第10のネオン 早回しの現実

 水産業があれば、林業もあるというわけで、続いては大手の林業会社のネオン。

 その会社では、植林や伐採を行うだけではなく、住宅の建設や街づくりまでを事業の範囲としていたが、ネオンの中で表現されるのはあくまで森林伐採の部分のみである。


 描かれているのは、長い年月に渡って手入れのされた、杉の美林。

 赤みがかった茶色のネオン管が、そのまっすぐに伸びた幹を誇らしく輝かせて、枝や葉のある樹冠の部分を支えている。


 その根元に現れたのは、斧を手にした木こりの姿だ。現実の林業従事者はチェーンソーなどを使うのだろうが、このネオンの中のきこりは、ひたすらに斧を振り下ろし、大木を切り倒していく。


 杉がみんな倒されて、すっかり裸になった林の中で、重い原木をよいしょっ! とばかりに空へ向かって持ち上げてみせる力持ちの木こり。

 本当は、伐採された杉林を元に戻すためには、再び植林を始めて、また数十年という長い時を要することになる。しかし、ここはあくまでネオンの中。一瞬ののちにはもう、杉の美林は復活して、夜空に輝くことになる。


 ひたすらに、不毛な破壊と復活とをめまぐるしく繰り返すこのネオン。

 しかし、実際の人類の歴史も、早回しにしてみれば同じようなものなのだ。

 せめて、倒された原木から建てられた家々が、そこで暮らす人たちに幸せな記憶を残すことができますように。


(明日は第11のネオン「男の反逆」を紹介します)

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