第4話

ユウトはその人物に見惚れてしまっていた。

それほどまでに美しく整った顔立ちをしていた。さらに、身に纏っているものは純白の衣装に身を包んでおり、髪の色は透き通るような銀髪をしていた。

彼女はユウトの方を見ると微笑みを浮かべながら近づいて来た。

それに対して呆然としたまま動けずにいるユウトに対して彼女が口を開く。

「久しいですね。ユウト」

「えっ?どうして俺の名前を?」

「あら、忘れちゃったんですか?」

と言うが、やはり心当たりはなかった。

「すみません。俺には記憶がないんで分からないです」

「ふふふ。冗談よ。ちょっとからかっただけですから許しなさい」

「はぁー。びっくりさせないで下さいよ」

「それよりも、こうして再会できたことを喜びましょう」

「はい、そうですね。本当に会えて嬉しい限りです」

「それでは自己紹介から始めさせてもらいますわね。初めまして。私の名はアルテシア・フォン・ミーシャ。あなたの世界での名前は神崎美琴よ」

と衝撃的な発言をしたのだった。

「えっと、その、はい。はじめまし……って、はあああっ!?」

「どうかしましたか?」

「ど、どうもこうもありませんよ!!何言ってるですか?!貴女は一体誰なのでしょうか?」

「うーん。難しい質問ね。とりあえず、分かりやすく言うならば女神ということになるかしら?」

「め、女神様が何故ここに?」

「それも説明しなければなりませんね。まずはこちらの世界に来る前のことから話していきましょう」

「はい」

「簡単に説明すると、私はある日突然見知らぬ空間にいたのです。そうしてその近くには先程会った彼らもいたというわけなのですよ」

「なるほど。ということはつまり?」

「そう。私が彼らに頼んだということになりますね」

「そうなると、俺はこれから異世界に行くということなのかな」

と言いつつ不安げな表情をしている。すると

「心配することはありませんよ。ちゃんと帰ってきてあげますから」

「本当……なの……かな……?」

「もちろん!」

と言って満面の笑みを見せた。

「そっか。よかった〜」

(あれ?でもなんだろうこの気持ち……。なんかドキドキするんだけど……。これってもしかして恋なのか?)

「さっきの話に戻るけど、それで向こうに行って何をすればいいのか聞いていないのだけれど……」

と、ユウトは少し恥ずかしがりながらも聞いたのだ。すると

「そのことだけど、実はもう決めてるんですよね」

「へぇ〜。それはどんな?」

「ズバリ魔王を倒すことです」

「な、なにぃ?!」

(おい待てよ。まさかまた戦うことになるのかよ……。でも今度は負けないぞ)

(それにしても相変わらず彼は可愛い反応をするわよね)

と言って一人でニヤけている美琴だった。

(でも、それだけじゃなくて他にも理由があるんだよねぇ〜)

(他に何かあるのだろうか……)

「あのぉ〜?まだ何かあるのですか?ずっと黙り込んでいますが……」

「ああごめんなさい。考え事をしていました。他には特に何もないですよ」

「そうだったのなら良かった。ところで一つ聞きたいことがあるのだけれどいいかしら?」

「いいですよ。答えられることなら何でも答えますよ」

「ありかとう。あの、もしかしてユウト君って、女の子じゃない?」

「ッ!!」

「やっぱりそうなのね。私には分かるのですよ。なんとなく気配が違う気がしたものだから。あとその耳、触らせてくれませんか?」

「だ、ダメに決まってるでしょう。いくらなんでも急にそんなこと言われたって困っちゃうだけだよ?」

「ふぅーん。そうなんだぁー」

と不敵な笑いを浮かべながらユウトを見つめている。

ユウトは冷や汗を流していた。

そうしてユウトは美琴の尋問を受けていた。

そしてようやく解放されるとユウトは安堵していた。

だが、それから数分後に再び同じ質問をされた時は本気で焦っていたようだ。

その後にも同じようなことが何度も繰り返されたらしい。

その様子を見ていたセフィーリアたちはドン引きしているようだったが、本人は全く気付いていなかったようである。

そうこうしながら時間は過ぎていき夜になった頃になってついに解放されたそうだがその時の顔はとても疲れきった顔をしていたという……。

翌日になり

朝起きると

服が少しめくれ上がっておりブラが見える。

「きゃ!?」

という声を出してしまう。

「ん?おはようユウトくん……へ!?そのブラ」

「見ないでよ」

「可愛いどこのメーカー?」

「え?エテルプリー」

「あー!エテルプリーの下着使ってるんだ。あそこの可愛いよね」

「うん。好きだから」

「わかる。私も好き」

「今度一緒に買いに行きましょう」

「そうしよう」

と言った感じで盛り上がっている。

「ところで、今日はどうするのですか?」

「あ、セフィーリアさん。起こしに来てくれたんですか?」

「いえ、違います。ただお二人の会話が聞こえてきたものですから」

「そうでしたか。では、今日の予定について話し合いましょうか」

「はい」

「それなら私も参加させてもらってもいいかしら?」

「もちろんですよ」

「ありがとうございます」

「早速ですが、昨日行った場所に戻りましょうか?」

「どうしてです?」

「そこには、転移魔法陣がありますから。なのでいつでも戻れますよ」

「そうなんですか。わかりました」

そうして3人は一旦戻り、そこで昼食を食べてから森へ向かったのだが、その場所に着く前に異変が起きたということだ。

3人が森の中に入るといきなり周りにあった木が全て消えた。

「これは一体どういう事でしょうか?」

「分からないです」

「とりあえず警戒態勢を取りますよ。二人とも準備をしてください。私は主様に報告しておきますので」

「分かりました」

「了解」

2人はそれぞれ武器を構える。

「ユウトは私が守るよ」

「俺も戦えるよ勇者だし」

「可愛い女の子に戦いなんてさせれません」

「君だって可愛い女の子じゃんか」

「私はいいの!ユウトくんだから守りたいんだから」

顔が赤くなり俯くユウト。

「とにかく!君は下がっていて」

「うーんわかった」

と、大人しく下がる。

「来い!魔王の手下共!この勇者が相手になるぞ!」

と、大声で叫ぶと何処にいたのか沢山の魔物が現れた。

「あれはオーク!?」

「ここは任せて!はああっ!セイクリッドブレード!」

聖剣による一撃によって一瞬にして消し去った。

「やったね。次々くるよ。俺がやるから後ろから攻撃しないようにね!」

「分かった!」

そう言うとユウトの身体が淡白く光り始めた。

「行くぞぉおお!」

10分後 全ての敵を殲滅させた。

辺りは静寂に包まれている中、2人の呼吸音だけが聞こえるだけだった。

すると突然、奥の方から足音が近づいてきた。

その方向を見ると1人の女性がいた。

「貴女は何者なのです?」

と聞くと彼女は答えた。

「よく来たわね。私の名はアリスティア・フォン・マルグリッド。魔族の女王である」

と言い放ったのだ。

その瞬間に周りの木々や地面まで全てが消えてしまったのだ。

まるで彼女を中心にして世界が無くなってしまったかのように。

その光景を見たユウトは言葉を失っていたのだ。

それは隣にいる美琴も同じであった。

すると美琴はあることに気付いた。

(おかしいわね。なぜこんなに冷静な状況分析が出来ているのだろ?本来ならばもっと慌てふためくはずなのに……。でもまあいいか)

と考え、美琴は再び話し始めた。

「まさか魔王自ら現れるとは思いませんでした。しかし、何故私たちに戦いを挑もうとしたのですか?その理由をお聞かせ願いたいですね」

するとアリスティアが口を開いた。

「理由は簡単だ。お前たちを殺す為だよ。しかし、まず先にそっちの男を殺さなくてはならなかった。だから、その男だけ生け捕りにした。他は全て殺した。これで理由も目的も達成できた。」

「ん?俺!?」

ユウトは自分が男として見られていることにびっくり。

「貴方は女の子でしょう?でも襲いたくなるくらいに可愛いわね」

「はっ?」

とユウトはあまりの状況に思考停止してしまった。

「やっぱりユウトは男の子じゃなかったのか……」

美琴は落ち込んでいた。

「あら?バレてないと思っていたの?」

と聞かれるとユウトは顔を真っ青にしてしまっている。

そしてユウトは泣き出してしまう。

美琴はそのユウトを慰めるのだった。

その様子を見てさらに追い討ちをかけるように美琴に向かって言った。

「ふふふふふふ。そんなことをして良いと思っているのかい?」

「え?」

「私もそこまで鬼じゃないからねぇー。君が大人しく私に従ってくれるのであれば、その子には手を出さないであげるけど?」

「ええ、約束しますよ。この子だけは絶対に守ります」

「へぇー本当に?」

「はい」

「もし裏切ったら?」

「その時は覚悟しています」

「なら、私に従いなさい。そうすれば手荒なことはしないであげますから」「わかりました」

美琴が答えるとユウトが慌てて声をかけた。

「ちょっと待って!何勝手に決めてるんだよ!俺は大丈夫だって!そんな奴に従う必要なんか無いから!それにセフィーリアさん達も助けてくれるはずだし」

「ユウト……ありがとう。気持ちは嬉しいよ。だけど、私は君のことが大好きだから君を守りたいの」

「なんで!?どうして俺の為に……?」

「決まっていますよ。好きな人を守るのは当たり前のことですよ」

「セフィーリアさん……。」

「ごめんなさい。本当は私もユウトくんと一緒に居たいです。でも今は我慢するしかありません。だからお願いだからユウトくん、死んじゃダメですよ」

「ミーナさん……わかりました。俺、死にません。絶対生き抜いてみせます」

「うん。信じていますよ」

「えーとアリスティアさん」

「アリスでいいわよ。ユウトちゃん……私たち仲間になったわけですから私を存分に愛してくれていいのよ」

「愛すって俺女の子」

「ガールズラブ!いいじゃないユウトちゃん!私の愛を受け止めて」

と言ってアリスはユウトを抱きしめる。

顔を赤くするユウト。

大きなおっぱいが当たるのもそうだけど女の子同士だとしても抱きつきは結構勇気のいる行動。

顔が赤くのは当然である。

それを見て嫉妬している人が1人。

「ちょいとお待ち下さい!」

と、割り込むようにしてユウトを奪い取った。

「むぅ!私のユウトに気安く触らないでよね!」

「何を言っているの!私のよ!離してちょうだい」

「私のだって言ってるでしょ!いい加減離れてください」

「嫌よ!だって私がユウトを愛しているのだから!」

「はああっ?ふざけないでください!」

と、2人は言い争いを始めてしまう。

その様子を見ながらユウトは思った。

(あれ?この状況ってもしかしなくても、かなりやばいんじゃないか?)

「ねえ、2人とも落ち着いて。ねっ、一旦話し合おう」

「「無理!!」」

2人の返事がハモった。

「仕方ないなぁ。2人とも一緒に俺とデートでどう?」

「「え!?いいの?」」

と、今度は二人同時に同じ反応をした。

「ああ、2人との思い出作りしたいからね」

「やったあ!」

「行きましょう!」

「「おぉ!」」

と言い合いが終わったようだ。

「それで、どこに行けば良いかな?」

「ユウトと一緒ならどこでも楽しいわ」

「私も同じ意見ですね」

「そうか、とりあえず歩いてみる?」

「そうね」

3人で森の中を歩き始める。

(ん?なんだあれ?何か近づいてくるぞ)

とユウトは思う。

その方向を見ると黒い球体があった。

その大きさは半径5mはある。

「危ない!!!避けろぉおお!!くそがっ!こうなったらやるしかないな。来てくれ剣神アーサー・ドラグーン!!!!!」

と言い放つと、空に亀裂が入り、そこから一筋の光が降りてきた。

その光は徐々に形を変え、そして姿を現した。

その姿は銀色に輝く美しい鎧を着た男性だった。

その男はゆっくりと地面に着地すると、ユウトは叫んだ。

「頼むぜ、相棒!!」

するとその言葉に応えるように言った。

「承知した。我が主よ!」

アーサーが言った。

「まさか、聖騎士を召喚できるとは思わなかったわ。ユウトちゃんって素敵ねやっぱり」

「もう!アリスったらいまは身構えてよ」

とアリスの頭を撫でておくユウト。

「きゃー!?ユウトちゃんたら積極的!私理性がおかしくなっちゃうわよ」

と身体全体を使って喜びを表現している。

「アリスは放っておいて。行くよ!美琴さん!俺たちで倒すんだ!あの魔物を」

「分かったわ」

するとユウトはアーサーに話しかけた。

「アーサー、お前の力を俺に見せてみろ」

「御意。では参る」

と、言うと一瞬にして消えた。

魔獣ヴァルガー

「ふふふ。貴方たちの相手はこの私よ」

と言うと彼女の背中から4枚の翼が生えた。

「あらあら、可愛い子たちだこと。食べちゃいたいわ」

「おい、女よ。我は貴様を斬り殺す」

「ふふふ。勇ましいわねぇー。まあいいでしょう。遊んであげるわよ」

「ふん。抜かせ」

そう言って、戦闘が始まった。

アリスは魔法を使い始めた。

「炎よ。敵を焼き尽くせ!ファイヤーボール」

と唱えるとアリスの手から火球が現れ、それが飛んでいった。

しかし、それはいと簡単に避けられてしまった。

「そんなものですか」

「まだまだ!これくらいじゃ終わらないよ」

と、さらに詠唱を始めた。

「大地よ。敵の足を封じよ!ロックウォール」

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