第24のネオン 良い子たちへのプレゼント

  ついに最後、24番目のネオンは、おもちゃ屋さんの広告だ。


 雪の降りしきる中、遠い夜空の彼方から姿を現したのは、トナカイのひくそりに乗ったサンタクロースだ。


 サンタは冬の空をぐるりと一回りしてから、一面の雪景色に変わりつつある通りを上からのぞきこむようにして、そこに良い子の姿を探す。

 ひと気のない、あまりに寂しい通り。しかしサンタはお構いなしに、背負った袋の中から、プレゼントを次々と取り出す。

 ぬいぐるみ、小さなラッパ、ブリキのロボット、お姫様のお人形、光線銃。


 子供たちが喜びそうなおもちゃが、カラフルなネオン管の輝きによって、次々と夜空に姿を現す。

 その光の色を映して、路上を覆い始めている白い雪が、7色に染まるのだった。

 それはまさに今日、12月24日の夜にぴったりな光景に思われた。


 しかし、考えてみれば、ネオンというものはそうそう取り換えがきくものではない。図柄をちょっと変えようとするだけで、大きな工事が必要になるはずだ。クリスマス・シーズンだけ、内容を変更するようなことは不可能だ。


 ということは、このネオンのサンタクロースは、一年中ずっと同じようにプレゼントを運び続けていたということになる。

 まだ熱気の残る真夏の夕暮れ時にも、やはりサンタは暑苦しい格好で姿を現したはずなのだ。


 その一年間の集大成として、クリスマス・イブ本番の今日をついに迎えることができた。

 そう思えば、サンタの表情にもどことなく達成感が感じられるではないか。


 雪の降りしきる通りは、残念ながら無人である。色とりどりのおもちゃに喜ぶ子供たちの姿はどこにもなく、ネオンを見上げる人もいない。

 しかし、そこには間違いなく聖夜の輝きがあった。

 ネオン管のサンタが一年間待ち続けてきた、聖夜の輝きが。


(ネオンの紹介はこれで全て終わりましたが、明日は締めくくりの最終話、「眺める男」をお送りします)

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