第6話

「さすがね。でもまだまだこれからよ」

今度は彼女の周りに大量の火球が現れる。

「これくらい避けられるかしらね」

「さぁね」

さっきのを避けた時に分かったことがある。

それは、あまり大きくないこと。

つまり避けやすい。

なので、全速力で走る。

すると、後ろから爆発音が聞こえてきた。

「ちっ!外したか!」

さっきから魔法を放ってくるが当たらない。

「なら直接潰すまでよ!」

と言った直後、僕の視界から突然消えてしまった。

「こっちよ」

上を見ると宙に浮かんでいた。

「くそ!」

「落ちなさい!」

「くそ!」

地面を蹴り飛び上がる。

空中で一回転しながら、魔力を纏わせた踵落としを繰り出す。

「やるじゃない!」

受け止められてしまう。

しかし、ここで諦めるわけにはいかない!足を掴みながらさらに上に飛ぶ。

「なんですって!なんて力なの!」

そのまま地面に叩きつける。

「かはッ!!」

上手く着地できたと思ったが、ダメージが大きかったのかふらついてしまい尻餅をついて倒れ込んでしまった。

急いで立ち上がると、すでに彼女はこちらに向かって走ってきており、拳を振り下ろしてきた。

「うわ!!」

間一髪のところで横に転び回避に成功する。

「な、なんなんだ君は……」

「はぁ、はぁ……ただの冒険者よ」

「冒険者がそんなに強いはずがない」

「そんなの知らないわ。それより貴方はいつになったら戦うの?私は早く戦いたいのだけど?」

「ごめん。もう少しだけ待ってくれるかい?」

「はぁ……仕方が無いわね」

「本当に悪いね」

「いいわ」「それじゃあ行くぞ」

「いつでもかかって来い」

その言葉を合図として、再びぶつかり合う。

そこからは激しい攻防が続いた。

お互い一撃も受けていないが、二人共かなりの傷を負っている。

それでも、両者とも止まることはない。

だが、その勝負も唐突に終わりを迎える。

ルミナスが動きを止め、膝から崩れ落ちたのだ。

「どうしたんだ?」

慌てて駆け寄り声をかける。「大丈夫よ……」

「何があったんだ?」

「私の力が尽きかけているみたい……このままだと負けちゃうかも」

彼女の顔には疲労が見え隠れしている。

無理もない。

ずっと全力で動いているのだ。それも当然だろう。

むしろよくここまで動けていたと思うほどだ。

そして、その体力を使い切ってしまったようだ。

「降参してくれる?」

と聞くと

「うん」と弱々しい声で答えてくれた。

その後、回復ポーションを使って傷を全て治してあげた。

「ありがとうございます」

「いえいえ」

「これでまたユウト様のお役に立てますね」

「そうだね。一緒に頑張ろうね」

「はいっ」

「ルミナスさんのレベルはいくつに上がったんだい?」

「はい。12になりました」

あれ?おかしい。レベルが上がるペース速くないか?

「あの〜、ちょっと聞きにくいんだけど、このペースでレベルを上げてたら体が持たないんじゃない?」

「ええ、普通だったらそうかもしれませんね。でも私の場合は少し特殊で、レベルアップした分がMPとHPに変換されるんですよ」

「そうなの!?」

「ええ」

ということは、彼女の体は無限に強くなるということなのか!?

「凄いな」

「それほどでもないですよ」

「それで、ステータスを見せてもらってもいいかな?」

「えぇいいですよ」

彼女のステータスが結構異常だったのは見てわかった。

特に経験値ボーナス5倍は怖かった。それとスキルもなかなか良いものを持っている。

「スキルも良いものが揃っているね」

「そうですね」

「でも一番驚いたのは称号かな」

そう言うと彼女は頬が少し赤く染まった気がした。

気になって見てみたのだが間違いではないらしい。

彼女のスキルの中に〈色欲〉というスキルがあるのだが、このスキルがかなり強力だ。

これは、相手の理性を奪い、自分の虜にするスキルなのだが、これを使われた人は、もう彼女にしか目がいかなくなってしまう。

そして、相手は自分の命よりも彼女を優先してしまうようになる。

しかも恐ろしいことに解除することはできない。

ただひとつ救いなのは、一度使うとその人とは二度と使えなくなることだろうか?それに時間が経てば戻るらしい。

「なんか大変そうだな」

「そうですね」

と言って彼女は苦笑いを浮かべていた。

そして、俺は思った。

こんな可愛い子に愛されたい!! そして、彼女を俺のものにしたい! 絶対に落としてみせる! 俺はそう心に誓ったのであった。

「よし!じゃあ王都に戻ろっか」

「そうね」

こうして僕達は、転移石を使用し王城に戻って行った。

「お帰りなさいませ。ユウト様」

「ただいまっす」

「今から報告ですか?それとも休憩なさりますか?何か飲み物でも用意いたしましょうか?」

「うーん、今はいいや。部屋に戻るからあとで頼むね」

「畏まりました」

「じゃあ行こうか」

「はい」

と言って歩き出す。

「じゃあ僕はここで失礼するよ」

「はい。では後で部屋に伺いますね」

「了解です」

「それじゃあまたね」

「はい」

俺は、自室に戻りソファーに深く腰掛けた。

「はぁ〜」

今日一日いろいろあった。

「これからもっと忙しくなっていくのか……」

とりあえず寝よう。

次の日、朝食を食べ終えた頃を見計らい彼女がやってきた。

「おはようございます。昨夜はよく眠れたでしょうか?」

「ああ、とても快適な眠りをさせてもらったよ」

「それは良かった」

「ありがとう」

「どういたしまして」

「さっそくで悪いけど今回の事について話を聞かせてくれるかい?」

「わかりました。まず、あの街には魔王軍の四天王の一人である"氷の魔女"」

「"水の女王"、"風の賢者 "、そして、私の兄である勇者と戦えるレベルの強者が集まっていました」

「なるほど……」

「そこで私は、ある計画を実行することを決め実行に移しました」

「どんな計画を?」

するとルミナスは真剣な眼差しをこちらに向けてきた。

「はい。それは………….」

話を聞き終えると思わず言葉が出てしまった。

「なんていう作戦だよ」と……

まあいい……そんな事は置いておいて、それよりも重要なことがある!それは……."ロリコンホイホイ作戦""だ!!!!!!!』

「ふぅ……なんとか終わったわね」

ルミナスは大きく息をつく。

ユウトは、ルミナスの話を聞いてくれたが、

「流石に危険すぎる!」

と言われた。

しかし、ルミナスも引かなかった。

ルミナスにはどうしてもやりたいことがあった。

それが、ユウトと一緒に冒険することである。

だから諦めなかった。

だが、このまま押し問答を続けていても、話は平行線をたどるだけだった。

なのでルミナスが提案したのだ。

自分が囮になるからその隙にユウトに倒してもらうというものだ。

これなら、もし万が一負けても問題はない。

なぜなら、自分より弱い相手に負けるわけがないからだ。

そして、戦いが終わった後、二人でゆっくりと過ごせる。

さらに、自分は負けることが無いので怪我をする心配もない。

まさに完璧なプランだった。

「そういえばユウト様は下着可愛いのを付けてますよね」

ルミナスが急に言い出す。

「ぶ!?」

俺は盛大に飲み物を吹き出す。

「ゲホゲホ!なんで知ってる!?」

「え?この間一緒に温泉入った時に見ましたが」

「あ、あの時ですかーそうですよねーあの時見ましたよねルミナスちゃんは」

「ちゃんされましたです。嬉しいのです」

「ぐぬぬ」

「で、どうだったんですか?可愛かったんでしょう?」

「はい、とっても似合ってました」

「そ、そうかしら?//」

「はい!とってもよくお似合いでした」

「えへへ」

「はっ!いけない!私ったらつい……」

「いいんですよ。素直になってくれて。私、嬉しかったですよ?」

「そう?でも私、子供っぽいの嫌いだし……」

「大丈夫ですよ。誰だって初めはそうです。私もそうだったんですよ?」

「そうなの?」

「ええ、私も最初はユウト様に嫌われたくなくて背伸びをしていたんですよ。でも、そのうちだんだんと自然体になっていけるようになりました」

「じゃあ、今の私が本当の姿なのかしら?」

「はい、きっとそうですよ」

と微笑みながら言うと

「そうなんだ……」と呟いていた。

「でも困りましたね〜せっかくプレゼントしようと思ったのですが〜」チラッチラッと見てくる。

これはあれですね。欲しいものをアピールしている時の目ですね……。

しょうがないか。

「いいよ。あげよう」

と言うと彼女はパァッっと顔を輝かせて喜んだ。

そして、俺達はそのまま買い物に行くことになった。そして今、彼女は試着室で着替えているところだ。

俺が待っているのは彼女の下着だ。

彼女は自分で選ぶのが恥ずかしいと言って俺に見せてきた。

正直、俺としては凄くありがたかった。

俺としても、可愛い子(妹)に頼まれたら断ることはできない。

それに、彼女は結構大胆に胸を見せびらかす服を好んで来ていた。

俺的には、とても眼福だったが他の男に見られると思うと嫉妬してしまうほどだった。

俺だけのものにしたい!という思いが日に日に強くなっていったのだが、どうすれば良いのか悩んでいたのだ。

そこに、この機会が訪れた。

これはチャンスだと思えた。

俺色に染まらせようと思い、今日は彼女への贈り物として買いに来た訳なのだ。

しかし、なかなか決まらないようだ。

彼女は優柔不断な性格なようで、ずっと鏡の前でうんうんうなっていた。

「もうどれでもいいじゃないか?」

と思ってしまうくらいには長考していた。

だがしかし、こういう時は急かしたらダメだという事を俺は知っているので大人しく待つことにした。

すると……

「ねぇ……これどうかなぁ?」

カーテンを開け、不安げな表情で聞いてくる彼女に俺は思わずキュンときてしまったのであった。

その後、

「すごく似合っているよ!」

と言いまくると照れながらもとても喜んでいた。

結局、黒を基調としたセクシーなものを選んだらしいが、ルミナスのイメージとは少し違うような気がしたが本人が選んだものなら何も問題はないだろう。

俺は早速支払いを済ませようと店員を呼ぶために手を上げると同時にドアが開いた。

そこには…….

「あっ!」

「あら?」

「「……」」

お互いに固まってしまう。

「「ああああああ!!!!!」」

お互いの声が店内に響き渡った。

何故、彼女がここにいる!? いや、それよりも!ヤバい!!

「どうしてあなたがここにいるのよ!」

「それはこっちのセリフだわ!なんであんたがユウト君と一緒にこんな店に来てるのよ!?」

「それは……私の勝手でしょ?それともなに?何か文句でもあるわけ?それともこれから一緒にご飯食べる予定でもあった?ないわよね?あるはずがないわ!だって私とユウト君はこれからデートするんだもんね?ね?」

捲し立てるように言ってくる。

「ふふん。まあそういう事だから残念だったねルミナス。私はここで失礼させてもらうね。じゃねー」

勝ち誇った顔でルミナスに別れを告げる。…………はっ!そんなことは許さない!ルミナスちゃんとのデー卜はまだ終わっていない!邪魔者は消えてもらおう!

「待てルミナス!なんで俺がトリプルデートに行く羽目になるんだよ!俺的には凄くいいけどお前はいいのか?」

「ガールズラブ最高」

と言い出すルミナス。

「うん俺も女の子だからガールズラブは最高だと思って……って何言わす!?」

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