第5話

地面から土の壁が出てきた。

それをジャンプして避けるがそこに待ち構えていたのはセフィーリアだった。

「はぁああ!風よ、吹き荒れよ!ウィンドカッター」

風の刃はアリスを襲ったがその攻撃も軽々とかわされてしまった。

4つの羽を動かすだけでセフィーリアの攻撃は難なく回避されたのだ。

「さすが魔王の幹部だけあって強いですねぇ」

「次はこちらの番です」

と言って、セフィーリアに向かって急降下してきた。

セフィーリアはそれをなんとか交わすことができた。

「なかなかやりますね」

「ええ、本当に。でも、負けませんよ」

「頑張ってくださいね。でも、この程度だと期待外れもいいところです」

「ならば、これはどうかしら?雷よ。敵に裁きを!サンダーボルト」

「無駄ですよ。効かないですよ」

そう言ってまた飛び立とうとするが、足元には大量の電気が走っていた。

「残念でした〜。私の計算通りですね」

「ぐっ……なんて魔力量なんでしょうか。やはりただ者ではありませんでしたか……」

「そうゆうことです」

「仕方ありません。少し本気を出しましょう」

と言い、両手を前に出すと手の間がバチッっと光り出した。

「行きなさい。私の子供たち」

と言った瞬間、無数の雷撃が襲ってきた。

「きゃあ!」

と悲鳴を上げる。

「くぅ……中々やってくれますね」

「あなたこそ。でもこれで終わりよ」

と指先を向け、その先には強力なエネルギーが集束していた。

「喰らいなさーい!」

「やらせないよ!水よ、槍となり敵を突き刺せ!」

水の槍が数本現れ、その1つが直撃する。

だが、全くダメージが無いようだった。

「私の子供を殺す気?」

「大丈夫だよ。その子たちは私の味方だから」

と自信満々に答えると、美琴は言った。

「私は、あなたの攻撃を相殺します。だからその間にお願いね」

「分かったわ」

「なら、行きましょう!」

と言い放つとアリスは、再び詠唱を始める。

(私だってやれるんだから)

と、アリスが決意を固めていると、アーサーが戻ってきた。

「どう?ユウトちゃんの役に立てた?」

「ええ。助かりました。ありがとうございます」

「いいえ、当然のことをしたまでよ」

「ユウトくんの邪魔をするものは私が排除しないとね」

(そういえば、彼女はユウトちゃんのことが好きだったわね)

「はい。なので、協力してください」

「もちろんよ」

「なら、早く終わらせないとね」

「えぇ、そうですね」

2人は同時に駆け出し、そして剣を交える。

「あらあら、お嬢さん方。何をしているのかしら?せっかく見逃してあげようとしましたのに」

「そうですか。では、その親切心を無下にしましょう」

と、言い放った。

「はぁああ!!」

「ふっ!!」

その一撃はどちらも譲らず拮抗していたが、少しずつ押され始めていた。

「あらあら、こんなものですか」

「くっ……このままではまずい」

「アリス!」

「任せて!」

「行くわよ!」

と、アリスは唱えた。

「我が名において命ずる。炎よ、敵を焼き払い給へ!ファイヤーストーム!!」

その炎の渦は相手を包み込んだ。

「うぉおお!!」

その炎の中から雄叫びが聞こえてきた。

そして炎が晴れるとそこには無傷のヴァルガーがいた。

「はぁー、まさかこれ程とは……。流石に驚きでした」

「嘘でしょ……」

「そんな!どうしてよ!?」

と2人とも驚くしかなかった。

するとアーサーが言った。

「おそらくあの魔獣は防御に特化していて、さらにスピードもあるんだろうな」

「なるほど、確かにあの速さは異常だわ」

「それに加えてあの防御力か」

「厄介ね」

「そうだね。でも、私たちのやる仕事は変わらないわ」

「ええ、分かってるわ」

「さて、そろそろ終いにしましょうかね」

そう言って4枚の翼を大きく広げる。

「さっきよりも速く動くわよ!付いてこれるかしら」

4枚の翼は激しく羽ばたき始めた。

するとアリスたちの目で追えないほどの速度になった。

「は!?」

アリスはその速すぎる攻撃についていけず防戦一方になってしまう。

「きゃあ!この!止まって!止まりなさい!!この!この!この!この!この!この!この!…………あっ!痛った〜い!!!」

アリスの攻撃は全て避けられ、さらにカウンターとして攻撃を受けてしまう。

「くっ……アリス!」

セフィーリアも応戦はしているが、攻撃を当てることができないどころか、逆に攻撃を受けてばかりいる。

「ぐはっ!……この!くっ……はぁ……はぁ……強い……」

「さあ、もう諦めなさい。貴方たちに勝ち目はありません」

「まだ……負けていない!」

アリスはフラつきながらも立ち上がり、再び魔法を唱える。

「大地よ、敵を呑み込め!アースホール」

地面から巨大な穴が出現した。

「無駄です」

「それはどうかしら?」

「どういうことかしら?」

「こうゆう事よ」

と言ってセフィーリアが指を鳴らすとその穴を塞いでいた土が崩れ落ちた。

「え?なんのつもり?」

「これで、逃げられませんよね?」

セフィーリアはニヤリと笑みを浮かべながら言った。

アーサーもそれに続いた。

「まぁ、逃げたところで我からは逃れられないけどな」

(これは一体?)

(分からないけれど今は従うしかないでしょう)

((そうですね))

(そうですか)

(ならば、望み通り消して差し上げましょう)

(させないわ)

(ええ、そうです)

(私のユウトくんに手を出すことは許さないわ)

(絶対に止めます)

(じゃあ、行きましょうか)

(はい)

(行きましょう)

(行きます)

(終わりよ)

(終わりね)

(行きますよ)

(行くわよ)

(終わりですね)

(終わりよ)

(終わりね)

(終わりよ)

俺は魔王の城に来ていた。

ここに来れば、元の世界に帰れるかもしれないからだ。

だが、その希望は目の前の光景を見て消えてしまった。

なぜなら、その部屋には血が飛び散り、床には肉片が転がっていたのだ。

そして、部屋の中央で腕を組みこちらを見ている女性がいた。

「ようこそ。我が城に」

「誰なんだ?」

「私の名前は、ミレーニア・ヴァルガーよ」

「お前が俺を呼んだのか?」

「違うわ。呼んだのはこの子よ」

「その子?」

「えぇ、紹介するわね。出ておいで」

すると、奥の方から小さい少女が出てきた。

その姿に一瞬見惚れたがすぐに警戒した。

何故なら、その顔に見覚えがあったから。

「ユウト様」

その声を聞いて確信した。

彼女は紛れもなくルミナスだった。

「君は本当に何者なんだ?」

「私は、ユウト様に救ってもらった吸血鬼ですよ」

「いや、そうじゃない。君の正体だよ」

「私の名前?名前なんてどうでもいいではありませんか?」

「いや、どうでもよくはないよ」

「では、どういった意味でしょう?教えてください」

「まず、1つ目だけど。なぜ、自分のことを話したがらないんだ?そして、2つ目はどうしてこんな事をしているのかだ」

「ふむ。では、順番にお答えしましょう。では、一つ目を答えると単純に言うと、ユウト様と一緒にいたいだけです」

「えっと、一緒にいて楽しいとかではなくてか?」

「はい。もちろんそれもありますよ」

「そっか……」

正直、こんな可愛い子に好意を持たれるのは嬉しいことだ。

でも、こんな危険な目に遭わせたくない。だから、この子は連れて行けない。

「次に二つ目なのですが……少し恥ずかしいのですが、実は一目惚れしてしまったんです。それでつい衝動的にこのような行動をとってしまいました。ごめんなさい」

「い、いいんだよ。大丈夫だ。ただ危ない事はしないでくれ」

「分かりました。気をつけます」

「それじゃあ、これからは普通に暮らしてくれ」

「ダメでしょうか?」

と、上目遣いで言われて断れなくなってしまった。

「分かったよ」

「ありがとうございます。それと、最後に三つ目が先程言ったように、ユウト様のことを慕っているというのも理由のひとつです」

「そっちは別に隠さなくてもよかったんじゃないかな?」

「いえ、これが一番重要なことでしたので」

(えへっ)

と言って照れたような顔をする彼女を見ると、やはりどうしてもこの子を嫌いになれなかった。

「そうか。それじゃあ、改めてよろしくね」

「はい!よろしくお願いします」

こうして、俺たちは仲間になった。

そして先程の場所まで戻る。

「あら?戻ってきちゃったの?」

「ああ、もう用は済んだんだ」

「そう。それじゃあさっさと帰ってくれないかしら」

「悪いけどそれはできないよ」

「どうしてかしら?まさか、まだやる気なのかしら?」

「当たり前だろう?」

「さっきは私の力を見せられなかったけど今度はちゃんと見せられると思うわ。それでもやるのかしら?もしそうなら仕方がないわ。殺し合いましょうか。全力を出して貴方を殺すわ。でも、もしかしたら死んでしまうかもね。あはははは!」

「いや、帰らせてもらうよ。これ以上やっても意味ないしね。それに……もう遅い」

「はぁ!?」

すると、扉の向こう側から大勢の足音が聞こえてきた。

「さっき、城全体に結界を張ったのはこのためさ。あとは逃げるだけだからね」

「ちょっと待ちなさいよ!」

俺は振り返らずそのまま部屋を出た。

城の外に出ると兵士たちが待機していた。

「貴方達!」

「はい!我々は勇者アーサー殿の指示に従いここに来た次第です!」

「さぁ、行きなさい!」

兵士の人たちは馬車に乗り込み出発していった。

そして、俺は城の中に戻って行った。

〜〜

「くそー!なんでよ!」

アリスはイラつきながら壁を殴る。

「落ち着きなよ」

「だって!悔しいわよ!!」

「まぁ、そうだよね」

セフィーリアも同意しつつ考える。

(おかしいわね。あの男が言ってた事が本当だとしたら、もっと早く逃げられたはず。ということは、私たちを油断させるために嘘をついた?)

(いや、そんなことはないわ。私が探知した限り、転移魔法陣は無かったわ)

(じゃあ、どうやって逃げたっていうの?)

(分からないわ)

(うぅん……)

(とにかく今は一旦帰りましょう)

(うん)

(ええ)

(はい)

(了解)

そして、アリスたちはその場を去った。

アーサーは魔王城の前で立ち止まっていた。

そこに、兵士が近づいてきた。

「おい、何してんだ?お前は乗らないのか?」

「……」

「聞いているのか?」

「ああ、我は歩いて帰る」

「は?何を言っているんだ?」

「いや、まぁ気にしないでくれ」

「いや、そういうわけにはいかないぞ」

「頼む」

「だが……」

「命令だ」

「ぐぬっ……」

その言葉を聞き、渋々といった感じで引き下がった。

そして、兵士達が去った後、独り言のように呟いた。

「これで良かったのか?」

すると、どこからともなく返事が返ってきた。

「ええ、良いのよ。ありがとう」

「お前の頼みだからやったのだ。感謝しろよ」

「分かっていますとも。だから頼んだんですよ」

「ふん」

「ではまた会いに行きますからその時までに準備をしておいてください」

「はいはい」

「それじゃあ、失礼します」

その男は消えた。

その後、彼は城に戻らなかった。

そして、その日から彼の姿を見たものは誰もいない。

「よし、今日はレベル上げに行こうか」

俺達は今、王都の外にいる。

理由はルミナスのレベルを上げるためだ。

「頑張ります」

「頑張ってねルミナスさん」

ルミナスは拳を強く握りしめている。

おそらく気合が入っているんだろう。

「あ、ユウト様は離れていてください」

「え?どうして?」

「いいですから離れていてください」

なぜか離れろと言われたので離れた所に移動する。

「ユウト様。見ててください」

そう言うと彼女は、剣を取り出して構えだした。

その姿はとても綺麗だった。

「行きます!」

と言って走り出す。

一瞬にして相手との距離が縮まる。

そして、相手が攻撃しようとした時、彼女の姿がブレて見えた。

次の瞬間、相手の首が落ちていた。

「お見事!」

「ありがとうございます」

そう言いながらも彼女はすぐに首を拾ってくっつけた。

これは再生というスキルで死んでも生き返り、どんな傷でも治ってしまう。

この世界の人々は、みんな持っている。

「それじゃあ、どんどん倒していくか」

「はい!」

そう言って歩き出したのだが、少し進むと敵に囲まれた。

「どうする?全部倒すか?」

「いえ。今回は私に任せてもらえませんでしょうか?」

「了解したよ。頑張って」

「ありがとうございます」

と言って、飛び出していった。

「まずは、あなたたちですね」

と言って、近くに居た敵を殴り飛ばす。

すると、周りにいた他の敵の頭が吹き飛んだ。

そして、あっと言う間に全滅してしまった。

「次は誰ですか?」

そう言われたので俺は一歩前に出た。

「じゃあ、今度は僕に戦わせてくれるかな?」

「はい!もちろんですよ」

そして、戦闘が始まった。

「〈炎弾〉」

僕は、手を前に突き出し魔法を放つ。

「甘いわよ」

そう言った彼女が目の前に現れる。

「な!?」

咄嵯に反応し後ろに跳ぶ。

「あら?意外と反応が良いのね?」

と言いつつ、追撃してくる。

「危ないな!」

なんとかギリギリ避けることができた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る