第6のネオン 働き者のおじさん
鉄工所のネオンは、なかなかにダイナミックだ。
赤く光る鋼を、オーバーオールの青い作業着をきたおじさんが、ひたすらにハンマーで叩き続けている。
鋼が打たれるたびに火花が飛び散り、それはフライパンやねじ、オイル缶などのさまざまな製品へと姿を変える。
そんな魔法のような仕事を続けるおじさんの顔は、どこか得意げだ。働くことの誇りに満ちている、そんな風にも見える。
おじさんの頭上では「鉄は熱いうちに打て」というキャッチフレーズが明るく輝いていたが、ネオンの中の鋼は幸い、決して冷めることがない。ずっと熱いままだ。
実際には、昨年から続く戦争と不況とで、原料となる鋼材の入手はすでに困難を極めていた。
熱いうちに打とうにも、鉄そのものがなければどうにもならない。鉄工所の経営は、危機的な状況を迎えているはずだった。
しかし、働き者のおじさんには、そんなこと何の関係もない。ネオンの中の鋼は決して尽きることがないのだから。
ついに鉄工所が不況に倒れ、ネオンを点す電力の供給までもが止まってしまう、やがてそんな日が来ることを知らないおじさんは、ただひたすらに熱い鉄を打ち続けるのだった。
(明日は第7のネオン「ホテルの誘蛾灯」を紹介します)
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