12/24 西洋剣




「邪魔をするな。吸血鬼」


 鋭い殺意を放出させ、冷淡な声で言った蒼は、攻撃していた西洋剣を寸止めした。


「無理だな。邪魔をする。銀狼と、いや、異種の存在を取り入れるな。おまえは十分強いだろ」


 肩にブレイドを乗せられ、カッティングエッジを首に当てられた暖は、それでも、快活な笑みを消す事はしなかった。


「あんたを滅せられていない。強くなどない」

「強いさ。ずっと俺に挑んでくる。おまえだけだ」

「あんたに殺されない限り。あんたを滅しない限り、永遠に戦いを挑み続けるだけの話だ。ぼくに限った話ではない。ぼくたち吸血鬼ハンターは標的が滅するか、ぼくたちが死ぬまで追い続ける」

「い~や。強いね。表情にこそ、態度にこそ、見せていないが、俺はいっつも、滅せられるんじゃないかって、心臓がバクバクしている。見せてないけどな」

「おちょくっているのか?」

「いや。本心を伝えている」

「あんたは………」


 重い。

 蒼は苛立っていた。

 身体だけではない。

 魂も心も。

 重くなる。

 この吸血鬼と対峙した時。

 この異変は、十二月一日から始まった。

 それからずっと今日まで。二十四日まで続いている。


 喚いている。

 いや、やさしく諭している。

 身の内から。響き渡る。

 この吸血鬼を滅するな。

 この吸血鬼と共に。


 剣を交えた。

 幾度も幾度も幾度も。

 数え切れぬほどに。

 そうして、わかる事がある。

 伝わってくる事がある。

 伝えたいと、欲する事がある。


 放り棄てられぬせいだ。

 不要な魂を。

 確かに、放り棄てられたはずだったのに。




(世迷言、だ)




 目を眇めた蒼は西洋剣を動かし、カッティングエッジを暖の首に食い込ませた。











(2023.12.24)



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