第十三話 『厨二病は嫌な予感がする』


「なぁなぁ漣、少し嫌な予感がするんだよな。」


「なんだ?」


「なんていうか、心がざわつくというか、少し空気がピリピリしているんだ。」


「そんなので分かるのか?」


俺は地面に腰をつき、空を見上げながらその嫌な予感を告げる。任務でたくさんの強い妖怪と戦ってきたせいか、嫌な予感で大体分かってくるのだ。


(この予感が何なのかは分からないけど、少し気を引き締めた方が良いな。なにせあの如月ライラが学長を務める学園だ、入学式で何があってもおかしくない。)


俺は少し前に見た最強のニヤついた顔を思い出しながら、その可能性を危惧する。そして、そんな事を考えていると時計の秒針は進み、ついに約束の時間が来た。


「何だ!?」


「門が、、、空いた、、、??」


周りのビクビクしていたり、緊張している様子だった学生たちが一斉に顔を上げる。その視線の先にはさきほどから鎮座している巨大門に向かっている。


門が開く、それと同時に新入生たちの頬には汗が流れ落ち、唾を飲み込むほどの緊張が走る。


『ようこそ、新入生諸君。今日は来てくれて感謝する。』


門が完全に開き、その歴史溢れる建物たちがあらわになるなかで、脳内に直接溢れ出す声。それほいつぞやの宴で聞いた最強の声音だった。


『学長からの言葉とかいう面倒臭い事をする気はない。私から求めるのは一つだ。』


俺は背筋に悪寒が走る、そしてそこで感じ取ってしまった。門の奥から感じる膨大な霊力の塊、間違いなく特級妖怪だろう気配を4つ、感じてしまった。


(あんのクソババア!!入学式なんて名目で騙しやがって!!これじゃあまるで、、、)


「《選別試験》じゃねえか!!!」


俺の叫びと共に破壊されるのは、門を覆っていた緑色の結界。それと同時に土煙が舞うが、その中から威圧感に溢れた言葉が飛び出してくる。


『ギヤッハハハハ!!!!!久方ぶりの地上じゃあ!!!!!!』


『うおっしゃ女はどこだぁ!!!!!好き勝手に殺しまくってやんよぉ!!!!!』


『うるさい、、、少しは静かにしてよ、、、』


『良いではないか良いではないか!!約60年ぶりの地上なのだから!!!!!』


土煙が晴れる、そしてそこから歩いてくるのは背丈も、格好も、声も、髪型もまったく同じで、違うのはその持っている武器だけな4体の人形妖怪だった。


一人は愉快そうに高笑いし、一人は殺戮衝動に刈られ、一人は耳を塞ぎながら俯き、一人はそれを見て穏やかな眼で微笑む。


(おいおい、、、完全に殺す気じゃねえかクソババア、、、)


俺は戦慄した。眼の前の4体から感じる殺意、霊力、存在感、そのすべてが上位生命体のそれであり、確実にまだ異能を持って半年も経たない学生に戦わせる相手ではないからだ。


『さて、手始めにこの餓鬼共を殺しつくそうじゃないか!!!!』


『喰って噛んで千切って飲んで破壊し尽くしてやる!!!!!!』


『それには、、、賛成、、、』


『ならば行こうではないか!!!!!!』


奴らの眼光がこちらへと向けられた瞬間、全力で霊力を放って抵抗する。


次の瞬間にはその威圧に耐えきれずにほとんどの新入生が失神する。だが、先程まで自信満々そうにくつろいでいた奴らは涼しい顔をして立っていた。


(絶体絶命、、、どうする主?逃げるか?)


(冗談はよせよ霜神、俺がこの状況に興奮しないと思ってんのか?)


「上等だよクソ妖怪共!!!!ぶっ殺してやる!!!!!」


『ならば生意気な姫様から頂こうかァァァ!!!!!!!』


俺が雄叫びを上げた瞬間、殺戮衝動に刈られていた長槍を持つ男が突進してくる。その槍の切っ先は俺の首へと向けられ、間一髪で回避しなければ貫かれる突きを放ってきた。


『抜け駆け、、、ずるい、、、僕も、、、』


「うぐっ!!!???」


耳を塞いで鬱陶しそうにしていた二本の短剣を持つ男が、漣へと斬りかかる。


『ひひゃひゃひゃ!!!!!ならば儂も参ろうかぁ!!!!!!』


「お触り禁止だクソジジイ。」


さっきまで穏やか目で見ていた戦斧を持つ男が、金髪ショートヘアで紅い眼を持つ少女に斬りかかる。


『お前等ずるいぞ!!!なら俺も!!!!』


「そんなついでみたいな感じで来ないでくれるか、、、」


最初に声を上げた愉快そうに笑っている長剣を持つ男が、いかにも普通な刀を持っている少年に斬りかかる。



『さぁ!!!!!始めようぜクソ異能力者共!!この特級妖怪【怨獄の四死妖】が相手だぁぁ!!!!!!』


俺に斬りかかってきた槍を持つ男が、自分たちの名を明かして戦闘開始のゴングを鳴り響かせた。







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