第二十一話 『想定外の遭遇(楓視点)』


―――――――――楓視点―――――――――


「よし、ついてきなさい。」


「ついてこいって、どこに行くんだよ?」


神楽たちと別れた後、私達は私達で独自に動き出した。でも、渡しが取る行動は限られている。



「図書館よ、神楽なら敵のアジトやらなんやらを特定するのは容易だろうし。私達が出来るのはこのなんの情報も無い中で、敵の情報に繋がる可能性がある伝承を調べることだけよ。」


「にしたって、同業の異能力者に情報を聞くとか無いのかよ。」


「駄目ね、私達が相手するのは特級。そんな奴らの情報を知っている人物は限られてくるしそういう人たちに聞こうと思ったら確実に金と信頼がいる。わたしたちにはその両方が無いわ。」


「むむむ、、、」


「分かったらさっさと行きましょ、今は一秒が惜しい。」


現在地から最も近い図書館まではそんなに距離は無い。でも、最大限の注意を払って進まなければならない。情報を調べている時点で奴らの耳には入るはずだからね。


「あの、、、楓さん、、、」


「ん?なによ?」


「敵に見つかった時は、私の式神【ファンネル】を囮にして逃げるっていつのは、、、どうですか?」


「良い案ね、式神なら殺されても朱音の魂に回帰して復活する。それで行きましょ。」


「、、、はい!!」


いつもおとなしい朱音が、褒められたことで凄く喜んでるようでなにより。そんなこんなしている間にも、もう着いたけど。


「さて、こっからは気合入れていくわよ。」


「応!!」


「はい!」


3人でお互いを鼓舞して、いざゆかんと図書館の中へと入っていくのであった。



―――――――――――――――――――――



「おい〜楓〜全然わかんないんだけど〜。」


「アンタ普段本読まないからでしょ、少しずつでいいから読み解きなさい。」


「楓さん、ここなんですけど〜。」


「あぁ、はいはい。」


図書館に入って本を読み始めてから四時間が経った。雷兎は本を全然読まないからそもそも読み解くことができていないので論外。実質朱音と私で調べてるようなものね。


「よし、ある程度の情報は手に入ったわね。確認するわよ。」


「はい。」


「応。」


「この四時間で分かったことは主に二つ、一つ目は四凶の四体全てが災害級の強さを持っていて、街中で戦闘したらその街が崩壊するということ。2つ目は悪神である【四凶】は邪悪な素質のある人間に【加護】を与えているということ。」


「つまり、俺等が戦う犯罪者共はその四凶の加護を受けてるってことか?」


「その可能性が高いわ、だからもっと詳しく四凶の能力を調べる必要があるわね。」


そう、今日の調査で四凶が人間に加護を与えるということがわかったのはかなり大きい。でも、同時に神と戦うことになると分かった瞬間でもあった。


「でも、もう夕暮れよ。今日のところは1回学院に戻りましょ。」


「分かった、ずっと文字と触れ合ってて疲れたしな。」


「早く学院の美味しいご飯が食べたい、、、」


今日の収穫は上々、この調子で行けば案外早くに能力まで分かるかもしれないわね。


私達は読み漁った本達を元の場所に戻して、座っていた椅子とかをきちんと片付けてから、図書館を後にしようとする。













―――――――――――その時だった。







『オラァァァッッ!!!!!!!』


「ぎゃァッ!!???」


「朱音ぇぇぇ!!!!!????」


図書館から出た瞬間、突如として振り抜かれた黒い【大剣】。それは朱音の横っ腹を切り裂き、意識を完全に落とした。


(不味い!?完全に油断した!?)


朱音のファンネルを使って逃げるという戦法を、不意打ちによって完全に封じられたことに私は酷く動揺を覚えた。


『テメェ等だなァ!!!俺等のことをこそこそと嗅ぎ回ってるネズミ共はァ!!!!』


「てことは、アンタは、、、」


2メートルはあるであろう体躯に、それと同様に大きい【黒大剣】。そしてヒシヒシと感じる強烈な【圧】。


『【四凶】が一人!!!【橈骨】だァ!!覚えて死にやがれェェ!!!』


「【神焼炎・メギストスフレア】!!!!」


橈骨が雄叫びと共に、その黒大剣を私達に向かって振り降ろす。それは、食らったら確実に意識を失うであろう一撃である。


それを悟った私は、即座に神焼の弓矢を展開。神焼の弓矢と黒大剣は混じり合い、私達を強烈な爆風で吹き飛ばした。


「ぐぅっ、、、」


吹き飛ばされた先で、私は自分の右肩がざっく

り斬られてることに気づき手で抑える。


(私達が調査した後の気が緩んでる時を狙ってきた!!これは、不味いわね。)


「雷兎、私の合図で逃げるわよ。」


「はぁ!?朱音を置いていくのかよ!?」


「全滅するよりマシよ、今ここで殺り合うくらいなら人質にされる可能性に賭けたほうが幾分かマシだわ。」


「ぐぬぬ、、、」


爆風によって視界が遮られてる間に、私はすぐに雷兎に撤退の指示を伝える。朱音には本当に申し訳ないけど、現時点のベストは撤退なのよ。


「行きなさい!!!!」


雷兎に向かって叫び、私は飛び出した。その両手には神焼炎で作られた双剣が握られている。


『嬢ちゃん一人で大丈夫かぁ!!!!』


「充分よ!!」


振り抜かれる黒大剣、それに合わせて振り降ろされる炎双剣。それは激しい金切り音を鳴らしながら鍔迫り合いを行う。


『でも非力だなぁ!!!』


「うぐぅぅっ!!??」


(重い!!力比べじゃ勝負にならないわね!)


黒大剣は強引に振り抜かれると、私の上半身を容赦なく切り裂いた。


(どうせここで遭遇したんだ!情報しっかり集めてから逃げさせてもらう!!)


「【神焼炎・デルタサイスフレイム】!!!」


『【鬼神・絶衝打撃】!!』


炎双剣を手放して後ろに飛びながら術を発動する。すると私の翳した両手から神焼炎の鎌のようなものが5つ放たれた。ちなみにこれは神楽考案。


それは追尾式で、橈骨の首や心臓を目掛けて飛んでいった。だが、その全ては奴の異能を使ったであろう回転攻撃で薙ぎ払われた。


『【鬼神・轟轟烈波】!!!』


「【神焼炎・サザンブレスフレア】!!!」


そして次の瞬間には、黒大剣は振り抜かれており、紫色の斬撃がこちらへと飛んでくる。


対するこちらは、右手を前に翳して炎の威吹を放つ。


激突。


斬撃と威吹がぶつかり合い、辺りの建物を瓦礫へと変えて甚大な被害を及ぼすのを視認する余裕は私には無い。


(アイツの技に対抗するのにも攻撃を避けるのにも霊力を消費しすぎる!!あと血を流しすぎた!!)


ヒシヒシと感じる肉体の限界に、焦りを感じ始めた。全身からは激しい出血と激痛、そして速すぎる攻撃に神経がすり減る。


「ごめん、朱音。絶対に助けに行くから。」


そんなつぶやきを残して、私は勢いよく振り返って全力ダッシュした。


『あ゙!!!逃げんなテメェ!!!』


「【神焼炎・カラミストフレア】!!!」


後ろから迫りくる暴君に、冷や汗を垂らしながら術を発動する。すると私の全身から炎の霧が溢れ出して完全な目眩ましとなる。


(この敗北、、、絶対に忘れないわ、、、)


負けたという事実を重く、重く受け止めながら私は学院へと走るのであった。











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