第8のネオン 特急電車が走った頃
こちらは少々謎の残る、電鉄会社のネオン。
「スクルージ街」の通りの外れ、駅の広場に面したビルの上に設置されているものだ。
首都の駅まで59分、という無理やり1時間を切ったような所要時間が大々的にうたわれて、その売り文句の下には流線形の特急電車が青く輝く。
目まぐるしく点滅するネオンのレールと、背後の町が目まぐるしく流れ、その猛スピードぶりをアピールしていた。
ところが、だ。ならばと駅に足を向けて気づくのが、その閑散ぶりだ。
時刻表に並んだ列車の本数はまばらで、特急電車の記載などどこにもない。そもそも、首都への直行便そのものがもはや存在しないのだ。
この町が本当に栄えていたのは、戦争と大恐慌が世界を襲う、さらにそれ以前のことだ。
その頃には、花形の華麗な特急電車が、何本も走っていたのだろう。
嘘の内容になってしまったネオンを、電鉄会社がなぜそのままにしているのか、それは分からない。特急電車などもう走っていないということは、町の住民はみんな知っているのに。
この町のかつての繁栄を今に伝えるかのように、今日もネオンの特急電車は走る。
「スクルージ街」の24のネオンの輝きも、今となっては歴史上の遺産となりつつあるようだった。
(あすは第9のネオン「今宵はツナ缶で一杯」を紹介します)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます