第二十話 『厨二病は専門家を頼る』


「漣、情報収集をするのは良いんだけど俺等は素人だ。正直集められるかは怪しい。」


「あんなに自信満々に言っておいてわかんないのかよ、、、」


「だが、宛はある。餅は餅屋、情報についてならその専門家を頼れば良いのさ。」


楓たちと別れた後、俺と漣はある場所に向けて歩きだしていた。そこは異能界でもかなり有名な【情報屋】が唯一常駐している場所である。


(日本異能力協会本部【NINK】、新宿に存在する日本異能力界の要に【彼】はいる。)


「だが、金はどうするんだ?情報屋を頼るとなるとかなりの金額がかかるぞ?」


「そういうときのための共有財産だろ?安心しろ、俺はこれでも任務でかなり稼いでるからな。共有財産を使わなくとも払えるさ。」


「ゴチになります!!」


「オメェも半分払えや!!」


そんないつもどおりの会話をしながら、目的の地へと向かうのであった。




―――――――――――――――――――――





「でっか、、、」


「おぉ、、、」


もう夕方になってきた頃、俺達は目的地【NINK】へと到着した。うん、本当に馬鹿みたいにデカいな。


周りにもたくさん高層ビルがあるけど、それに劣らないサイズのでっかいビルが堂々と立っていた。確かに優秀な情報屋を護るなら最適な場所だな。


「うん、入ろうか。」


「了解。」


俺達はそんなビルの自動ドアを通って、受付らしき人の前まで歩いていく。


「すいません、今良いですか?学院1年生の神楽と漣です。【高梨さん】に用事があって。」


「高梨さんに、ということは任務ですね。承知しました。お通り下さい。」


受付の女の人は学生証を見せると、とても快く厳重そうな鉄扉を開けてくれた。


「着いてきて下さい。」


そんな扉を通って奥へと歩いていく。壁や天井はとても豪華に装飾されており、儲かってるんだなぁと思ってしまった。いやいや、こんな簡単に入れていいの?


それに、情報屋こと高梨圭介さんが四凶についての情報を持っていなければ終わりだ。断片的なものでも良いから知ってると良いんだが。


「着きましたよ、ここです。」


そんな言葉と共に動きを停止する受付の人。その奥には近未来的な扉で包まれた部屋があった。


「高梨さ〜ん!来客です〜!!」


「うぉっ!?ノックぐらいしてくれよ!?」


扉に施されたロック的なものを解除した受付さんは、ずんずんと部屋の中へと入っていく。そこには、ラフな格好で椅子に座りコーヒーを飲む御仁がいた。


(この人が高梨圭介、別名【無霧】か。)


「で、そこのガキンチョ共が来客か?帰んな帰んな、ガキには要はねえ。」


「高梨さん、あなたはガキだから大した金を払えないと思っていますね?」


「あぁ?そうだけど?」


俺達を見て、残念そんな目をして帰れと言ってくるのを見て、俺は即座に言い返した。そして、高梨さんが腕を掛けている机に、キャリーバックを投げた。


「5000万だ、これで話を聞いてくれるか?」


「、、、はッ。良いぜガキンチョ、座れよ。」


さっきとは打って変わってニヤリと不適合な笑みを浮かべた彼は座るように言ってきた。正色だなぁ。


「で?何を聞きたい?」


「特級指定異能犯罪者集団【四凶】について聞きたい、知っているか?」


「あぁ、、、知ってるけど。お前ら、もしかしてアイツらの討伐任務受けたのか?」


「そうだけど、なんかあるの?」


「悪いことは言わねぇ、罰金を払ってもいいから辞めな。無駄死にするぞ。」


四凶について聞きたいと言った瞬間、飄々とした高梨さんの雰囲気が一変して真面目な雰囲気になる。


「そこまでヤバイなら、なおさら知りたいな。」


「はぁ、、、しゃあない。金を貰ったんだ。教えてやる。」


ため息をついて渋々教えてくれる高梨さん。本当に金に正直だなぁ。


「まずアジトについてだが、四凶の連中はちょくちょくアジトを変える。襲撃のタイミングが決まったら調査してきてやる。」


「ありがとうございます。」


「次は奴らの詳細についてだな、【四凶】。四人の特級異能犯罪者で構成される犯罪者集団で、日本を根城にしている。構成する四人は一人一人がかなりの実力者で少なくとも学生が相手するような奴らじゃねえ。」


「ちなみに、使う異能とか分かります?」


「詳細までは分からねぇが、大体は分かる。そのためにまず構成員を説明してくぞ。」


そんな感じで、高梨さんは俺の全財産の半分を消費したのも頷けるぐらい良い情報をくれた。それをまとめるとこんな感じになる。



◆◆◆◆◆◆◆◆


コードネーム【混沌】 危険度 《特級》

身長180弱 戦闘タイプ オールラウンダー


1級異能力者との戦闘では、斬撃や光線などの全てを禍々しい渦のようなもので消失させていたらしく、無効化、もしくは吸収系の異能だと予測できる。


コードネーム【窮奇】危険度特級

身長165弱 戦闘タイプ オールラウンダー


1級異能力者との戦闘で、地震や噴火、津波や暴風などの災害を引き起こしていたことから災害を巻き起こす自然系統の異能だと予測できる。


コードネーム【橈骨】危険度特級

身長190強 戦闘タイプ 近距離


1級異能力者との戦闘で大剣を使用しており、戦っていた異能力者の武具を破壊して押し切るという芸当をしていた。このことから身体強化や貫通化などの異能と予測できる。


コードネーム【饕餮】危険度特級

身長180強 戦闘タイプ 近・遠距離


1級異能力者との戦闘で、銀色の溶解液らしきものを放出していた。また、双剣を使って近接攻撃も行っていることから近距離と遠距離両方扱える。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆




「コイツ等に関しては、俺も危険すぎてあまり近づきたくはない。なにせ、この情報を集めるために1級以上の異能力者がたくさん死んだからな。」


この情報を集めるために、学院を卒業したレベルの異能力者が複数人死んだ。それだけでこれから対峙する奴らの強さが分かるだろう。


(これだけじゃ、まだ襲撃することは出来ない。仕方ねえ、ここからは俺が戦闘して情報を集めるしかないか。)


「それに、四凶の四人が連携すると勝ち筋は無くなるな。殺るなら各個撃破か。」


「将来有望なガキンチョ共に、オジサンから1つアドバイスだ。」


俺と漣が様々なことを思考していると、お金をはらっていないとこまで教えてくれる高梨さん。


「戦闘になったら、【迷うな】。たとえ仲間が死ぬ選択だろうが勝つために迷うんじゃねえ。」


「迷わない、か、、、」


俺に、出来るのだろうか。目の前で雷兎が、漣が、朱音が、楓が死ぬかもしれない選択を、迷わず選ぶことが出来るのだろうか。


「その迷っちまう選択を迫られないよう、しっかり準備しろよガキンチョ共。」


「本当に、ありがとうございます。高梨さん。」


「おうよ、また来いよな。」


「勿論です。」



色んな異能力者の死を見てきた情報屋は、少し悲しそうな声音で別れを告げた。そして俺等はもう振り返らずに、ゆっくりと歩いてビルを後にした。


「こっからは自力で情報集めだな。さっき高梨さんが教えてくれたアジトを巡っていこう。」


「そうだな、最大限注意して行こう。」


そんな会話を最後に、地図を見ながら歩きだすのだった。




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