第2話


おはようございます、秋山結依です。

現在時刻は朝8時20分を少し回った頃。

1人で学校へと登校中です、眠いです、非常に眠いです。


私が通う高校は学力こそそこまで高くないものの校則は割と厳しい方で。


「はいあと10分ー。」


その声に学校へと登校していた生徒は少し足を早める。というのも、毎朝校門前では先生達が立ち番を行なっているのだ。そして少しでも始業時間を過ぎれば遅刻扱いとなってしまう。


遅刻が3回以上になれば1日居残りが必要になるため、それを避けようとほとんどの生徒は少し早めの時間に登校する。


そのため始業10分前には校門の辺りにはほとんど生徒はいない、のだが。


…やはり例外もおり。


「あと5分だぞー。」

「あ、花ちゃん。おはよう。」

「先生つけろよドアホ。」

「そうカリカリするなって。ハゲるよ?」

「まだ25だしハゲねえから。」


のろのろと校門に入って来た私に先生が顔をしかめる。



…そう、何を隠そう私もその例外である。

朝は苦手だ。


「ほんっといつもギリギリだよな。」

「えへ。」

「褒めてねえよ。」


はあ、とため息をついて呆れるのは私の担任で化学教師の花巻はなまき先生。通称花ちゃん。


まだ20代で若い事と顔は整っているため、女子生徒によく騒がれているのを見かける。

ただ口が悪い。本当に悪い。驚くくらい悪い。


「もっと余裕もって登校しろよ。」

「いやだって起きれないんだもん。」

「知るか。…なんで朝から立ち番しなきゃなんねえんだよ。いいだろ遅刻くらい。なあ?」

「先生とは思えない発言しないでもらっていい?」

「だって俺学校に遅刻しないで行った記憶ねえもん。」


そう言ってははっ、と笑う。


「よく先生になれたね。」

「勉強は出来たからな。真面目に学校に来ない俺に負けた時の木村の顔…。あれは傑作だったぜ。」

「誰だよ木村。」


口が悪いついでに性格も悪い。


その時の木村くんの顔を思い出したのか、花ちゃんはしばらく1人でケラケラと笑う。

可哀想な木村くん。誰か知らないけど。


そして笑い終えた花ちゃんは、ほらはやく行け、遅れるぞ、と私の背中を押した。


ちらりと時計を確認すればタイムリミットはあと3分。

ここからなら余裕だ。


…そう、問題は彼。


「少しは急げよ!!」


靴を履き替えた時、後ろから聞こえて来たのは花ちゃんの大声。


振り向けばそこにはのろのろと歩く男子生徒が1人。…歩き方が既に怠そうだ。私よりも後に登校してくる人物を、私は彼しか知らない。


「なんでこんなギリギリに来んの?もう少し頑張れよ。」

「…あ、今日花ちゃんなんだ。おはよー。」

「呑気だなおい!」

「大変だね、朝から大声出して。」

「お前のせいだよ!!ほら春原早く急げ!」


後ろから春原くんと花ちゃんの噛み合ってるのかわからない会話を聞きながら廊下を進む。


まあ、よくある事だ。


こんな風に春原くんとその日の立ち番の先生の会話(ほとんど噛み合わない)を聞きながら教室へ向かうのも、私の日常だったりする。

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