第17話 美人度は何%?

 僕は茉白ちゃんに癒されて、緩んだ笑顔で帰宅した。すでに琴音さんが帰って来ている。今日は遅いはずではなかったのか?一瞬緊張が走る。


「おかえり星七、今日も茉白ちゃんとデート?」遠慮のない言葉が僕を攻撃してくる。


「いえ、今日は図書館の本の整理が大変だったので………」


「そうなんだ、でも茉白ちゃんと一緒にいたんでしょう?」上目遣いだ。


「まあ、図書部員ですからね………」


「じゃあ、実質デートみたいなもんじゃん」小悪魔顔満開になってきた。


「そんなんじゃないんです!」僕は必死に否定する。


「まあ、今日のところはそういう事にしてあげよう」勝ち誇った顔だ。


「………………………」僕は苦々しい表情で立ち尽くす。


「星七!お・風・呂」


 琴音さんの一言は僕を一瞬で日常業務へ引き戻す。


「はい、すぐに準備します!」僕はお風呂へ逃げ込むように行き、準備を始めた。


 琴音さんはまたランデビ琴音に変身して開放感を満喫している。僕はまた一枚の画像がまぶたの裏に張り付く。今日はベージュか………ため息が漏れる。


 リビングのソファーに腰を下ろすと、前のテーブルにそいとげが見ていた雑誌と同じバイク雑誌が置いてある。どうしよう、見た方がいいのだろうか?いや見ないで何も知らない事にしよう、僕はそう決めた。


 夜になって琴音さんはいつものようにコーヒーをいれてくれた。僕は牛乳を足して少しのむ。琴音さんはソファーでバイク雑誌を見ている。何か触れた方がいいのだろうか?心が揺らぐ。


「ねえ星七、これどう思う?」琴音さんは自分が写っているページを僕に見せた。


「えっ………………」


「これ、私だとバレるかなあ………」


 僕は琴音さんの知りたいポイントを把握すると雑誌をじっくり見た。


「僕は琴音さんだと分かりますよ」


「そうなの?私が言ったからじゃないの?」不審そうに僕を見ている。


「実は友達にバイクのすきな子がいて、今日その雑誌を見てたんです。そして僕は一眼で琴音さんだと分かりました」


「そうなんだ、やっぱりバレちゃうかなあ………」唇に力が入った。


「バレたらまずい事があるんですか?」


「私の素性を大学では隠しているからなあ」


「そうですか、別にバレても問題ないんじゃないですか?」


「そう?実家がいくつもの会社を経営してることが分かると、自然な友達付き合いが出来ない気がしてさ」少し心配なようだ。


「でも、素顔を知らない人は分からないと思いますよ」僕は何となく慰める。


「そうかなあ………」納得していないようだ。


「普段の琴音さんは美人が7割で可愛いが3割だと思うんですけど、雑誌の写真では美人が4割で可愛いが6割って感じです。だからバレないと思いますよ」


「そうなの?星七は私のことをそんなふうに見てたんだ」少し驚いている。


「えっ!何となくそんな感じだと思ってました」


「ふ〜ん、そうなんだ」そう言ってソファーに寄りかかり、ぼんやり天井を見ている。そして突然ニヤリとして僕を見てきた。


「茉白ちゃんは何割と何割なの?」小悪魔感満載で聞いてきた。


「えっ………」僕は後退りする、しかし琴音さんはジリジリと詰め寄ってきた。僕は仕方なく観念する。


「茉白ちゃんは美人が3割で可愛いが7割だと思います………………」俯きながら答える。


「そう、星七は可愛い子のほうが好きなんだね」少しだけ納得したようだ。


 何でいつも琴音さんは茉白ちゃんのことを聞いてくるんだろう?不思議だ。きっと茉白ちゃんをネタに僕をいじってるんだと思い、何となく納得した。

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