第30話

それもそのはず普通に買えば最低500万ゴールドかかるところを200万円程度に抑えられるのだから。

それでも相当高いのは変わらないのだが。

とりあえず

「分かりました。買い取らせていただきたいと思います。ただ、持ち合わせが無いのですが良い方法はないでしょうか?」

と答えた。

(あれ実はおもちゃの剣だったんだがいい値段で買い取ってくれた)

そして提示された金額に驚くことになるのだがそれは後ほど。

その後ギルドへ行き報酬を受け取ったのだがその際に渡された袋を見てまたしても驚いてしまった。

(なんでこんなに大金貰えるんだよ)

と思っていたらその理由を教えてもらった。

『地球産の物はおもちゃだろうが大金になるんです』

と精霊の声がした。

(なるほど)

と納得し店を後にするのであった。

そして遂にこの時が来た。

待ち望んだ瞬間だ。

目の前には大量のモンスターの死体が山積みになっている。

「やった……とうとう倒したぞ……!」

歓喜に浸っていた。

その時だった。

後ろから凄まじい殺気を感じ振り返るとそこには俺と同じくらいの背丈をした白い肌の男がいた。

男はこちらを見つめている。

何か嫌な予感を感じた瞬間に奴は動いた。

刹那のうちに俺との距離を詰めてくると俺に斬りかかって来た。

咄嵯の判断によって後ろに回避することができた。

危なかった……もう少し遅れていれば確実に死んでいた。

だが安心している暇は無い。

すぐに体勢を整え反撃しようとした。

しかしそれよりも早く攻撃されていた。

「ぐっ……!!」

なんとか防ぎきることができたものの衝撃で吹き飛んでしまう。

その後も何度も襲いかかってくるため徐々にダメージが大きくなっていくばかりだったがついに隙を見つけることができたので渾身の一撃を放つべく一気に近づき攻撃を仕掛けた。

「これで終わりにしてやる!喰らえ!!」

と叫びながら放った突き技だったが相手に当たる寸前に止められてしまった。

まるで見えない壁に阻まれたかのように。

それからも何度か試したがやはり無理なようだったので一旦距離を取り相手の様子を伺っていると今度は男が口を開いた。

「今のを受け止められたのはお前が初めてだよ。流石はこのダンジョンの最下層にいただけはあるな……。だが、残念ながらここまでだ。」

と言って剣を構えた。

「まさかとは思うけど、まだ続けるつもりなのか……?」

やめたほうがいいぞと俺は言った。

しかし、男はそれを無視してきた。

どうやらやめる気がないようなので仕方なく応戦することにした。

それからどれくらい時間が経っただろうか。

互いに傷だらけの状態になっていた。

だが先に倒れたのは俺だった。

意識を失って倒れてしまったのだ。

それからしばらくして目を覚ますとそこは見知らぬ場所だった。

「どこなんだここは?」

辺り一面真っ白で何もない空間。

そこで先程出会った謎の男のことについて考えていた。

(あの人は一体何者だったんだろうか?それに最後の言葉……。"この世界の人間じゃないってことがバレていたのか?)

と疑問に思っていると、そこに一人の女が現れた。

彼女はこう話し始めた。

「あなたは本来死ぬべき存在ではありませんでした。」

と。

そして続けてこういった。

「ですがあなたの世界では命の価値が著しく低いためにこのままだと死んでしまう可能性がありました。なので私は、本来死ぬ運命にある人間の魂を呼び寄せ代わりに死んでもらいその分を別の世界に飛ばしてあげるという処置を施したのです。」

と言った。

つまりはこういうことだ。

俺が死んだのは偶然ではなく俺がこの世界で生きていく為に与えられた能力によるものだということらしい。

そしてそれを行ったのが今俺と話している女性ということだった。

さらに俺の本来の寿命はまだ残っていたらしくあと1年あったみたいでその間に死んだ場合は元の世界に帰ることはできないとも言ってきた。

正直な所あまり実感がなかった。

突然異世界に来た上にその世界が既に終わっていたなんて言われてもピンとこないし。

とりあえず今は帰る手段がないというのなら仕方がないのでしばらくはここで過ごすことにしようと決めた。

そしてこれからの事を色々考えているとふと思ったことがある。

「ユウトちゃん」

と呼ばれていた女の子は無事なんだろうかと。

それを確かめる為について教えて欲しい事があった。

まずは名前からだなと思い聞いた。

「すみません、少し聞きたい事があるんですがよろしいですか?」

と言うと、快く了承してくれた。

それを受けて、

「ありがとうございます、助かります。それじゃあ早速質問させていただきますね。」

というと少し待った。

すると不思議そうな顔をしていた。

「ガイルがいうユウトちゃんってのはガイルのなに?」

「ん?俺の嫁」

「よ、嫁!?」

「だけど冒険者大学の生徒だから一応書類は提出してるけど卒業までの間は保留になってる」

「へ、へえ、、可愛い?」

「超絶かわいい」

「会ってみたい」

「普段は男の子モード全開だけどな」

「え?男の子モードってなに?」

「普段は男装でしかも完全に男にしか見えなのだ」

と、ガイルが説明してくれる。

(すごい女の子だなその子まじに会ってみたい)

その数日後にそのユウトちゃんと会える機会がやってきた。

冒険者ギルドにちょうどその

『ユウトちゃん』が居たからだ。

(え?あの子?男の子だよなどう見ても)

身長も結構高くて175くらいあるぞ。

それに胸も真っ平らなんだがそれに声も完全に男なんだが。

でも俺はユウトちゃんに声をかけてみた。

「えっと君がユウト?」

「そうだけど?ガイルと最近クエストしてる人ですか?」

「そうです!ガイル殿にはかなり世話になってて」

「ガイルーー!この人が俺に会いに来てくれたんだよ!」

とユウトは俺を案内してくれようとしたがそこで気付いたことがあった。

「あれ?ちょっとまって……」

「なにかありました?」

「いや、もしかしたら君は女の子なんじゃないかなと思ってさ」

「どうしてわかったんですか……まさか鑑定持ちの方ですか」

「違う違う!そういうんじゃなくて単純に見た目で分かるから」

「ああ、なるほど納得しました。よくわかりますよね僕を見て女の人と判断できる男性は珍しいと思いますし」

といってくる。

俺はその時ある可能性を考えていた。

というのも、俺は転生時に性別を変えてもらうように頼んでおいたはずなんだ。

なのでこの子が俺の子供であるということはあり得ないということになる。

なので、

「失礼なことを聞くかもしれないんだけど、もし良ければ君のことを教えてくれないか?」

と聞くと、

「構いませんが」

と答えてくれたのでお言葉に甘えていくつか聞いてみることにする。

そしていくつかの事実が判明した。

まず最初に驚いたのが年齢が18歳だということだった。

次に驚きなのは彼女は人間ではなかった。

なんと神人だったということだった。

なので種族としての特徴についてもある程度詳しく聞けたのだが……

彼女はとんでもない魔法の才能を持っているらしい。

なんでも、攻撃魔法の威力は俺よりもあるとのことだ。

他にも治癒系、補助系のスキルなども豊富に取り揃えているようでまさにオールラウンダーと言えるだろう。

それと、俺のことを気に入ったのか、

「あの……僕の師匠になってくれませんかね?」

と言ってきたので喜んで引き受けることにした。

そして後日、彼女に稽古をつけてやることになったのであった。

ユウトとの修行が始まった。

最初は基本的なことから教えていった。

剣術については俺の剣をそのまま使わせてやった。

剣の扱い方などを一通り教えたところで次の段階に進むことにした。

「次からは実戦形式でいこうと思うけど大丈夫かな?」

と確認を取るとユウトが

「問題ありません」

と言ってきたので俺もそれに同意した。

それからしばらくの間打ち合いをしていたのだが、やはり実力が高いせいもあってかなり強い。

なので俺は剣技で相手をすることにした。

だがそれでも彼女は強かった。

だがそんな彼女ですら俺には勝てなかった。

そこで彼女がこういった。

「やっぱりまだ無理ですかね……。今のあなたなら恐らく倒せる相手がいるのですがどうします?」

と言われてしまった。

(これは多分俺のことを心配してるんだろうな。まあ確かに今は人間形態だからな。それにしても流石は神の使徒だけあって格が違うな……。)

と思った俺は

「是非ともお願いしたい」

というとすぐに転移してくれた。

するとそこは、かつて俺がユウトと一緒に来た場所でもあった。

(ここは確か……そうだ!ここでユウトに会ったんだった。でも、なんでここに連れてきたんだろうか?)

と思っているとユウトが、

「今から、魔物の群れを倒します。しっかりと見ておいてくださいね」

と言ったのでとりあえず黙って見ておくことに。

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