スクルージ街の24のネオン ~街角のアドベントカレンダー~

天野橋立

「スクルージ街」と第1のネオン 金貨の城

 その町のメインストリートになっている「スクルージ街」は、別名を「ネオン街」と言った。通りに並んだ古びたビルの上で、色とりどりの広告ネオンが輝くことで知られていたからだ。その数は全部で24。

 単に点滅するだけではなくて、アニメーションのように動いて見えるような工夫がこらされているものも多く、今となってはどんな理屈で作動するのか不明なものさえある。

 とにかく目立てばヨシ、という闘魂ならぬ商魂の競い合いが生み出した、今となっては光の芸術と呼んでも良いだろうそのネオンたち。

 ここでは24のネオンを1つずつ、紹介していくことにしよう。


 それでは、まず一つ目。この地方に古くからある銀行のネオンだ。

 男女二人の小人が、金色に輝く金貨――実際は金色でなく黄色のネオン管だが――を一つずつ運んできては積み上げ、小さなピラミッドが完成したところで、その金貨の山は立派なお城へと変わる。お城の中で抱き合う二人の頭上に、大きなピンク色のハートマークが浮かんでハッピーエンド。

 コツコツと貯金を続けたおかげで、二人は幸せをつかみ取りました、というわけだが、実際に何年もかけてその銀行に貯金を続けたところで、もらえる金利はごくわずか。

 買えるのは古いあばら家がいいところだったりするのだが、しかしまあ、そんな中でも仲良く抱き合うことができたなら、ハートマークが輝くこともあるだろう。

 幸せを金貨で購おうというのが、どだい無理な話なのである。


(明日は第2のネオン「憧れの緑の丘」を紹介します)

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