第15のネオン 愛の証
続いては、宝石店のネオン。
夜空に色とりどりに輝くネオン管は、宝石を表現するには確かに向いているようだ。
男女が左右に向かい合っているという構図で、男の方はシルクハットをかぶった紳士、女性の方もドレスで着飾った淑女といった感じ。
左の男が女性に向かって差し出したのは、紅く輝く宝石。その色からして、どうやらそれはルビーということらしい。
贈り物を受け取った女性は、少しだけほほえんだものの、大喜びというほどではなさそうだ。何かを促すように、紳士の方をじっとそのまま見つめている。
ならば、と紳士は続いて、今度は緑色に輝く宝石を差し出す。こちらはエメラルドだろう。
女性の表情はさらに明るくなったようだったが、しかし同時に少しだけ首を傾げる。
「それじゃないわね」
と言っているようにも見える。
紳士はさらに、ブルーの宝石を差し出した。これは、サファイアだ。
三つ目の宝石を手にした女性は嬉し気にうなずきはしたものの、またもやじっと紳士のほうを見つめる。
「まだ終わりじゃないでしょ」
とでも言いたげに。
気前の良い紳士は四つ目の贈り物、今度は銀色の輝きを放つ宝石を彼女に手渡す。
そう、ダイヤモンドだ。
四つの宝石を手にした彼女は、ついに紳士に抱きついた。乱れ飛ぶ、ピンクのハートマーク。プロポーズが成功した、ということらしかった。
抱き合ってダンスしはじめた男と女の頭上に、「LOVE FOREVER 宝石は愛の証」という文字が7色に輝く。
それで二人はうまく行ったわけだから、そのキャッチコピーは嘘ではないわけだ。
たかが色のついた石ころで手に入れることができるとは、ずいぶんとお安い心を持った女性であるらしい。愛の値打ちも、ずいぶんと下落したものだ。
その引き換えに、宝石店は大きな利益を上げる。世界はそんな風にできているのだ。
(明日は第16のネオン「妄想推理ゲーム」を紹介します)
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