第7話 くそったれが!
と、思っていた。
バカンス休暇が終わり、それから二週間後に開戦し、血と汗と死臭にまみれた戦場に立つまでは。いや、夏真っ只中で熱中症で倒れて救護施設に運ばれるまでは。
「ご懐妊ですね」
「くそったれがー!」
思わず叫んでしまった。クソ! 避妊薬が効いていないじゃないか!
「どうされます? 後方に下がりますか?」
後方に下がる? そんなことできるのか? この状況で? 無理だ。絶対に無理だ! 堕ろすように言われるのが落ちだな。
ここ数週間で敵の動きが変わってきている。そんな状況で後方に下がるなんて、上が許すはずはない。
では堕ろすのか?
私を捨てた家族のように、私は子供を殺すのか?
それは絶対に嫌だ。どうしたら守れる?
脱走兵になる? いや、これは絶対に捕まるだろう。
一番いいのは戦死に見せかけることだ。死体がなくても、この状況であれば死んだと思わせることができればいい。
私は診断した医者に、お金を握り渡す。
「このことは黙っていて欲しい」
「ですが……」
「因みに人の目をごまかせるのは、あとどれぐらいだ?」
「人によりますが、中隊長ですと筋肉とさらしで押さえ込んでも、あと三ヶ月が限度かと」
「わかった。世話になった」
そう言って私は救護所をあとにした。
中隊長は上の命令に忠実でなければならないが、私は上から能力を買われているため、ある程度戦場を忖度できる立場だ。となれば、都合のいい地形の戦場を自分で選べは、偽装工作も可能ということだ。
くそっ! もし、あの男に会うことがあったら、一発殴ってやる!
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