出迎えるは四凶、待ち受けるは災禍の連続
第十五話 『学院』
「残ったのが5人って、少なすぎじゃない?」
「仕方ないだろう、ただでさえ危険な異能力者に半端者を入れたらそれこそ死者が増えるだけだ。」
「だからといって、何十人もいたのに5人まで減るのおかしくね?」
昇降口らしき場所で、1年生の教室の場所を確認した俺と漣はさっそく教室に入って適当な席に座る。
周りの席にはたった10個しか席が無く、この学院が試験に合格できるのは精々10人程度と予想していたのが透けて見えるのがなんか嫌だな。
そして、残ったのは5人。俺と漣、あと上手く試験の妖怪を往なしていた小柄な黒髪ロングの女の子と、拳にナックルを装備している男の子。そして、妖怪を焼き殺した金髪赤眼の女の子、本条楓の5人である。
そして、時計の針が一周すると、教室の戸が開いた。
「はい、選抜試験ご苦労さん。私はお前らの担任になった【浅見世羅】だ。世羅先生と呼ぶように。早速だが自己紹介をしてもらおうか。ほれ、そこのお前から。」
そんな感じで入ってきたのは赤髪ロングで、気の強そうな女の人だった。どうやら担任らしい。うん、癖強いって。
だが世羅先生は本物だ、見ただけで分かる。彼女から立ち昇る霊力は歴戦の猛者の類だ。
そして世羅先生に指差されたのは、小柄な黒髪ロングの女の子だった。気の弱そうな子から行く辺り性格が本当に異能力者だな、世羅先生。
「ひ、【緋嶋朱音(ひしまあかね)】です、、、階級は2級異能力者です、、、よろしくお願いします。」
「よしじゃあ次はお前だ。」
「うぃっす。」
そんな感じで次に指差されたのは、ナックルをつけている少年だ。
「【傘異雷兎】、階級は2級。よろしく頼む。」
「じゃあ、そうだな。青髪のお前、行こうか。」
「【麻生漣】、階級は4級だ。よろしく。」
本当いつ聞いても漣が4級とか信じられん。漣はあの試験の妖怪と渡り合ってたのに、、、
「んじゃ、今年の麒麟児たちだな。神楽、行け。」
「あ、はい。」
そんな大層な感じで呼ばれると出づらいから本当に辞めてくれ世羅先生。ほら見ろよ、雷兎の視線がメッチャトゲトゲししいよ。
「えっと〜、【霜月神楽】です。階級は準1級。よろしくお願いします。」
「皆も知っていると思うが、こいつがあの神無月の娘を撃破した異能力者だ。」
え、なになにそんなにヤバイの麗華を倒したの。ちょっと待てよテンション上がるじゃん。
(こういうさ、、、何者だ!?こいつ!?みたいな展開も良いけど、こいつがあの!?っていう展開もいいよね。)
脳内で厨二病が炸裂している時には、お俺の自己紹介は終わっており、今年の一年生で1番注目を集めている彼女へとスポットライトがあてられる。
「【本条楓】、階級は特級。精々、同じ一年として私に泥を塗るような真似はしないでね。」
心の底からなにあいつ?って思ったけど、さっきの妖怪を瞬殺したあの炎を見た後だと反抗する気が起きてこない。う〜ん、悔しい!!
「さて、自己紹介は終わったみたいだな。今日はこれで解散となるが、明日からは本格的に異能力者としての訓練を行っていく。覚悟しておけよお前ら。」
世羅先生が締めると、各自が動き出す。本来ならば俺も帰りたいところなんだが、まぁ厄介事は避けられないわけで。
「おいアンタ、さっきの言い方は酷いんじゃねえのか。」
「なに?アンタ。雑魚が私に触るんじゃないわよ。」
「あぁ?やんのか?」
「そっちこそ、私に喧嘩売るのがどういう意味か分かってるの?」
もうさっき本条楓が自己紹介してた時点で、プッツン気味だった雷兎が、楓に突っかかると、楓もやる気になってしまった。
そして2人とも己の得物を抜き放つ。雷兎はナックルに霊力を込め、何故かバチバチと雷を迸らせている。え、なにそれカッコいいんだけど欲しいな。
そんでもって楓は両手を弓矢のような形に変化させ、先程妖怪を焼き殺した炎で弓矢を形作る。
(不味い、ここで戦闘が起きたらさすがに2人とも退学不可避だし俺等にも被害が及ぶ。ここはやるしかないか。)
「死になさい!!!」
「【雷兎(エレクトリカル・ヴォーパル)】!」
刹那。
雷兎の全身に雷が迸ると、雷兎のいた場所ら爆発して谷津自信はとてつもない加速で楓へとその拳を振り抜く。
それと同時、放たれる炎の弓矢。あれは本島に不味い。下手しなくとも雷兎は死ぬ。
(この数週間で、俺が異能をどれだけ獲得したと思ってる!!異能を組み合わせればなんとかお前の炎も受け止められる!!)
「【混沌操術・乱喰】✕【壊乱操術・腐絶壊】!!」
放たれる炎の弓矢と雷のパンチを、混沌操術の乱喰で乱し、中和させる。そして壊乱操術の腐絶壊で中和した攻撃を完全に破壊して消し去ることで攻撃を無かったことにしたのだ。
(うし、二人の攻撃を止められたし異能の動作確認も出来た。一石二鳥っと。)
「2人とも、いまや異能力者は人手不足の権化。ただでさえ貴重なんだから仲間ウチで死ぬのはよせ。」
「チッッッ!!」
「フンッ!しょうがないわね、、、」
いやさ、異能力者はどうしてこうも皆頑固で我が強いんだよ。まぁそういうところが無いとやってられない職業なんだけど。
そして、俺と漣がため息をつきながら教室から出て帰ろうとする時。現代の才能は屈辱と疑問に駆られていた。
(アレが準1級だと!?ふざけるな!!私の【神炎】を止めるなんて、、、特級でも難しいのだぞ!?)
「覚えたわよ、、、霜月神楽。私の方が上なんだから、、、」
強さを持ちすぎた少女は、静かに闘志を燃やし続けるのであった。
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