12/18 マーガレットの花冠
『あいつは吸血鬼ハンターとして。吸血鬼を滅する存在として、強さを求めた。結果。己を鍛えるだけでは満足できずに』
先輩は
『あいつは異種の存在を己の身体に取り入れることを考えて、実行した』
『取り入れることに成功したあいつの身体の中では、異種の存在の魂とあいつの魂が螺旋状に絡み合っている状態だ。混ざってはおらず、自我は浮かんでは沈んでを繰り返し。その内に、沈んだまま。異種の存在でもなく、あいつでもなく、まったく別の個体が誕生する』
『異種の存在もあいつも殺戮を繰り返すだけの存在だった。誕生する個体はさらに思考を棄てた存在だ。殺戮に何の感情も持ち合わせていない。ゆえに、何も届かない』
『蒼を殺せ。蒼だったものになる前に』
『俺は別のことに力を注いでいる。ゆえに、おまえがやれ』
白のマーガレットが咲き誇る花畑にて。
澪は手を動かし続けては完成させた四つのマーガレットの花冠を喜色満面で、蒼、暖、銀狼、そして自分の頭に乗せた。
「澪、すごいな」
「本当にすごいよ」
「………」
暖と蒼に褒められて、寝そべっていた銀狼にはそっぽを向かれたままだったが頭から落とそうとはしなかった様子を見た澪は、えへへと笑った。
「実は花冠を作るのは。確か、久しぶりだったので、時間がかかってしまいました。でも。何とかきれいにできてよかったです」
「ありがとな。大切にする」
「ぼくも!お揃いなんて初めて、でもないけど。手作りをもらったのは初めてだから嬉しいなあ。宝物にするよ」
「はい!」
澪は暖と蒼、そして、銀狼を見ながら自分の花冠に触れた両の手で、こっそりと拳を作ったのであった。
(2023.12.18)
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