第9話

 特に何もすることがないため、自ずと弟子の万丸まんまるさんとも、話すようになった。たまたま、ツチノコの魂のお気に入り試験についての話になった。彼女もまたやったことがあるとのこと。なので、気になっていたことを尋ねてみた。


「あれをどう想う。何か竜族と亀車族をグチャグチャに合わせたような者がいたんだが。あれは俺らとそなたたちの間の子なのだろうか?」


「どうだ? 試してみるか?」


「試す?」


「子造りをだよ」


 俺がドギマギしてしまい返事もできずにいると、


「何だ? 私にれて、それで口説いて来た訳ではないのか?」


 と続ける。そう言う相手はいたずらっぽい顔をして、こちらを見つめ返しておる。


「いや・・・・・・」


「何だ。違うのか? つまらぬ奴だな。まあ、いい。純粋に玄武げんぶに――ああ、私たちはあれをそう呼ぶのだが――興味があったのだな。そなたの言った説もある。もしかして、師匠に尋ねたか」


「ああ。じっちゃんがそう教えてくれた」


「そうだろう。だが、私は違うと想う」


 そこで、また、いたずらっぽい瞳をして、こう尋ねてくる。


「聞きたいか?」


「ああ。是非にも」


い子だ」


 そんな言われ方をされるほど、年が離れているとは想えねえ。といって、亀車族の見た目から年が分かるほど、彼らと長く過ごした訳でもねえが。


「私は玄武は共通の祖先と想っている」


「共通の? 亀車族と竜族のか?」


「ああ。共に一つのものから別れ出たと考えておる。そしてそれだけではない。他の生き物も一つところから生じたのではないかと」


「面白い考えだな。確かに竜族と亀車族は似ておる。あれは実際に存在しているのか?」


「ああ。それは間違いない。あすこに出て来た様々な姿は実在の者たちだ。そなたと同様、ツチノコの魂と面会したんだよ。師匠の姿もあっただろう」


「似ている奴はおった。随分、若かったけど」


「そりゃあそうさ。師匠の若い頃だからな」


「なるほど」


「ただ、今も生きているかは分からぬ。それでもあの姿を保った子孫はおるかもしれぬ。この旅で会えればと期待しているんだ」


「俺も会いてえ」


「興味あるのか」


「ああ。とても。俺が追放されたのも、竜族の祖先について勝手に調べようとしたからなんだ」


「お前。追放されてたのか?」


「じっちゃんには言ってたけど」


「私には伝わってないよ。仕方ないか。師匠は自分の関心事しか話さぬからな」


「そういえば、さっきの話だけど、あの朱雀も俺たちと共通の祖先を持つということになるのか?」


 そこで共に首をかしげることになる。


「それにツチノコはどうなんだい? 魂があるんだろう。なら?」


「ツチノコは謎が多い。天空峡に行くことにより、少しは謎が解けるのではないかと、そう期待しているんだが」


 陽光の下ではきらびやかな虹色をなしたツチノコも、日に日に弱まる月光の下ではその色彩を薄れさせ、ほのかな燐光をまとうこととなった。その向かう先は、その光の源をまんとしておる。

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