第14のネオン ハッピー・エンドの下に
続いてのネオンは、製菓会社のものだ。
かつて人気だった、ロングセラーのビスケットを、今も変わらず宣伝している。
若い世代には見向きもされない商品だが、おばあちゃんの家などでは見かけることもあるだろう。
長年のファンに支えられたお菓子なのだ。
白く光るネオン管の帽子をかぶった少女が、そんな懐かしいビスケットを一個、テーブルのお皿からつまみ取る。お皿のそばには、湯気の立ち昇るティーカップ。午後の優雅なおやつタイムと言ったところだろうか。
そして、彼女が今まさに口に運ぼうとしたその時。青空から飛来した一羽の鳥が、そのビスケットを横取りして、そのまま飛び去る。ティータイムぶち壊し、とんでもないハプニングの発生だ。
驚いたことに、少女は鳥の後を追いかけて走り出す。白い帽子が、風に飛ばされてしまっても、彼女は見向きもしない。
そして、ついに見つけた鳥のすみか。そこには、数羽のひなが待っていて、母鳥が与えるビスケットのかけらを、大喜びの様子でついばむ。
その様子を見ながら、少女はじっと佇んでいる。ひなたちがあんなに喜んでくれるなら、これで良かったのだ。そういうことになるのだろう。
しかし、じっと口を結んだ彼女の表情は、何か割り切れない気持ちを抱えているかのように見えた。自分の大事なおやつが横取りされたのに、小鳥のために大人しくあきらめろというのか、そんな不満が感じられる顔だった。
ハッピー・エンドの圧力は強い。そこに異議を唱えるなど、実に無粋で許されざる行為ということになってしまう。
その圧力の下には、ちっともハッピーではない彼女のような人たちがいるのだ。
物語の登場人物という役目も、なかなかに辛いものなのである。
(明日は第15のネオン「愛の証」を紹介します)
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