第57話 空港へ向かえ!
ピピピッ…
セットしたアラームが鳴り響く。
まだ覚醒しきっていない目を擦り、ベッドの上をまさぐってスマホを探す。
「5時…か…。」
今日から修学旅行。そのためにも朝7時前には空港に集合しなければならない。
「起きるか…」
重たい上半身を起こし、隣で布団にくるまってスヤスヤと眠る
「いつのまにか一緒に寝るのも当たり前になってきたな…。」
もはや当たり前かのように同じベッドで一緒に寝ている俺たち。
まあ…八雲の体温はあったかくて気持ち良いしなにより一緒に寝れる事自体嬉しい。
「八雲、そろそろ起きて準備しよう。」
「ん………」
もぞもぞとベッドの上で体が動き出す。
むにゃむにゃと口を動かして少しでも寝ようと体を丸めていく姿が実に愛らしい。
そんな彼女を見ているといつのまにか俺の目はパッチリと開き、同時にイタズラしたい欲が芽生えてきた。
母さんと父さんは今家にいない。
金曜は泊まっていったが土曜は仕事があるらしいので帰ったのだ。
今日はもう少ししたら来る予定だし
「よし…」
おはようのキスでもして驚かせてやろう。八雲からは結構されてたけどたまには俺からもしてみることにした。これ、かなりドキッとさせられるから仕返しだ。
念の為に周りを見渡して誰もいない事を確認し、そおっと頬に顔を近づける。
「おぉー…!キタキター……!!」
「……………ん…?」
八雲は寝ているし翠もいない。
さっき部屋は見………
よーーく目を凝らしてみると真っ暗な部屋に差し込む一筋の光が見える。
その光源を辿ると…リビングへと通じる扉だ。
急いでベッドから飛び降り、俺はその扉を勢いよく開けた。
案の定…その隙間から覗いてたのは…特徴的な赤毛のツインテールに子供のような背丈の人物、母さんだ…。
「わっ!ビックリした!!」
「ビックリした、じゃねえよ!何覗いてんだよ!」
「いやあ、起こそうと思ったら
子供のようにニパっと笑う母にもはや怒る気すら湧かない。
なので後ろで苦笑いしてる父に文句を言うことにした。
「父さん…。父さんもちゃんと母さんを止めてくれよ…。」
「え?あ、ああ。だめだよマリ。あんまりちょっかいかけたら。」
「はーい!」
本当に分かっているのだろうかこの母は…。
「ところで…」
すると父が俺の元へとやってきて囁いた。
「八雲ちゃんに…おはようのキスはできたのか……?」
「なっ………!!」
この親どもは……!二人揃って……!
「してないわぁ!!!」
——————
「おはようございます……ってみなさんどうしたんですか!?」
起きてきた八雲が俺たちを見るなり驚いた。
なぜなら俺の足元に父さんと母さんがしゅんとして座っていたからだ。
「おはよう。朝にちょっとあってね。」
「ちょっと…?」
「この二人、俺たちの部屋を覗いてて…」
「覗く…」
八雲が親二人を見た。
「八雲ちゃん、ちょっと見るぐらいなら良いよねぇ…?」
母さんがこの期に及んでまた命乞いを…。
「えっと…」
「ほら、八雲が困ってるだろ。」
「い、いえ!そうじゃないんです!」
俺が言うとなぜか急いで否定した。
「その…私はもうお二人を本当のお母様とお父様のように思っているので見られるぐらいなら全然……」
「へ?」
その言葉を聞いた途端、父さんと母さんが立ち上がり八雲に抱きついた。
「ほら!聞いたか湊!八雲ちゃんも良いって!」
「僕たちももう家族だ…遠慮しなくて良いんだよ八雲ちゃん。」
「二人とも…はい!」
そういえばそうだった。八雲はあんまりそう言う事を気にするタイプじゃなかったし、嬉しい事に親に懐いている。
まあこの際だし…こう言うことについえは吹っ切れる事にしよう…。
——————
「よいしょっと。」
時間も近づいてきたので荷物を運ぶ。
すると父さんが俺と八雲のカバンを同時に二つ抱えて車に詰んだ。
「お、お義父様!?そんな無理なさらないで下さい?」
「あはは。大丈夫だよ八雲ちゃん。力には自信があるからね。」
「そうだよ、父さんは昔っから力が凄まじく強いんだ。」
そう、父さんは力がめちゃくちゃ強い。
この細身の体のどこにそんなパワーがあるんだか。
「んん…早いねぇ行くの…」
車の中で翠が眠たそうな声で言った。
どうやら見送りには来てくれるようだ。
「もぉ、寝るのが早いよ翠。」
「はあいお母さん!」
荷物はどんどんと運ばれてついに俺たちは出発することにした。
「あ、湊。キミは真ん中に座りなよ。」
「え?なんで?」
「いいから。」
母さんになぜか真ん中に座れと言われたので理由は分からないが従うことにする。
「お願いします。お二人とも。」
「うん。眠かったら八雲ちゃん、寝てて大丈夫だからね。」
父さんが優しくそう言うと八雲はいえいえ、と言っていたがしばらく車を進めるとウトウトと眠ってしまっていた。ついでに翠もくぅと寝ている。
「なるほど…」
母さんがなぜ俺を真ん中に座らせたか分かった。
なぜなら二人とも俺の肩にもたれて眠っているからだ。こう言う事だったのか。
「湊。」
前の座席から母さんが俺の方へ振り向いてきた。
「ん?」
「お仕事で一緒にいられなくてごめんね。」
「な、なに急に言ってるんだよ。」
突然謝られたのでびっくりしてしまった。
「家の事をずっと湊に任せっきりだからね。僕たちはお前に頭が上がらないよ。」
「いやいや、父さんたちが働いてくれてるからだろ?」
「まあまあ、そう言う事にしておけってぇ。」
なんだろ。なぜだか妙に優しいなこの二人。
「湊、修学旅行楽しんでこいよ!」
「お土産楽しみにしているよ。」
信号で止まってるタイミングに父さんと母さんが俺の方を向き、笑顔で言う。
「お、おう。」
確かに今まで俺は一人で家の家事などを回してきた。
母さんも父さんも仕事を頑張ってる。理解していたがもしかしたら心のどこかに寂しさがあったのかもしれない。
だからこうして今、八雲と翠、父さんに母さん、みんながいるこの状況がとても好きだった。
だからこそ、この二人の言葉が心にグッときたのだ。
「めちゃくちゃ買ってくっから。待ってろよ!」
俺は再び笑顔で答えた。
「うん!」
「それは楽しみだ!」
車は空港へと走っていった。
☆☆あとがき☆☆
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