12/20 にんじんすーぷ




「兄貴」


 んあ、なんだ。朝食の催促か。まったく。ちょっと待ってろ。今日は何にするか。


「兄貴」


 ん。よし。野菜スープとコッペパンにするか。かぼちゃ、さつまいも、さといも、れんこん、めきゃべつのにんじんすーぷにしよう。おっと、しょうがも入れないとな。身体があったまるぞー。


「兄貴」


 よしよし。ちょっと待ってろ。すぐに作るから。ほれ。人型のジンジャークッキーを食べてな。手伝ってくれてもいいぞ。まあ、腹が減りすぎて手伝うなんて無理か。料理する前に食材を食っちまいそうだ。


「兄貴。ごめん」


 ははっ。謝らなくていい。


「ごめん。兄貴。ぼく」


 なんだ?もう盗み食いでもしてたのか。しょうがないやつだなあ。まあ、俺もこっそりしているから気にするな。って言いたいけど。お互いに気をつけような。吸血鬼だからって不摂生していると痛い目を見るって、どっかの吸血鬼が言っていたような気がする。


「ぼく、」











「………う、重たい」


 暖は自分の腹に乗っかっている蒼と銀狼を顔を持ち上げて見ては、後頭部を地につけて、目を瞑った。

 すやすやと気持ちよさそうに眠っているのだ。

 まだ起こすには忍びない。

 もう少しだけこのまま。




(そういえば、蒼が夢で、謝っていたような。なんだっけ。か)




 ほんの少しの苦しみと、多大なる温かさに包まれて、暖はもう少しだけと言いながら、もう一度眠りに就いたのであった。

 二度寝、最高と呟きながら。















「ごめん。兄貴。ぼく、一緒に。旅に行けなくなっちゃった」



















(2023.12.20)



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る