第2のネオン 憧れの緑の丘

 

 二つ目は自動車会社のネオン。

 こちらはシンプルなデザインで、地平線に向かって続く真っすぐな道を、カップルらしき二人を乗せた赤いオープンカーが走っていくという構図だ。


 道のかなたには青空と白い雲、そして明るい緑の丘が見える。

 車はひたすらに、その丘を目指して走り続ける。白いネオン管が、流れる道路の白線を表現し、沿道の木々がぎこちなく点滅しながら近づいては消えていく。

 だが、そのドライブには永遠に終わりはなく、二人は決して憧れの丘にたどり着くことはない。


 いや、実は終わりは存在する。

 深夜0時になると、そのネオンは消灯して真っ暗になるのだ。道も車も、緑の丘も、みな暗闇の底に沈む。通りを行く人々を魅了した、夜空に浮かぶ明るい風景は、もうどこにも存在しない。


 闇に還ることで、初めて旅は終わる。これはまさに、我々の人生そのものではないだろうか。


(明日は第3のネオン「文明生活とカオス」を紹介します)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る