12/6 シクラメン




「くっくくく。おいこら、澪」

「え?え!?」


 死神こと澪は目を見開いた。

 先ほどまで蒼と暖と一緒にいたはずなのだ。

 確かにここは、白、赤、桃、黄、紫の色のシクラメンが咲き匂う花畑だったはず。

 その中で、蒼の魂がうっとりとシクラメンを見つめていたので、同じように見つめていたはずなのに、澪だけが、うっすらと灰と黒が入り混じる空間に浮いていた。


「あなたはどなたですか?」

「くっくくく。死神だよ」

「え!?では、私、消滅するんですか!?」


 黒いマントで全身も目元も隠している死神にそう言われた澪は、まだ嫌ですと大きな声で言った。

 大失態をやらかしたのだ。

 魂を消滅されてもしょうがないかもしれない。

 その罰を受け入れる、覚悟はまだできてないけど、しょうがないと半分ぐらいは考えている。

 だけど。


「私、まだ消滅されるわけにはいきません!蒼さんの魂を探し出して、蒼さんに戻すまでは絶対に!」


 澪は普段は影に隠している死神の鎌を顕現させると、死神に差し向けた。


「くっくくく。先輩に死神の鎌を差し向けるたあ。いただけねえなあ」

「すみません見逃してください!」

「くっくくく。別にてめえの魂を消滅させに来たとは言ってねえだろうが」

「………確かにその通りです。申し訳ありません。では、私に何用でしょうか?」

「ああ?そりゃあ決まってんだろうがよう。てめえは、死神なんだ」




 さっさと極悪者の魂を刈ってこいやあ。











(2023.12.6)



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