第23話 むむむのむ2(後半)
夜鳴き鳥は伴侶を迎えたのだろうか、あるいは単に鳴き疲れたのか。いずれにしろ、未練がましきその声は、随分と間が開いたものとなったその次の日のこと。
私は半ばあくびをかみ殺しながら、忍者さんのところに向かった。昨夜、なかなか青鬼さんが私を解放してくれなかったせいだ。
こうなったら、頼りになるのはこの方のみ。何か、私が知らぬことを知っているかもしれない。アンブロウズ様が忍者さんにだけ告げたことがあるやもしれぬ。何せ、私がアンブロウズ様と会ったのは、あの一度きり。忍者さんの方が信頼があついのではないか。そうであるならば。
もちろん、この考えは私の心の内にあったのだけど。ただ正直、話しかけやすいお方ではない。なので、おのずと、後回しになっていたのだけれど。
そして、どうせ聞くなら、早い方がよいと想い、出発する前に動いたのだった。といって、すぐ隣の天幕なんだけど。結局、忍者さんの私に対する護衛の務めというのは、あれからも続いておったのだ。
この十二行というのは、てんでばらばらの集まりらしく、なので、寝るところも別々にということになった。緑木の五虫の如く五人で一つの天幕というのもあったが。他方、私がいくら青鬼さんと仲良しといっても、また、種族が異なるといっても、やはりそこは男と女、同じ天幕で眠るというわけにはいかない。なので、私は一人用の天幕にて寝起きしておった。
私は天幕の外から声をかける。その内には、ネフェルタ王と死人使いもおるはずであった。忍者さんが出て来る。さすがにまだ覆面はかぶっておらぬが、それで厳めしさは微塵もへらぬご面相である。
更には、「何用か?」とぶっきらぼうに問われる。それだけで、きびすを返したくなるが、この方は機嫌が悪くて、こうなのではない。というのは、往路、数日とはいえ同行していたので、分かっていた。何せ、ずっとこうだったから。
私は気を取り直し、そうして、ようやく問うた。なぜ、ネフェルタ王は体付きとなっておるのだろうかと、そして、それについて何かアンブロウズ様から聞いていないかと。
相手は虚ろな顔となり、それを見て、私は失望せざるを得なかった。やはり答えを持たぬのだ。
ただ、その虚ろなところから戻って来ると、私の問いに答えることもなく、次の如く言うて来た。
「丁度良いところに来てくれた。実は私はやらねばならぬことがあってな。しばし、離れることになる。それで、少しばかりネフェルタ王の面倒を見て欲しいのだ。なに、心配は要らぬ。
これを頼めるのは、そなたをおいて他にないのだ。何せ、そなたはネフェルタ王に近付くことを、アンブロウズ様直々に許されておる。それはそなたの任務より明らか」
(むむむ)
そこで私の返事も待たずに、忍者さんは天幕の内へと。「頼んだぞ」と言い残して、
(むむむのむ)
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