庭にたんぽぽが咲いていた
とろり。
庭にたんぽぽが咲いていた
庭にたんぽぽが咲いている。
今日は晴れ。ほどよい日差しが注ぎたんぽぽも気持ち良さそうだ。日なたぼっこをしたくなる、そんな日。
黄色い花にミツバチがやってきた。甘い蜜を探しにきたのだろうか。
翌日も晴れ。暖かい陽気が眠気を誘う。
たんぽぽが変わらず庭に咲いている。
ひゅーっ
一瞬、強い風が吹き、たんぽぽは花びらを二、三枚落とす。ミツバチがその花びらを運んでいった。
翌々日は雨。弱くなったり強くなったり、時折、土砂降りの雨が降る。
窓からたんぽぽを見つめていると、茎からポキッと折れた。私は急いで庭に出てそのたんぽぽを拾い上げ、家の中に入れた。そして花瓶に水を入れ、茎から浸した。
さらに翌朝、私が目覚めるとたんぽぽは枯れていた。完全に枯れているわけではないはずだが、もう長くはないのだろう。
プルルルッ プルルルッ
電話がなった。それは友人の訃報だった。長い入院生活をしていたが結局は死んでしまったのだ。元々は元気だったのに、親しい友人をまた一人うしなった。
私は枯れたたんぽぽを見ると、また、悲しくなった。
人間も植物もいずれは死ぬ。私もいつかは死んでしまう。死んでしまっては全てが終わってしまう。
今はもう老いた体を痛めつけるように仕事をする日々。
「このままでいいのか」
「明日も生きられるのか」
そんな自問を繰り返す。
あんなにも美しかったたんぽぽが、一時の間に枯れてしまった。私も同じように――
夕暮れになった。さっきまでの雨は上がり、私の庭もいつも通りの光景。けれど、さみしさが漂っていた。別れの時を迎えたくはない、と。それでも――別れの時は訪れる。
黄昏時、私は儚い命に涙を流した。
/
庭にたんぽぽが咲いていた とろり。 @towanosakura
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