第61話 海だああああ!

 「おおー……!!」


 1日目の平和学習を終えた俺たちは旅行中の2日間泊まるホテルへと到着。

 結構歩いて見て回ったのでかなり疲れた。


 もちろん女子とは部屋が別なので八雲やくもたちとは別れ、紫央しおともう二人の班員と一緒に部屋に荷物を置きに行く。

 どうやらこのホテルはプライベートリゾートがあるらしく、ホテルの窓から見える海はとても綺麗だ。


 「うおっ!みなとあれ見ろよ!」


 唐突に紫央が窓を指さしたので見てみる。

 すると既に海で遊んでる奴らがいるのだ。


 「うわ早。疲れてねえのかよ…」


 「俺たちも後で行くぞ!」


 疲れ知らずの紫央はビーチで遊んで良いと知るや否やテンションが高くなっていた。

 俺は班員二人と顔を合わせて「疲れたのにな…」と心の中でつぶやいた。


 ——————


 ぴろんっ


 スマホから通知の音がしたので、荷物整理する手を止めて目を通してみる。八雲からのメールだ。


 『湊くん!もし良ければ海!見に行きませんか?いや、行きましょ!一階のロビーで待ってます!あ、マツリさんとクロエさんも一緒です!』


 なるほど…そういえば八雲も海見るの初めてなんだっけ。メールの文面からでもテンションが高いことが伺える。かわいい。


 「紫央。」


 「ん?なんだ?」


 「海、行くか!」


 「お!マジ?やっぱそうこなくちゃな!」


 声をかけると紫央は一瞬で準備を終え、扉の前にスタンバイした。


 「えー!?湊、お前さっき乗り気じゃなかったろ!」


 「すまんな、気が変わった。」


 俺たちは二人に留守を頼み、八雲と合流すべく一階のロビーへと向かった。


 ——————


 「八雲。」


 ロビーに着くと、三人で話している八雲が見えたので声をかける。

 すると三人とも振り返ってきた。


 「湊くん!遅いですよ!」


 「紫央くーん!」


 「湊くん、master師匠!」


 三人というのはいつもの八雲、クロエ、マツリさんの三人。しかしこうして改めて見てみると…うん、みんなすげえ可愛いんだよな。


 八雲は言わずもがな。さらりとなびく銀の長髪、低めではあるがスラっとしたスタイルで、まさに「美少女」という言葉を体現したかのような可愛さ。


 クロエは八雲とは違い、大人っぽい魅力がある。スタイル抜群で存在を強く主張する大きな胸は男子たちの視線を釘付けにしていた。腰まである淡いピンク色の髪がいたずら好きの小悪魔かの如く惑わせる。(紫央を)いつもはツインテールだが今日はおろしているらしい。


 二人よりもぐっと背の高いマツリさんは金色に輝くショートヘアがボーイッシュな感じでかっこいい。その透き通る碧眼で全員の心を鷲掴みだ。


 というように、もはやテレビに出るアイドルいや、それ以上に可愛い三人なのである。

 いつもとは違うこの沖縄という別の場所だからこそよりその事が強く感じられる。


 「げ、クロエいつの間に。」


 「あー!紫央くん今げ、って言ったでしょお!八雲ちゃんから誘ってもらったんだもん!」


 「ま、まあまあ。ビーチは地下から行けるらしいので早速行ってみましょ、みなさん!」


 八雲の提案に全員が賛成したのでエレベーターに乗り、ビーチへと向かう事にした。


 ——————


 ザザーッ……ザザッ…


 「わああ!すごいです!海ですよ!海!」


 ビーチに着くなり、小さな子供のようにはしゃぎだす八雲。


 「だなー!わ、見ろ!波たっけー!かっけえな!」


 「波高いのがかっけえってどゆことだよ…。」


 「湊くんはOcean、見た事あるの?」


 ハイテンションな二人に比べ、俺と同じように傍観していたマツリさんが聞いてきた。


 「うん。親の仕事で海外とか結構行ってたんだ昔。その時に何回か見てるよ。マツリさんも?」


 「そうだね。ボクん家はプライベートビーチがあったから二人みたいにImpressed感動はできないなあ。」


 「ぷ…プライベート…。あはは、すっげえなあ…。」


 「ふふ。でもああやって楽しそうな二人を見れるだけで満足だよ。なんだかボクも楽しくなっちゃう!」


 「同感、俺もおんなじ。…んでお前は行かないのか?クロエ。」


 マツリさんと話してる時、後ろで震えていたクロエに声をかけた。

 まあ…見るからに薄着で着てたから察しはつく。


 「こ…こんなに寒いなんて…聞いてないよ…!沖縄めぇ…裏切り者だ…!」


 「今日は割とずっと寒かったろ。もっと着てこりゃ良かったのに。流石にシャツとスカートだけはキツイだろ。良かったら俺の着る………」


 ちょうど言おうとした時、一旦区切りをつけたのか八雲と紫央が戻ってきた。

 とても満足そうな顔をしている。


 「ほらやっぱり寒そうじゃねえかよ。」


 紫央が震えているクロエを見て言う。

 それと同時に自分の上着を脱いでクロエの背にかけた。


 「着とけ。」


 「紫央くん……!」


 貰った上着を大事そうに袖を通し、ぎゅっと自分の胸を抱いた。


 「あったかい…紫央くんのぬくもりだぁ!」


 「お、おい!変な事言うなよ。…てか湊、お前も来いよ!海思ったより冷たくないぞ。」


 「俺は…」


 言いかけていた口をつぐむ。

 確かに…今ぐらい思いっきり恥ずかしさなんか捨てて楽しむのも良いな。


 ばさっ


 俺も着ていた上着を脱いで八雲に着せる。


 「え?湊くん?」


 「よし八雲!水合戦だ!」


 海に向かって駆け出すと紫央もバシャバシャと走ってきた。


 「よっしゃー!一番濡れたやつがアイス奢りなー!」


 「な、なんだよそれ!」


 すると八雲も俺の上着を着てこっちにやってきた。


 「負けません……よっ!」


 ぱしゃあっ!


 「うわっ、やったな!」


 「湊隙ありだぜ!」


 ぱしゃっ!


 「ちょ!あと八雲フード被っとけ!うお、ちょちょちょ!今はタンマ…!」


 「あはは!分かりました、今は一時休戦です。ならば青山くん……を!!」


 ばしゃああん!


 「なっガチかよ!!」


 「楽しそうだねぇみんな。」


 紫央の上着に顔をくっつけて幸せそうな笑みを浮かべるクロエ。

 隣で三人を眺めるマツリも同じく楽しそうな顔をしている。


 「だねっ。これがAdolescence青春……!precious尊い…!」


 ——————


 結局……アイス奢りになったのは俺だったという…。


 


 


 


 ☆☆あとがき☆☆

 本日もありがとうございます!

 平和学習ですが、僕の技量では上手く伝える事が難しいうえ、誤解を招かないためにもカットさせていただきました。

 ですのでいきなり海です!冬ですのでちょっとですけど!

 いつか夏になったら水着ネタやりたいですね…。

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