12/16 みぞれ、のち、こなゆき






 ヤドリギの葉を七枚。

 乾燥させたカカオの実を百三十五粒。

 吸血鬼の牙を一本。

 集めた分裂魂数不明。

 生きたマンドラゴにこれらを食べさせれば、あ~ら不思議。

 あいつが生成されます。




「悪いな。吸血鬼ハンター。おまえより、こいつの願いを叶える」


 今は。


 死神は酷薄な笑みを浮かべてのち、そいつに名を与えたのであった。











 いたい。

 つめたい。

 さむい。

 いたい。

 あつい。


 本来は、天から地へと一直線に降り注ぐはずのみぞれがしかし、暴風により攻撃力を増して四方八方から襲いかかる。




 これは、果たして夢だろうか。

 蒼は茫然と、見た。

 己の魂、ではなかった。

 あれは、確かに肉体を持っていた。

 あれは、確かに肉体を持った己だった。

 あれは、




「ぼくは、」




 荒れ狂っていた風が、突如として消え去った。

 無風だ。

 いっそ、不自然なほどに。

 誰かの手が加わったのではと勘ぐってしまうぐらいに。


 みぞれは、ゆきとなった。

 こなゆきだ。

 いたさも、さむさも、つめたさも、あつさも、すぐには感じさせない。






「あんたと吸血鬼を殺しに来た」






 風はまだ荒れ狂ってくれればよかったのに。


 声を、肉体を、魂を、ゆきが吸収してくれればよかったのに。




「ぼくが、」











(2023.12.16)



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る