第36話
「それじゃあ君には私の正体についても教えるとするか」
と言い出した。そして続けて
「まず私の名前はアグラレス。かつて大賢者と呼ばれていたこともある。今現在は人間族に協力してこの世界を救おうとしている。だが昔、私が魔王軍に協力しようと考えたことがあったのは紛れもない真実だ」
と衝撃的な告白をしてきた。
一体何のために協力しようとしていたのか気になって聞いてみることにする。
「魔王軍はある一つの実験を行っていたのだ。それは人間の進化についてだった。人間は日々進歩をしているがそれ以上に強くなっているとは思えないと感じていた私は更なる高みを目指してみたくなったのだ」
と過去を語り始めた。
「当時の魔王軍にはすでに私の協力者が居て様々な知識を持っていた。そこで我々は人を超えた存在を作り出すことに成功したのだ」
と言ってきた。
それが魔王軍の行っていたことであり今でも続いているということなのだと理解する。
しかしその話の中に疑問を感じる点があったため質問をする。
何故人を超えるものを作ろうとしたのだろうかと。
魔王軍が魔族の代表であるなら自分たちを強化するよりも他にやるべきことがあるのではないかと感じていたためのことだ。
それに対して答えを返してくれた。
そもそもの発端としては戦争により種族が減ってしまい危機に陥っていたのだという。
そこで人を増やすために他の生物に手を出していった。
その結果多くの者が犠牲となり最終的には滅ぶ一歩手前まで来ていたという。
それを救ったのが魔王だったという。
魔族は魔素がなければ生きていけないので仕方なくといった感じらしい。
それを見かねた魔王は人類が絶滅してしまうのは惜しいと手を差し伸べたという。
それからというものは魔王が主導となって魔族の保護を行ったそうだ。
その際に一番被害が大きく滅亡の危機に瀕したのはダークエルフとヴァンパイアらしい。
どちらも長命で魔力が多く、魔法に優れていて、しかも男女ともに美形という優れた特徴を兼ね備えているため狙われやすかったという。
そして最終的に滅びそうになったところを救われ、その代償として忠誠を誓うこととなったようだ。
そんな事情もあり、今では人類の味方となっている。
だがそれも一部の者たちで基本的には魔王に敵対していない者は好き勝手に過ごしている。
そのため世界平和を目指しているとは一概にも言えない状況になっているらしい。
しかし今回のような大規模な侵略行為が行われる場合のみ強制的に召集されるらしい。
そういったことを全て教えてくれた。
これでようやく話が見えてきた。
つまり人族を滅ぼしたくないというのが魔王の考えだということが分かる。
そう考えれば俺が選ばれた理由もなんとなく分かる。
恐らく俺は光魔法も使え闇魔法も使いこなすことのできる唯一の存在だと思われたからだろう。
闇属性に関しては適正があっただけだが光属性に関して言えば才能がないとされているからだ。
それに俺には聖魔法の素質があるというのも大きかったはずだ。
聖属性は回復に特化しており傷の治療を行えることができるものだから。
そこまで考えたところでもう一つ重要なことに思い当たることができた。
俺は光属性魔法も闇属性魔法も同じぐらい使えるのだがこれは異常なのではないか、と。
この世界ではこの2つの属性を両立させることはできないはずなのだ。
ただそのことを正直に伝えると
「そうだね、普通ではあり得ない。ただ君だけは特別なんだ」
と告げてきた。
そしてその理由も語ってくれた。
どうも元々俺の世界の日本と呼ばれる場所に暮らしていた人の魂が入り込んでいるらしい。
そして前世の記憶を持っていることからも納得できた。
しかしなぜこのタイミングで俺を選んだのかは分からないままだ。
そのことについて尋ねると驚くべき事実を口にした。
どうもこの世界の勇者召喚というのは魔王討伐のための力を持った者を呼ぶのではなく別の目的があって行われていたのではないかということだった。
そのことについて説明してくれる。
それは俺たちの世界の知識を使っての文明の発展を促していこうという考えのもとで行われていたようだった。
なので本来であれば地球で言う電気のようなエネルギーを生み出して発展を促そうとしていた。
そして実際に俺の元いた世界でもその試みが行われ成功していたという。
ただし失敗した要因については分からなかったようで原因究明はできなかった。
なのでこちらの世界に同じような技術が存在するのではないかと思ったらしく今回連れてきてもらったという話だった。
もし本当にあるのであれば今後のことも考えて協力して欲しいとのことだった。
なのでもちろん構わないと告げた。
他にも聞きたいことはあったのだがそろそろ時間切れということで一旦意識を失った。
目が覚めると宿の一室にいた。
外を見るともう夜になっており夕食を済ませ部屋に戻って来たばかりだったことに気づく。
そうして再びアグラレスが現れる。
「アグラレスさんどうしました?」
「ユウトちゃんちょっと話があるんだけど」
(なんだろう?)
「うん。まあ入ってよ」
部屋へと入れる。
「で?話って……きゃ!?」
突然抱きつかれた。
「ねえ!私の初めてもらってよ!」
……えっ何いっているのこの人。
意味わからない。
そしてキスしてくる。
舌を入れてくる。
そのままベッドに押し倒されそうになる。
さすがにヤバいと思い止めに入る。
「ちょ、落ち着いてくださいよ」
なんとか落ち着かせる。
「いきなりなにするんですか」
「いや、だってそういう関係になりたいんでしょ」
服をまくられ
「きゃあ!?」
「え?」
現れた少し膨らみのある胸にアグラレスは
「ユウトは女の子?」
「はい。そうですけど」
「ごめん。てっきり男の子だとばかり思って。それで話を戻したいんだけど」
「ああ。いいですよ」
「私とガールズトークしましょう」
「あ、いいですね。久しぶりにしたいです」
「え?過去にもしたの?」
「はい!メルシアとかアリスティアとしました」
なぜか顔を赤めらせるアグラレス。
それを見た瞬間俺の顔まで赤くなっていた。
それから1時間以上女子同士での雑談を楽しんだ。
特にアグラレスとの話はとても楽しくまた今度お茶しようと約束してしまった。
次の日になるとギルドに行くと既に3人が待っていた。
今日は特に予定もなくダンジョン攻略をするつもりだったのだけれど何故か全員揃わない。
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