第15話
「はい。何でしょうか」
「どうしてAランク試験を受ける必要が出てきたの?」
「簡単に説明すると、この国にいるAクラスの実力を持つ者達は既に出払っているのです。その為、国で一番高い戦闘力を誇るあなた方五人に受けてもらいたいと思ったのです」
(成る程。そうゆうことなら仕方ないか)
Aクラスになる為にはこの国を出る必要がある為、一石二鳥という訳か……
それにしてもまさか、魔王軍の幹部が攻めてきているとは思わなかったが……
(僕も戦うことになるのか?いやでも勇者じゃない僕には関係ないか……)
そんなことを考えているうちに目的地に着いたようだ。
「それではみなさま。これよりAクラス昇格テストを開始します。各自準備を整えてください」
「「はい!」」
こうして、僕の新たな戦いが始まることになった。
ユウト達が向かった場所は森の中にあった開けた広場のような場所で、周りには誰もいない。
「よし!行くか!」
その声とともに、ユウトは一歩を踏み出した。
そして、目の前に現れたのは巨大なドラゴン。
「グオオォオ!!」
ユウトが放った一撃により、あっけなく倒れた。
「やっぱり雑魚だな」
と、呟きながら次のモンスターを探しに行く。
一方、ユウトのクラスメイト達はと言うと。
「ユウトさんはやはりお強いですね」
「当たり前だろう!我らのリーダーなのだから!」
「ユウトお兄ちゃんは最強なんだから!」
「当然の結果ね」
「さすがですぅ」
などと言い合っていた。
しかし、その中に一人だけ違う反応をしている少女がいた。
「…………」
アイシャは、黙ったまま何も喋らない。
その様子を不思議に思ったサニャが話しかけてきた。
「アイシャ様どうかしましたか?」
「えっ!な、何でもないですよぉ」
「そうですか……」
(本当にどうしたんだろうか……)
それから、しばらく経ち、全員がそれぞれの討伐を終えた後、昼食を取る事になった。
「ユウト君お疲れ」
「おつかれー」
「みんなこそ」
「「「「「いただきま(す)」」」」」
それぞれ料理を食べ始める。
「美味しい……」
「これって誰が作ったんですかぁ?」
セリナは疑問を口にする。
「これは私の特製ですわ」
「おお!!それは楽しみですぅ!」
と笑顔を見せる。
(さっきまでの元気がなかったように見えたのは気のせいなのか?)
その後も食事は進み、全て食べ終わった。その時、誰かの視線を感じたのでそちらの方へ顔を向けるとそこには、ユウト達の様子を伺っていた一人のメイドの姿があった。ユウトと目が合うと急いでどこかに行ってしまった。
「なんだったんだ……」
ユウトは気にしながらも食器を片付ける。
その後、ユウトは森の中で修行を始めた。
自分の力を確かめるように、素振りを続ける。
しばらくして、アイシャ達の元へ戻ると、そこにいるはずの人達がいないことに気づく。
「あれ?」
もう一度見渡してみるがどこにも見当たらない。嫌な予感がしたユウトは気配感知を使い探してみた。すると、すぐに居場所を見つけることができた。
その場所に向かうと、そこには、ボロボロになって倒れているアイシャの姿があった。
ユウトはすぐに駆け寄る。
「アイシャ!?おいしっかりしろよ!?」
と必死に声をかけるが、全く返事がない。
よく見ると呼吸をしていないことがわかる。心臓の音を聞いてみると、それも止まっている。
「くそっ……一体誰がこんなことを……」
ユウトは、怒りを覚えながらも、冷静に判断をする。
まず、アイシャを安全な場所に連れて行き、回復魔法をかける。
次に、アイシャの体内にある魔力を全て抜き取り、蘇生させる。
さらに、傷も癒やす。最後にアイシャにポーションを振りかける。
(これでひとまず大丈夫か)
と、安心している暇はない。今すぐ、城に戻って治療を受けさせなければならないからだ。
(でもどうやってここから戻る……?そうだ転移だ。僕はまだ一度も行ったことのない場所にならどこでも飛べるはず)
早速試すと、案の定できたので、そこから、全員を回収して王都に戻った。
ユウトのスキルについて説明しておくと、一つ目、瞬間移動は行ったことがある場所にしか行けず、また、行ったことがない場所にもイメージすることで行けることができる。
ただし、その距離に応じてMPを消費する。
二つ目に、空間収納は、アイテムボックスの劣化版であり中に入れたものはそのままの状態で保存される。
つまり、入れたものは時間が経過しないということだ。
ユウトが目を覚ました時最初に見えたのは、白い天井だった。
ゆっくりと体を起こしてみると、全身包帯まみれになっていた。
(そういえば、あの時に僕は……)
意識を失う前の記憶を思い出すと同時に、頭に痛みを感じる。
頭を殴られたようだ。
アイシャは無事だろうか?
と、考えていると扉が開かれユリナ達が入ってきた。
「あ、おはようございます。もう起きていたのですね」
「あ、ああ」
「体の調子はいかがですか?」
「まだ少し痛むけどなんとか」
「それは良かったです」
「それよりも、アイシャは?」
「ご心配なく。彼女ならこちらの部屋の隣にいますよ」
そう言って隣にあった部屋の方を指差す。
「よかった……」
その言葉を聞きながら安堵する。
だがそこで疑問が生まれる。
なぜ自分はこの部屋に運ばれたのか。
それに、どうして頭や腕などに怪我を負っていたのか。
それを尋ねようとする前にユリナから話し始めた。
「実はあなた方が森に向かってからというものずっと様子がおかしかったんですよ。それで気になりまして、こっそりついていったのです」
なるほど。
だから、アイシャがあんな状態だったわけか。
「そして、私が見つけた時には、彼女は既に死んでおり、周りには誰もいませんでした。おそらく他の皆さんも同じ状態だったのでしょう」
その話を黙って聞くユウト。
「そして私達は、その場から離れた後、近くの村に行き、助けを求めたところ、ユウトさんが重傷をおってることがわかり、この部屋まで運び、看病をしたといった感じです」
「な、なるほど……アイシャは俺がその後で蘇生させたわけか」
「えぇ。なので、今は寝ています」
「じゃあ、みんなは……」
「はい。恐らく魔王軍の連中にやられたのではないかと」
「そんな……」
「すみません……」
「いやいいんだよ。君が悪い訳じゃない」
「ありがとうございます」
「ところで、これからどうするつもりなんだ?」
「もちろん仇を討ちます」
「え?」
「今回の件は、間違いなく奴らの仕業です」
「(本当に魔族の、仕業なのだろうか?)」
「それでは私は失礼しますね」
「お大事にしてください」
と言い残し二人は出て行ってしまった。
一人になった途端に急に眠気が襲ってきた。
(もう少しだけ……休ませてもらおう……)
再び眠りについたユウトは夢を見た。
『お前は何のために生きている?』
ユウトは答える。
「大切な人を守るため……」
すると目の前にいる男はそれを鼻で笑う。
「何がおかしい?」
男は答えずにユウトに手を伸ばす。
しかし、触れられない。
何度も手を伸ばしてくる。
それでもユウトの手は届かない。
(クソッ!あとちょっとなのに!!)
ユウトの願いは届かず、次第に意識を失っていく。
(結局……俺は……何も守れなかった……)
ユウトの意識は完全に途切れてしまった。
ーーーーーーー
「……ト……ト……ユウト!!」
「うわぁ!?ビックリした……」
突然大きな声をかけられたため驚いたユウトはベットの上で飛び起きた。
「やっと目が覚めたのかい……」
「おばば様!」
そこにはユウトの祖母であるサキの姿があった。
「あんたが倒れたって聞いた時はびっくりしたんだぞ?」
「ごめんなさい……」
「まあいいわ。とりあえず元気みたいだし、安心したわい。それよりいつの間に帰ってきたんじゃ?」
「さっきですよ」
「ふぅん。そうなのかえ。にしても、随分と無茶なことしたようじゃないか」
「別に……大したことはしていませんよ」
「嘘をつくでないわ。わしを誰だと思っておるのかね?これでも一応は賢者と呼ばれる者だよ。それに、今のその状態を見ても全然ピンときてないようだけど……」
ユウトは改めて自分の体を見る。
特に異常は見られない。
「どういうことですか?」
「はぁ……。自覚がないのは重症じゃのう」
「僕が何か?」
「まずはその右腕につけているブレスレットを外してみろ」
言われた通りにすると、黒い炎のような物が纏わりついたような禍々しい物が現れた。
「これは一体……」
「それは悪魔の呪いのようなものじゃ」
「呪い?でもなんでこんなものが僕の体に?」
「それは知らん。ただ言えることは、それは絶対に身につけてはならぬものということだけだ。それは持ち主の生命力を吸い取り、やがて死に至らせる。その前に捨てることを勧める」
「そうですか。わかりました。そうすることにします」
ユウトはすぐに腕輪を外す。
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