第十九話 『厨二病は無茶な任務に臨む』
「まぁまずは、良く生きて帰った。」
「本当ですよ世羅先生、あんなのを俺達1年生に向けるとかどうかしてますって。」
「右に同じく。」
「チッ!今回は役立てなかった、、、普通に悔しい、、、」
「でも、、、良い経験にはなった、、、神楽くんと楓ちゃんが居なかったら死んでたけど、、、」
全員まぁまぁな大怪我を負っていたから、アイツをぶちのめして宝玉を回収したら速攻で学院へと帰還した。学院には専門の治癒特化異能力者がいるからだ。
しかも、宝玉を売ったら4000万円の値がついたからな。これは一年生の共有財産になったから全員で相談して新しい武具とかが買い足せる。
「そこでだ、これから約2ヶ月後に二年、三年などの先輩との【交流戦】が控えている。建前は学年関係なく仲良くするというものだが、実際は各学年の戦闘能力と意欲向上のためだな。」
「先輩って、、、入学してまだ半年も経ってないのに、、、?」
「無茶な気が、、、します、、、」
先生の鬼のような発言に、雷兎と朱音が抗議を開始する。うん、分かる。正直いきなりすぎて困惑するよな。
「もちろん、先輩達は準1級や1級ばかりだ。三年には何人か特級だっている。だから毎年1年生はフルボッコにされるんだ。」
「わぁお、、、」
想像以上にヤベェイベントだった。え?なにこのイベント?サンドバック大会?
「でもな、今年は1年生にも特級が一人。そして、昨日の任務で【1級】に昇格した神楽がいる。やりようによっちゃ、二三年共に吠え面かかせられるかもだぞ。」
「おい神楽!!お前昇格してたの!?」
「あ、あはは、、、」
「師匠、なんで隠してたんですか?」
「昨日あのまま疲れて寝ちゃってね、、、朝俺にも通達されたし言うタイミングが、ねぇ、、、」
そう、俺は昨日の任務が評価されてついに1級へと昇格した。実際昨日はかなり異能も使ったし今なら楓とタイマンしてもまぁまぁ善戦できる気がする。
それに、叢加斗を殺して手に入れた新しい異能である【陽斜操術】。これは俺達を苦しめた陽光鏡だったり太陽光線、あとは鹿紫羅喪の【獄血爆操】との組み合わせ相性が良くてつかえそうだ。
「はいはいそこまで、話の途中だぞ。んで、交流戦を行うにあたって、今のままだとお前らは例年通りボコられて終了だ。」
「でも、何かあるんでしょう?」
世羅先生はこういう言い回しをする時、必ず【だが】という言葉を使っても俺等の期待を裏切らないんだ。
「良くわかってんじゃねえか、簡単に言えばお前らに足りないのは圧倒的な【戦闘経験、主に格上との戦闘経験の無さ】だ。二年、三年はこの交流戦以外にも異能犯罪者をとっ捕まえる任務をたくさんこなしてきて、どんな異能力にも対応できる【知識と経験】がある。」
「で、俺等に何をさせるんですか?」
「明後日から交流戦までの二ヶ月で、特級指定異能犯罪者集団【四凶】を壊滅させる。それが出来れば、十分ニ、三年にも対応できるだろう。」
世羅先生、俺等つい昨日死にかけたのになんかもっとヤバそうな相手をさせるのは鬼じゃないですか?あ、鬼だったわ。
「なんか言ったか?」
「心読んでます!?」
メチャクチャ怖い形相で睨まれて震え上がるわ。てかなんで心読めてんだよ。悟り妖怪かアンタは。
「はぁ、、、今回の相手は昨日の妖怪並ではない。なにせ、四凶を追っていた1級異能力者が【4人】殺られてるからな。」
「えぇ、、、」
「心してかかれよ、お前ら。下手売ったら全員死ぬ可能性のほうが高いんだから。」
世羅先生の珍しく、真面目な声音に少し恐怖と不安を覚えながらも、全員が拳を強く握りしめるのであった。
―――――――――――――――――――――
「まずは情報収集だな、皆の中に四凶について詳しい人はいないか?」
「あ、あの、、、現実の犯罪者集団のほうはわからないんですけど、、、伝承の方の四凶についてなら分かります、、、」
「おぉ!!ナイスだ朱音!!是非教えてくれ!」
特級指定異能犯罪者集団【四凶】、特級と言うのだからそれなりどころかかなりヤバイ集団なのだろうし、まずは情報収集が先決だろう。
「四凶とは、【混沌】(こんとん)【窮奇】(きゅうき)【橈骨】(とうこつ)【饕餮】(とうてつ)の名を持つ中国の悪神です。恐らくですが、かの神たちに倣ってこの名前なのではないでしょうか?」
「なるほど、ありがとう。」
「いえいえ、こういうのでしか役にたてないので、、、」
神の名を冠する異能犯罪者、なんか敵のくせにめちゃくちゃカッコよくてむかつくけど、伝承を詳しく調べれば異能なんかも分かるかもしれないな。
「1つ、俺からの提案があるんだけどいいか?」
「おう。」
「うっす。」
「今回の相手は特級、これまで色んな異能力者が殺られた異能犯罪者だ。故に未知数、分かっていることはメチャクチャ危険っていうことだけ。だから今回はグループで行動してもらいたい。」
正直、一人行動は危ないだろう。こちらが奴らの情報を探れば奴らにも気づかれるだろうし、複数人で行動すれば最悪1人を殿にして逃げて情報を得ることも可能だ。全員死ぬよりはマシっていう考えだ。
「ペアは楓と雷兎と朱音、そして俺と漣だ。実力的には2級の2人と特級の楓。そして1級の俺と実力換算で準1級の漣で釣り合いが取れる。」
「ちなみにだけど、接敵した場合は?」
「《速攻逃げろ》、相手の情報がわからない内は仕掛けないほうがいい。」
「わかった。」
雷兎の質問に対して、俺は釘を打つように答える。実際接敵した場合俺もすぐに逃げるつもりだ。同期が死ぬのは、勘弁して欲しい。
「集める情報として、アジトの場所、敵の人数と能力、そしていつどこにいるかだ。」
全員がこくこくと頷く。気合は十分覚悟は出来た、後は、やるだけだ。
「よし!!1年の力見せるぞ!!!」
「「「「「応!!!!」」」」」
発破をかけて、各々がペアとなって行動し始める。
だが、このときの俺等はまだ知らなかったのだ。殺り合う相手があんな【化け物】だなんて。
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