第4話


「わー、混んでるねー…。」


お昼休み、私とさっちゃんは購買に来ていた。

目当ては私のお昼ご飯。普段はお弁当なのだが、今日はお弁当を家に忘れてきてしまったのだ。何という失態。


小さな購買には多くの生徒が群がっていて、しばらく近づけそうにない。仕方なくさっちゃんと共に購買の近くの椅子に腰掛ける。


「何買うの?」

「メロンパンとりんごデニッシュ。」

「うわ甘。」

「余裕ですよ。」


ドヤ顔でそう言えば若干引かれた。

いやドヤ顔でいう事じゃないっていうのはちゃんと分かってるよ。でも甘いの好きなんだもん。


その後も人が少なくなるまでさっちゃんと話していれば、購買以外にもう一つ、小さな人だかりが出来ているのに気づいた。


「あれなんだろう。」

「さあ…。」


さっちゃんも首をかしげる。

よく見るとその塊はほとんどが女子生徒で、みんな同じ方向を見つめている。

その先を見れば。


…ああ、なんだ。


「花ちゃんか。」


そこにいたのは笑顔で男子生徒と会話する花ちゃんで。まあイケメンだもんね、顔は、顔はね。喋らなければいいのに。


…けれどこんなに人が集まっているのは久しぶり見た。花ちゃんが赴任して来た時以来だろうか。


そんな私の疑問を感じ取ったのか、さっちゃんが顎で花ちゃんを見るように促す。


「…花ちゃんだけじゃないんじゃない?」

「へ?」

「ほら、花ちゃんと話してる人。」


花ちゃんと会話をしている男子生徒は、四角い眼鏡をかけていた。ほんとに四角い。カックカク。

胸元にはきっちりとネクタイを締めていて、夏場はワイシャツのボタンを開けてしまう男子生徒が圧倒的に多い中で珍しい。

しかし特にイケメン、というわけではない。


…でもなんか、

どこかで見たことがあるような?


2人をじっと見つめて考え込む私に、さっちゃんがため息をつく。


「あんた自分の学校の生徒会長覚えてないの?」

「…あ!!」


なるほど、どおりで見た事あるわけだ。


そう納得すると同時に、女子生徒が集まっていた理由も理解する。


いつでも凛とした佇まいに、大勢の前でも堂々と話す姿。成績も優秀で、先生達からも一目置かれているという生徒会長。特別かっこいい、というわけではないが生徒からの人望は厚く。


そんな会長と花ちゃんが2人で話しているものだから、みんなの注目を集めたのだろう。


…なるほど、納得納得。


そんな事を考えている間に購買はすっかりと落ち着き、私達の興味は生徒会長から購買へと移る。


…メロンパン残ってるかなあ。

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