第62話 深夜に食べるラーメンってめちゃ美味しい

 ズズ…


 就寝時刻21時半をとっくに超えた現在23時40分近く。

 寝静まってるはずの部屋からは何かをすする音が響いていた。


 「ラーメンクソうめぇ…!!」


 「分かる。夜に、それもこういうイベントで食べるとチョーうめえよな!」


 「美味いけど300円はヤバい。」


 「ちょっとみなとまだ言ってんの?結局お菓子もあんなに買ったじゃん。」


 「ぐ…それは確かに。」


 この二、三時間前に売店でカップラーメンを買った俺たち。

 300円という法外な値段なので最初はためらったが同じ部屋のメンバーであるスバルの「300円で輝かしい思い出が作れるぞ」という言葉が妙に心に響いたので買う事にした。

 ついでにお菓子とつまみも大量に買ったのでもはやちょっとした晩餐である。


 「明日は水族館行くんだっけ?」


 同じく部屋のメンバーの雛森ひなもりがさっき買ったマグロジャーキーとやらをつまみながら言った。


 「うん。自由行動ってのが良いよな高校生って。」


 短髪のスバルがラーメンを食べながら言った。こいつはいつも帽子を逆向きに被ってるチャラ男なので帽子なし姿は新鮮だ。


 「だな。つってもお前らとは行動班は別か。」


 「そうだよー…。良いよなァ紫央しおと湊は。あんなに可愛い子たちと回れてよぉ…。ガチで羨ましい。」


 「はは…」


 返しづらいコメントが来たので笑って誤魔化しとく。


 ぴろぴろぴろっ


 すると俺のスマホから大量の着信音がした。

 見てみるとマツリさんからだった。

 こんな時間になんだろう。てかやっぱりみんなこんな早い時間に寝る訳ないか。

 ラーメンを机に置き、スマホを開く。


 『写真を送信しました』


 写真…?なんの写真だろう。気になってメールアプリを立ち上げた。


 「…!!!!!」


 「ん?どうしたんだ?」


 あまりの驚きで紫央に気づかれてしまったが慌てて「な、なんでもない!」と取り繕い、ベッドの壁際まで引っ込んだ。


 「や…八雲の写真…?」


 そう、送られてきたのは大量の写真、それも八雲のものである。

 ……せっかくかので見てみるか…。


 一枚目はホテルに着いてすぐのものっぽい。

 制服のままベッドで大の字になって寝ている彼女が写っている。女子だけなので気を抜いているのか少々服やスカートがはだけているのが気になるが素晴らしいほどに可愛いので許そう。


 二枚目以降もそんなオフショットのような写真が多く、特に部屋の風呂の浴槽になぜかちょこんと座っているのなんて可愛いけど意味不明で面白い。


 「あ。」


 しばらく見ながらスワイプしてくと俺と同じカップラーメンを美味しそうに頬張る姿が映っていた。

 やっぱり八雲も同じの食べてたんだと思うと同時に、ほっぺたを膨らませてもぐもぐしているのが静止画からも伝わってくる。


 「これで…最後か…。」


 次の写真に行こうと思ったがどうやらこれで終わりらしい。うーん…もっと見たかった…。

 これだけ良いものを見せてもらったので一言マツリさんにお礼言っとくか。

 正直めちゃくちゃ可愛かったから許可もらって保存したいぐらいだ。


 『マツリさん、ありがとう。めちゃくちゃ可愛いって八雲に伝えといて。』


 これでよし。ひと段落ついたのでスマホを閉じようとすると、既に既読のマークがついた。


 「は、早。」


 画面にマツリさんからの返信が返ってくる。


 『I made a mistake間違えちゃった!』


 「え?」


 ヴヴヴ…ヴヴヴ…


 その瞬間、他の人からメッセージが大量に送られてくる。マツリさんの画面から離れて確認してみると噂をすれば八雲からだ。


 『湊くん!!』

 『マツリさんから送られてきた写真!』

 『見たんですか!?』


 相当焦ってるのか一文区切りで送られてきている。なるほど…つまりマツリさんは俺に誤送信したってことなのか。


 『うん、見たよ』と返してみる。


 すると…


 『見ちゃったんですか!?』

 『恥ずかしくてお見せ出来ないようなものばかりなのに…。』


 『え?可愛かったよ?』


 『可愛くなんかないですよ…。湊くんに見せるならもっと意識して撮ったのにぃ…』


 いやいや十分可愛かったが…。


 『全部めちゃくちゃ可愛かったし大丈夫。それに友達といる八雲も見れて良かったよ。』


 『そうですか…?』


 『そうだよ。あ、これ見て。』


 俺は一度メールの画面から離れ、一瞬で写真をパシャリと撮った。そしてすぐに戻って送信する。送ったのは食べてたラーメンの写真だ。


 『俺ら、一緒の食べてる。』


 『本当だ!これ美味しいですよね!』


 『分かる。食べてる八雲も可愛かった。』


 『な…!可愛いって言い過ぎです…!これ以上言われたら恥ずかしくて死んじゃいますよう…!あとそれは忘れてくださいってばあ!』


 「はは。』


 画面越しに思わず笑ってしまった。


 『ごめんごめん。』


 『もう…言ってくださればちゃんと撮れてるのをお見せしますのに……』


 『え?良いの?』


 『もちろんです!湊くんにはちゃんとしたものをお見せしたいですから!』


 『さっきのも良かったけどなあ。』


 『そ、そんなにですか…?な、なら良いですけど…。』


 『よっしゃ。』


 普段ずっと一緒にいる分、こうしてメール上でやり取りするのが新鮮でなんだか楽しい。長い事話していたがそろそろ終えることにした。


 『それじゃあんまり遅くまで起きてちゃダメだぞ。』


 『はーい!湊くんもですよ!』


 『おう。じゃあおやすみ。』


 『おやすみなさい。』


 ——————


 これで終わったかのように思えたが…お互い名残惜しくてしばらくおやすみが何回か続いたのは二人だけの秘密にしておこう…。








 ☆☆あとがき☆☆

 本日もありがとうございました!

 深夜に食べるカップラーメンって背徳的で美味しすぎますよね…。ちなみに二人が食べてるのは安定のチキンラーメンです!

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