第37話
3人で相談するとまずアリスティアが俺の部屋にやってきた。
そして何か言いたげだったので聞いてみるとやはり昨日のことで悩んでいるようだ。
「とりあえず座るといいよ」
「はい。ありがとうございます」
ソファーに向かい合って座りながら話す。
「実は先ほどお母様と話していたのですが、このままでは私はいつの間にやられてしまうでしょう。そこで師匠と手合わせをしていただきたいと思っているの」
「なるほど。分かった。だけど条件をつけさせてもらえるかな」
と返事をした後で続ける。
手加減ができないかもしれないのでそれを承知してもらうこと。
本気で戦うことを了承することを伝えた。
それに笑顔で答えてくれた。
そしてその日の夜手合せを行うこととなった。場所は屋敷の裏にある訓練場だ。
そこでお互い剣を構え向かい合う。
お互いに見つめ合い合図と共に走り出す。
最初に動いたのはもちろんアリスの方だ。
スピードも十分乗っておりすぐにでも間合に入ってくるだろう。
しかしそこは相手も同じであり同じ速さで移動しているため一瞬で距離がなくなったように感じるはずだ。
しかしその時には俺は横にずれている。
相手が振り下ろす前に避けておりさらに一歩踏み込む。
横から首元に剣を当て終わりだ。
しかしこれは模擬戦なのでまだ終わらない。
すぐさま追撃で胴へ突きを放つ。
がそれも読まれていて簡単に避けられてしまった。
そこからしばらく攻防が続くが俺は攻め続け結局最後は押し切った。
終わった後の彼女は悔しそうではあったがどこか嬉しさも感じているように見えた。きっと自分よりも強い人と全力をぶつけられることが楽しいのだろう。
しかし残念なことに魔法を使うことができなかったのが心残りらしい。
ただそれも俺との勝負が終わった後から練習すれば良いと思うのだが本人にやる気がない。
仕方なく他の方法を考えることにした。
「魔法を使わない戦い方がないかですか?」
「はい。そうです」
「うーん、難しい質問ね。普通なら魔法で遠距離からの攻撃を仕掛けるとこなのだけど」
どうも一般的な考えでは魔法を使って距離をとることで安全を確保しつつ相手にダメージを与えるというのが基本となっているらしいのだが今回はそれではだめだと言われた。
理由は俺には魔法の才能がないからだそうだ。
だからこそ逆にそれが使える俺と戦いたいということだったらしい。
というわけであれこれ試すのだがなかなかうまくいかないらしい。
どうもイメージと実際の動きが違うみたいだった。そのことについても話を聞くと魔力というのは自分の身体を流れるものを感じ取りコントロールすることで形が変わるらしいのだが俺の場合はその流れるものがあまりないようなのだそうだ。
ただこれについては自分でもよく分からないため困ってしまうところだな。
ともかくあれからも一緒に考えることになった。
3人は仲が良いらしく2人だけの時間を作ってしまうことが心配だからという理由で一緒になったのだ。
もちろんそんなことはないとは思うんだけれどもね(笑)
その後数日の間毎日のように皆が集まってきて話をしたりしたものだ。
そしていよいよ出発することになった朝に別れを惜しむような顔を見せるのだった。
「じゃあみんな気をつけて行ってきなさい」
アグラレスさんの言葉に答える。
「はい。行ってくるよ」
「皆さん頑張ってください」
2人も応援してくれる。
こうして俺たち4人の冒険が始まった。
「ここって」
「はい。この洞窟を抜けたところにあります」
現在ダンジョンを攻略していた。
4人全員のレベル上げのため難易度の低いところでレベルを上昇させようということになった。
最初はスライムを狩りに行き今はボス部屋にいる。
「ふわぁ」
あくびをするリリスさんを尻目に敵を観察する。
見た目は完全に巨大なアメーバといった感じで手足などはなく頭だけが生えている。
どうもこの部屋に来るまでに何度か遭遇したがかなり強くて苦戦した記憶がある。
おそらく今のパーティー編成であれば勝てる可能性はある。
ただし油断はできないので慎重に行くことにする。
まずはこちらの攻撃が効くかどうか確かめる。
俺とルミさんがそれぞれ魔法を放ち威力を見る。
すると予想通りどちらも効果がなくほとんどダメージを与えていなかった。
(これは厳しいかもな)
と思いつつも攻撃を続けるとようやく敵の体に傷が入るようになってきた。
どうやら物理耐性が強い代わりに火や水などの弱点に対しては少しだけ効果があるようだ。
このあと数回繰り返しなんとか倒すことができた。
その後もどんどん奥に進みついに最深部に到達した。
そこには扉があり開けて中に入ると中央に宝箱があった。
罠などがないか調べてからゆっくりと近づき蓋を開けると中には剣が入っていた。
「おお、やった!」
思わず声が出る。
「すごいですね!こんな大きな宝石見たことありません」
アリスティアは興奮しているようだったが他のメンバーは反応していなかった。
不思議に思い彼女たちの方を見ると俺と同じように驚いていた。
しかしそれは当然のことだった。
なんせそこにあったのは大きなダイヤモンドの塊であったのだから。
鑑定するとダンジョンコアと呼ばれるものであった。
つまりダンジョンの心臓のようなものでこれを破壊されるとダンジョンの機能を失いやがて崩れ落ちてしまうということだ。
「さすがに持ち帰ることはできませんよね」
「ええ。ダンジョンが崩れ落ちてしまえば大変なことになりますから」
確かにそのとおりだ。
下手に壊してしまっては本末転倒である。
だがここでひとつ思い出して欲しいことがある。
ここには大量のミスリル鉱石があったことを忘れていないだろうか? 実はダンジョンの最下層部には稀にレアメタルが出現することがあったのだ。
しかも今回のダンジョンではかなりの量が確保できるはずだった。
なぜなら今ある武器や防具のほとんどはミスリル製であり、さらに追加分を作る予定でもあった。
なので俺としてはできれば持ち帰りたいと思っている。
しかし無理は良くないとも考えている。
いくらなんでも危険すぎる。
もし万が一のことがあれば後悔してもしきれなくなるかもしれない。
というわけで3人に意見を聞いてみることにした。
俺の意見としてはまずギルドに相談するべきだと思った。
もしもの場合に被害を最小限に抑えられる可能性がある。
ただ問題もある。その場合は強制的に従わなければならない可能性が高いだろう。
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