第21話 あわいを巡る断章その2

 ネフェルタを棺桶から出して二度目の夜のこと。


 死人しびと使いは再びあわいを求めて、その者のうちに潜り込んだ。そのあわいの先には、死者の記憶の残滓があるはずであった。そして、そこが己の仕事場であった。


 しかし、やはりあわいさえ見出せない。ただ、何も無い訳ではなかった。ずいぶんと不思議な光景が広がっておった。大小さまざまな無数の管が絡み合っておった。あるところでは、それはつながり合わさって、あるところでは別れておった。そして本来であれば、手前の管が邪魔をしてその向こうは見えぬはずなのに、その様の全てを見ることができた。そう。見果てぬ先まで管で埋め尽くされておった。


 果たして己は何を見ているのか?


 とても人の心のうちとは想えなかった。ただ、己が潜ったことのあるのは、死者のみである。なので、これが尋常でないとは言い切れぬ。あるいは、復活者ゆえか。




 己にネフェルタを操るよう命じたあの方に相談しようかと想うも、すぐにそれは愚かな惑いに過ぎぬと断じた。


 何にせよ、借りを作ること、そればかりか、そのきっかけを与えることさえ、つつしむべきであろう。これ以上、つけ込む隙を与えたくはなかった。


 あの方に頼みごとをするとしたら、己の想い人たる死都のきさきに関わることに限るべきである。軽挙妄動に陥りがちな己を叱った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る