第12のネオン 龍のごちそう

 次なるネオンは、料理店の屋上にあるネオンだ。

 白く輝く雲の上の暗い夜空に、湯気を立てる丼が浮かんでいて、その中身は黄色いネオンのヌードル

 そして、その周囲をぐるぐると、一頭のドラゴンが巡っている。


 ギョロリと見開かれたその目玉が、時折ちらちらと丼のほうを見る。

 12月の凍てついた夜空、龍もやはり寒いのだろう。あの暖かそうなヌードルを喰らいたい、そんな風に思っているに違いなかった。


 何度もぐるぐるするばかりで、このままお預けか、と思われたその時、龍はふいに丼に喰らいつく。熱いヌードルはたった一口で、かっと開かれた口の中に消えていった。


 喜んだ龍は躍り上がって、天の高みへと消えていく。というか、ネオンの中から姿を消したわけだが、見上げる者の目には、鱗をきらめかせて夜空を登って行く龍の姿が見えるはずだ。


 龍のぐるぐるから丼に食らいつくまでの時間は実はランダムで、何周したところでヌードルにありつけるかは毎回異なる。

 そのため、果たして何周目に龍がごちそうを喰らうことができるか、それを当てっこする遊びも行われていた。

 中には、晩飯を賭けて勝負する者もいて、その勝者が希望するのはたいてい、この店のヌードルなのであった。

 喜ぶ龍の様子を見ていれば、熱いヌードルが食べたくなってくるのも当然のことなのであった。


(明日は第13のネオン「あなたノ人生」を紹介します)


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