第十四話 『厨二病は脇役になる』
「クソッタレが!!!!」
今も俺に向けられるのは、容赦なく肉を削る長槍。それを間一髪で回避して後方に飛ぶと着地した瞬間には長剣を持った男が斬りかかってくる。
(5分で2人やられた!!!???めちゃくちゃ強いじゃねえかこの妖怪!!!???)
奴らが飛び出してきた時点で、残っていたのはたったの5人だったが、戦闘が始まって5分もすると2人が脱落した。
残ったのは俺と漣、そして金髪ショートヘアで、特徴的な真っ赤な眼を持つ女の子が生き残っている。
『考え事なんて余裕だねぇ!!!!!』
「考え事してても大丈夫なんだよ雑魚!!!」
後ろから振り下ろされる長剣を左手で弾いて、煽ってくる男に向けてさらなる煽りをぶちかます。
『隙ありぃ!!!』
「ぐっ!!??」
だが、こいつらの厄介な点は一対一ではなく、その圧倒的な連携である。まさに四位一体、4人全員が言葉どころか視線も交わさずに完ぺきな連携を行うことで獲物を確実に仕留める連携能力が俺を苦しめていた。
今も長剣を弾いた俺の背中を、長槍が削ってきやがる。そして次の瞬間には長剣が俺を切り裂く。このとてつもない連携に、俺は酷い苛立ちを覚えていた。
「あぁもうしゃらくせぇ!!【壊乱腐術・腐敗絶衝】!!!」
俺は雄叫びを上げながら、暴食で喰らい使用可能になった50の異能のうち1つを発動する。
それは壊乱腐術、1級妖怪【怒螺兎(ドルウ)】の保有していた異能で、全てを壊し、乱し、腐らせるという性質【壊乱属性】を霊力に付与する異能である。
今発動したのは腐敗絶衝、自分を中心にした半径20メートルに壊乱属性の付与した霊力を解き放ち、とてつもない衝撃を与える術だ。
それを近距離でまともに受けた長剣と長槍を持つ二人の男は、その全身を溶解させて地面の染みになる。
『なんちゃってぇぇ!!!!!!!』
『残念でしたァァァ!!!!!!』
だが、復活する。まるで粘土のように地面から再生して、その威容を放つ全身を解放する。
一体一体の性能はそこまで高くないし連携も異能で突破できるのに、俺がこいつらに5分苦戦しているのはこの復活能力のせいだ。
(このままだとジリ貧だな、再生能力を止めなきゃ敗北確定だ。)
「霜神楽雪(ファヌエル)を使うか、、、?」
切り札の使用を検討するが、これを使うにはまだ早い。今もつかっても再生されたら無駄に霊力と体力を消耗するだけだ。
『ブッコロ!!!ブッコロ!!!』
『死ねぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!』
「【獄血爆操・ヴェンデッタ】!!!!」
策を考える俺の正面と真後ろ、その両方に即座に移動して同時にその刃を俺に突きつける。そして、俺はその刃を受け止めるべく術を発動した。
術を発動した瞬間、俺の両手から大量に枝分かれ歯た血の茨が出現した。それは森のように形成され、俺に迫りくる凶刃を容易く受け止めるどころか、その鋭い尖端で喉笛を掻っ切った。
(だがこれも無意味、、、どうすればいい、、?)
俺は心の中で、ほんの少しだけ絶望を感じた。こいつと戦ってきた異能力者は皆こういう気持ちだったのだろう、いくら殺しても復活してその殺意をこちらへとぶつけてくる恐怖を。
だが俺はそんな先達とは違う点が一つあった。それはあの【イレギュラー】と共闘しているという最高のアドバンテージだ。
『はぁ、、、もう面倒くさいから死んでよ。』
そんな言葉と共に、金髪ショートヘアの女の子に繰り出されるのは大鎌の巨大な振り下ろし。
「は、、、???」
『ギャアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!痛いィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!』
俺は開いた口が塞がらないといった様子で、硬直してしまった。それが許されるのは奴らの再生を待っているときのみだが、それでも硬直せざる終えなかった。
(何が起きた、、、???)
俺の視界に映るのは、巨大な鎌が粉々の鉄骨粉に成り果てた姿と、全身を【白い炎】で染め上げた男。そして、酷く冷徹な視線ともはや神々しいと言えるほどの絶大な霊力を解放する金髪ショートヘアの女の子だ。
「私を殺すなんて百億年早いわよ、雑魚妖怪。」
俺はそこで気付いてしまった。神々しい金髪ショートヘアの髪に、その吸い込まれそうなほど美しい赤い瞳、そして、彼女の首から胸辺りにまで伸びている【狐を模したネックレス】を見てしまったのだ。
彼女の名は【本条楓】、月煌十二家ではない完全な一般家庭出身ながらも6歳のときに特級妖怪を討伐した最年少【特級異能力者】である。
「魂を通じて焼き殺したのか、、、」
大鎌を持っていた男が燃えると、他の3人も燃え尽きた。それは恐らくだが奴らの中にある魂のパスを通じて魂を焼き殺したのだと思う。
「おいおい、ワクワクするじゃねえか、、、」
俺は口角を上げて、ニヤリとした笑みを浮かべる。それは久々に拝見した圧倒的強者への憧れと無条件の畏怖、そしていつか勝つといつ意思表示でもあった。
(いや、俺脇役じゃん。)
気づいてはいけない所に気付き、勝手に少しだけがっくりとしながら門を通って校舎の中へ入る俺であった。
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