第39話

だからこそ今度は俺が頑張る番だ。

そんな気持ちを抱きつつ俺は扉を開いたのだった。

遂にたどり着いた最下層である。

「よく来たな冒険者よ」

そこには圧倒的なオーラを放つ人物がいた。

「お前がここのラスボスってことか」

思わず唾を飲み込みながらも返事をする。

「いかにもその通り。我が名は魔王ベルドラッドなり!貴様の持つ力を我に差し出すが良い」

やはり目的は俺の力だったようだ。

「悪いがその頼みを聞くことはできないな。お前のせいでたくさんの人が迷惑している。だからここで倒させてもらうぞ!」

「笑止!我を倒せるものなどおるまいて」

自信満々なその態度に怒りを覚える。

「そんなもんやってみないとわかんないだろうが!」

全力を込めて突っ込んで行く。

「ならばとくと見るがよい。これが本当の力だ!」

途端に強烈な風が起こり動きを止められる。

「くっ」

必死に耐えようとするが耐えきれず飛ばされてしまった。

なんとか態勢を整え着地した。

見ると辺り一面真っ白になっていた。

(強いだけど!)

改めて相手の力に驚く。

すると相手は余裕そうな顔を浮かべている。

こちらをなめているのか攻撃してくる気配はなかった。

それが気に食わなかったのでもう一度殴りに行く。

だがあっさりかわされてしまう。

そのまま蹴りを食らってしまった。

なんとか踏ん張り体勢を整える。

相手を見てみると特にダメージがないように思えた。

だが不思議と力が抜けていき立っているのが困難になる。

(ま、やるだけの事をやるだけ)

覚悟を決めて剣を構える。

「ほう。まだやる気があろうか。だがここまでのようだな。これで終わりにしてやろう!」

すると相手の周りに魔法陣が現れる。

どう見ても嫌な予感しかしなかった。

だがどうすることもできずにいるうちに放たれていた。

避けようとしたがすでに遅く俺に当たる直前であった魔法を吸収した。

(いったい何が起きたんだ?)

俺自身も理解できていない状態だった。

「加勢してやろう冒険者!」

突如聞こえた声の方に視線を向けるとその正体を知った。

それはこの世界で魔王軍の幹部として恐れられている存在であった。

「お前なんでここにいるんだよ!?まさか裏切ったんじゃないよな?」

動揺しながらも質問してみる。もしこの男が敵に回ればかなりまずかった。

「ふん。相変わらず失礼なことばかり言いよるのうこ奴め。安心せい。冒険者!あの魔王を倒すぞ!」

そういうと男は魔物へと姿を変えた。

そして襲ってきた相手に応戦し始めた。

俺はその様子を見てとりあえず目の前の戦いに集中することにした。

しばらく戦い続けるが状況は悪くなる一方であった。

徐々に押され始めていたのだ。そこで俺はあることに気がついた。

それは相手が手加減していることだった。

なぜそんなことをするのか?

もしかすると何か理由があるのではないかと考えた。

そこで隙を見つけて話しかけることにした。

「おい!マルコポーロなんでお前加勢してくれたんだ?」

「ふんそんなことか。お前はユウトちゃんの為にすべきことは何か分かるか?」

(あ、そういやコイツもユウトちゃん大好き魔物だったわ)

「ユウトちゃんの為に?そうだな。彼女の笑顔を守ること」

「そう!そして彼女のおっぱいを見ること!」

(いや、それは俺には無いけど)

「そうか。男のモードの彼女最高だと思わん?」

「思う!あの時の彼女に罵られたい!」

(いやそれもよく分からんが)

こうして意気投合した俺たちであった。

その後俺は一旦話をやめて、戦闘に戻った。

そこで疑問が浮かぶ。

どうしてさっきから本気で来ていないのかだ。

そしてその答えはすぐにわかった。

突然地面が揺れ出したのだ。

どうやら何者かが地中を掘り進んでいるようであった。

そして次の瞬間、俺たちの真下から凄まじい衝撃波が発せられた。

それにより敵は遠くへ吹き飛んでしまった。

「ガイル様登場!」

「「おお!ガイル殿!」」

俺たちは2人で彼の名前を呼ぶ。

「マルコポーロ!エルビス!さあ、あの魔王を倒すぞそして」

「「「ユウトちゃんの為に頑張るんだ!!」」」

こうして魔王討伐の為の最後のメンバーが揃ったのだった。

「おーおーやっと出番が来たみたいだな」

いつの間に現れたのかそこには1人の男がいた。

その者は人間の姿をしていたが明らかに普通ではなかった。

背中からは黒い翼が生えており肌は浅黒くなっていた。

「あれが魔族じゃ」

と小声で呟いた。

(こいつが噂に聞くベルドラッドの部下ってわけね)

「我が名ベルドナ。ベルドラッド様の忠実なる部下」

「ユウトちゃんに比べたら可愛さも強さも感じられないなぁ」

「そうだな!ユウトちゃんは最高なのだよ!」

「おう!俺たちの天使様……いや神様さ」

(神様ってほどでは無いが天使様よな)

俺が考えているのをよそに彼らは会話を続ける。

「ところでお前たちの名前はなんだ」

「俺はエルビス!エルビスタン王国の国王でユウトちゃん大好き同盟所属の騎士だ」

「我は元魔王軍幹部で現在エルビスタン王国騎士団団長マルコポーロ」

「そして、俺はエルビスタン王国騎士団の騎士ガイル。ユウトちゃんの旦那である」

とまあこんな自己紹介をしていると魔王ベルドラッドの声が届く。

どうやらこちらに近づいてきているようだ。

それもかなりのスピードで。

するとすぐに魔王が現れた。

その容姿を見た感想を述べるならまさに異形といったものであった。

頭には羊のような角が左右に伸びて、口元はまるで獣のように鋭い牙を生やしていた。

またその瞳の色は血の色を彷彿させる赤に染っていた。

「赤魔王ベルドラッドとはよく言ったものだな」

マルコポーロがそう言うと同時に魔王は動き出してきた。

それに応戦するように皆が動く。

だが相手はかなり強いのかこちらが一方的にダメージを受けるばかりである。

このままでは負けてしまうと思った俺は魔王を拘束することにした。

幸い魔王は素早いだけで力はそこまで無さそうなので何とかなると考えた。

そこで魔法を使い足止めをした。

その間に全員で一斉に攻撃して少しでもダメージを与える。

案外すんなり成功したがそれでも少し怯む程度にしかダメージを与えられなかった。

だがそれだけでも効果はあったようで魔王がバランスを崩したように見えた。

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