敗をたくさん話した。茉白ちゃんは何度も頷きアドバイスもしてくれた。ささやかなクリスマス会は突然主婦の会話になり大きく盛り上がる。時間があっという間に過ぎていった。
「また来年もよろしくね」茉白ちゃんは手を振って帰って行く。
僕も手を振り見送る。帰り道で茉白ちゃんの手料理を食べてみたいと思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます