第28話
どうやらここが目的の場所のようだ。
「さて、ここから先は各自で行動してもらいたい。」
「ちょっと待ってください!俺たちはどうやって分かれればいいのですか!?」
「それはもう決めてあるから心配はいらない」
そう言うと地図のようなものを取り出した。
そこには赤と青に分かれて線が引かれており、更にはそれぞれのリーダーの名前が書かれていた。
「まずは赤い線を引いた者達だがそちらは北側へ向かってもらい敵を倒してきてほしい。青い線は南側へ向かい敵の相手をしてもらう」
「なるほど。」
「それと注意事項を伝える。1時間毎に報告を入れろ。それができない場合はすぐに撤退しろ。わかったな!」
「「はい!」」
と全員が返事をした。
「では健闘を祈る」
そう言ってそれぞれ指定された方角へ向かった。
**
森の中は薄暗く不気味であった。
さらに周囲には血生臭い匂いが漂っている。
(こんなところに本当にいるのか?)
と思っていると前方から狼のような生物が現れた。
俺は鑑定スキルを発動した。
**
名前:コボルト
Lv.45 HP :120/1200
MP :150/100
攻撃力:1000
防御力:600
魔力値:50
魔防力:25
素早さ:1520
幸運度:45 属性耐性率 火10% 水25% 風30% 土15% 光40% 闇20% 特殊技能 なし **
「はっ!!」
俺はすかさず聖剣を抜き取り相手の懐に入り込み一閃した。
するとあっさり倒すことができた。
その後も次々と現れたが問題なく対処していったが、途中から明らかに数が増えてきていた。
また一体ずつの強さも上がっており俺も何度かダメージを受けてしまった。
それでも何とか切り抜けて先に進むと開けた場所に出た。
そこは草木一つ生えておらず荒れ果てていたが、中央に何かがいた。
それは全身真っ黒に染まり目だけが赤く輝いていた。
その瞳からは禍々しいオーラを放っていて一目で普通の存在ではないことがわかった。
そして俺を見つけると凄まじく低い声でこう言ったのだ。
「我ヲ倒ス気デ来タカ人間ヨ」
そして戦闘が始まった。
先制攻撃を仕掛けたのは黒い怪物だった。
奴は口から炎を吐き出してきた。
「させるか!!《シールド》」
間一髪で魔法障壁を展開することに成功。
しかし次の瞬間に背後に現れた気配を感じ取った。
「しまった」
と思ったが遅かった。
後ろを振り向くと同時に衝撃を受けた。
そして地面に倒れ込む俺。
すぐに立ち上がり体勢を立て直す。
そこに待っていたのは無数の触手の鞭による連続攻撃。
「ぐあっ」
痛みに耐えきれず思わず声を出してしまう。
このままだと一方的にやられてしまう。
こうなったら出し惜しみをしている場合じゃないな。
と覚悟を決めたその時、目の前に光の球体が現れ爆発が起きた。
それによって視界を奪われたが構わず走り出す。
ようやく回復したところで正面を見据えると、あの魔物が立っていた。
ダメージは全く与えていない様子で平然としている。
それどころか傷跡すら残っていなかった。
(どうする……今のでかなり消費してしまったぞ)
そう思いながらも再び動き出した。
今度はこちらの攻撃を当てようと距離を詰めていく。
「喰らえ!」
と思いっきり振りかぶったが相手はそれを見切って回避。
カウンターで強烈な一撃を受けてしまい吹き飛ばされる。
すぐさま立ち上がろうとすると足に力が入らずそのまま倒れる。
体を見るとあちこち出血していた。
(クソッここまで来て終わりなのか)
そう思ったその時だった。
『大丈夫よ。私がついてるわ』
と聞こえてきた気がして、不思議と心が落ち着く。
そこで一つの策を思いつき実行に移す。
俺は聖剣を構え一気に近づきながらスキルを使った。
「《エンハンスドスラッシュ・ホーリーソード》」
眩い光が溢れだし、同時に聖なる加護が発動されたことを感覚的に理解できた。
よし行ける!と思いつつ駆け抜けた。
「ウガァー!」
叫びを上げ突進してくる魔物に対しこちらも突っ込んでいく。
お互いの武器がぶつかり合い激しい衝突音が鳴り響く。
最初は拮抗していたが徐々にこちらが押し始めた。
そしてついに決着がついた。
「ハアアー」
雄たけびをあげ渾身の力を込め最後の一太刀を浴びせる。
すると魔物の首が飛び胴体が崩れ落ちた。
その後しばらくしてから勝利のファンファーレが流れ経験値が入った。
ステータスを確認するとレベルが上がったことが確認でき、新たに【聖剣術】を習得したことを知った。
(とりあえず勝ったな。しかし強かったな。この世界に来て初めて命の危機を感じたよ。でもこれで強くなれたはずだ!よし、次も頑張ろう!!!)
こうして無事に魔物を倒すことに成功したのであった。
森での戦いを終えた後、街に戻りギルドへと向かった。
依頼達成の報告とレベルアップしたことを伝えた。
「よくやりましたね。」
と言われたが特に何も起こらなかった。
報酬を受け取る際に何かあるかな?と思っていたのだが期待外れだった。
ただ最後に受付嬢がこう言ってきた。
「あなたにはもっと相応しい人がいるはずです。だから私なんかじゃなくてちゃんとした女性を選びなさい!」
と言われてしまった。
はてどういう意味だろうと考えていたがわからず終いでその場を後にした。
**
翌日
俺はまたダンジョンへ挑戦しようと決意したのであった。
「さぁ行くか」
と意気揚々と家を出た。
ちなみに今日は一人ではなく二人である。
「ねぇどこに行くの?」
そう聞いてきたのは俺の妹で名前はレナという。
「実は昨日俺が強くなれるようにと試練を与えてやるって言われてな。その相手に会ってくるんだ。」
「えぇ!?危ないんじゃ」
「多分大丈夫だと思うけど」
「そう……」
と不安そうな表情を浮かべている。
確かに一人で行かせるなんて普通はありえないから当然の反応だ。
だがガイルさんが一緒にいてくれるから問題はないと思う。
** 出発してから数時間ほど歩き続けた。
途中で休憩を挟みつつさらに進むと大きな建物が見えてきた。
「あれじゃないかしら」
と指を指した方向には立派な門があり見張りが立っているようであった。
そして近づくにつれてはっきりと見えてくるその外観は教会のような作りになっており真ん中に噴水があった。
(なんだここは?)
と思っていると突然中にいた人々が騒ぎ出した。
何事だろうとそちらの方へと目を向けるとそこにはフードを被った怪しい人物が歩いていた。
それを遠巻きに眺めていた人達が次々に集まっていきいつの間にか周りは大人数で囲まれていた。
一体どんな奴なんだろうかと鑑定してみると驚くべき事実が発覚した。
**
名前:カルト
Lv.70 HP :3000/3500
MP :4500/5000
攻撃力:1550
防御力:1500
魔力値:2580
魔防力:2000
素早さ:1200
幸運度:50 属性耐性率 火0% 水50% 風30% 土20% 光60% 闇40% 特殊技能 【超回復LV.4】【高速再生】【状態異常無効】
魔法 〈生活系〉【浄化魔法Lv.1】
称号 《魔王》《邪神の寵愛》《不老不死》《魔神》《死を超越せしもの》《人類の敵》 備考 かつて人類を脅かしていた存在の一人だったが現在は改心しており平和のために尽くしている。
ただその代償として体が弱くなっているため、現在療養中でありほとんど活動していない。また仲間達とも離ればなれになっていることから単独で行動することが多くなっている。
また普段は穏やかな性格をしているが一度怒らせると手をつけられない程に暴れ回る危険人物でもあるので注意するように。
**
そんなとんでもない相手だとわかった途端、逃げ出そうとしたが既に遅く囲まれてしまっていた。
「久しぶりだな勇者よ。」
と言いながらゆっくりと近づいてくる男に対して
「お、お前は……誰だよ」
と動揺を隠しきれない様子で聞くと、男はニヤリと笑い
「忘れたか……まあ無理もない。もう100年以上前になるからな。我の名はカルト、かつての人間族を滅ぼした者……つまり貴様らにとっては仇ということになるな!」
そう言い放つと同時に攻撃を仕掛けてきた。
と思っていたら俺の前にきてお辞儀する。
「というのは冗談でクエスト一緒に行ってください」
との事でした。
「おいふざけんな!!」
「いいじゃないですかー。暇してるんですもん」
と言って駄々こね始めた。
「ダメなものはダメなんだよ!」
「そう言わずにお願いしますよ~」
こうなるとなかなか諦めないので仕方なく了承した。
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