第38話
そうなれば最悪捕まるかもしれない。
アリスたちは反対してくれた。
しかしやはり最後は従うしかなかった。
そうしなければ町に多大な損害を与える恐れが出てくる。
仕方のない判断だ。
そう自分に言い聞かせながら戻ることとなった。
道中もずっとアリスたちが励ましてくれた。本当に良い仲間に出会えたと思う。
それからしばらくして町にたどり着いた。
報告を聞いたギルマスは大慌てで騎士団を招集しようとしていたがそれを何とか止めることに成功した。
理由はできるだけ穏便に済ませたかったからだ。
なのであくまでも調査ということで話を通すことになった。
もちろん俺はメンバーから外れることになる。
1週間ほどの時間が経った。
調査の結果特に怪しいところはなかったようで結局何事もなく終わりそうな雰囲気だった。
これでもう心配はないだろうと俺は安心していた。
ところがその1週間後にまた同じような事件が起きたのだ。
再び緊急招集がかかり急いで向かわなければならなかった。
前回と同様に調査を行う。
どうも最近になって急に現れてきたモンスターたちのせいで町の機能が麻痺しているためだそうだ。
幸いにも今回はすぐに解決することができたのだが2回続けてだとおかしいと感じたのか俺のことを疑う人たちが現れてしまった。
このまま放っておくといずれ大きな問題になるかもしれなかった。
そこで俺たちはこの問題を解決するために動くことにした。
そのために俺ひとりだけで乗り込むことに決めたのだ。
不安ではあったが皆は了承してくれて協力してくれることとなった。
数日後いよいよ出発となった。
「気をつけてくださいね」
「ああ大丈夫だよ」
リリスに見送られ俺たち4人は出発した。
「まさかここまでやるとは思わなかったよ。でもそろそろいいかげんあきらめて欲しいんだけどね」
俺は目の前の人物に話しかける。
「ふん。貴様などに言われる筋合いなどないわ。それよりなぜここにいる?」
どうやら目的は同じだったらしい。
「もちろんこの町を守る為ですよ。あなたのような方を止めないといけませんから」
「ちっ、余計なことを」
舌打ちしながら睨んでくる。
そんな相手に対してこちらも見つめ返す。
「いい加減諦めてくれよ。あんたが何を企んでいるか知らないけどこれ以上やるなら力づくでも止めさせて貰いますよ」
しばらく沈黙が続いたあと突然笑い出した。
「くっく、あっはははは」
「なにが可笑しいんですかね」
少しイラつきを感じながらも質問した。
「いやすまない。つい嬉しくてな。だがそれも今日でお終いだ。せっかく邪魔者を消せる機会が来たのだからな!」
そう言うと何かの魔法を使ったようだ。
すると相手の体がみるみると変わっていくのを見て驚愕した。
やがて現れたのは本来の姿に戻った魔物であった。
「な!?お前は魔王の手下なのか!」
どう見ても普通の人間ではないので当然のように問い詰める。
しかし本人は平然とした態度で答える。
どうもこの男は元冒険者らしく少し前にたまたま出くわしてしまいその時から利用しようとしていたということだ。
だが俺を騙すためにわざと仲良くしていたという。
なんともふざけている奴だ。
しかもそれだけではまだ足りずなんと町の人々全員を洗脳したとのことだ。
そのためこの前の調査の時にあんな状況になったみたいだ。
しかしこんなことは許されるはずがない。
なので思いっきりぶん殴ったあと拘束して連れていくことにした。
その後なんとか町の混乱を収めてから数日かけて王都に向かった。
「やぁ君たちが来てくれるとは嬉しいよ。ところで例のものについて聞きに来たんだろう?残念だけど今は手元にはないんだよ。もう少しだけ待ってくれないか?今準備している最中なんだ」
「そうですか。わかりました。しかしなるべく早くお願いします。でないと大変なことになるかもしれないので。それじゃ失礼しました」
軽く頭を下げてから部屋を出る。
「ねぇあいつのこと信用してもいいのかな?」
「わからない。正直なんとも言えない。」
ティアの問いかけに俺は少し困りながら答えた。
「そうですね。あの人はかなり強引ですから。油断しない方がいいと思います」
リリスも同じ意見のようであった。
(確かにちょっと強引なところはあるからな。あまり関わりたくないのが本音だ)
「とりあえずまだ時間があるし他の用事を先に済ませてしまおう」
3人に提案するとみんな賛成してくれたので早速移動することにする。
ルードとキャバリエ達とも合流できた。
それから数日間ダンジョンの中を調査した結果、いくつかのミスリル製の鉱石が見つかりひとまず満足であった。
さらに今回の成果としてミスリルインゴットというアイテムを手に入れた。これはミスリルが加工される際に出てくるものである。
さらに今回はダイヤモンドがあったおかげで武器や防具の質を向上させることができた。
さらに鉱石から取り出せる宝石によって性能を上げることができることが分かった。
こうして順調に攻略を進めていた俺たちであったがある日の夜中に異変が起こった。
メサルティムがやってきた。
そして彼女はこう言ったのだ。
「あなたたちでしたらおそらく次の階層まで行けると思われます。なのでここから先は1人ずつ挑んで頂きたいのですがどうでしょうか?」
さすがにこれには驚きを隠せなかった。
なぜなら今までは5人で挑むようにしていたからだ。
なので今回も同じようにするつもりでいたのだ。
それを急にひとりずつで行って欲しいと言われたのだ。
困惑するのも無理はないと思う。
それにひとりというのはあまりにも危険すぎたのだ。
ルードとキャバリエ、ルスターもいる状態なのだから大丈夫であろうと俺は判断した。
そこで理由を聞いてみることにした。
なんでもこのままだと世界のバランスが崩れてしまう恐れがあるらしい。
それでひとり1層で挑戦することである程度はバランスを保つことができそうだということだった。
なので彼女たちの話に乗るしかなかったのだ。
もちろん最初は不安があったが仲間たちがいる以上大丈夫だろうと俺は考えた。
というわけで俺はついに50階まで到達したのである。
いよいよ最後のボス戦が始まる。
これまでの道程を思い出しながらゆっくりと前に進む。
やがて大きな扉の前にたどり着くと自然と手が震えてきた。
俺は仲間との日々を思い出すことで心を落ち着かせる。
皆には本当に感謝してもしきれなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます