第52話 お風呂に入ろう

 「うわ、ちょ、ちょちょ!!」


 「だあああああ!八雲やくもちゃん強すぎだってえええ!!」


 「あいつら…楽しそうだな。」


 キッチンでとこさんと二人で料理しながらリビングでゲームをする八雲たちの方を眺めて言う。大はしゃぎでゲームをしている。


 「ふふ、お嬢様も楽しそうで何よりです。みなと様もご一緒されても良いのですよ?料理は私がやりますから。」


 「いやいや、とこさんだけにやらせるわけにはいかないですよ。それに二人でやった方が早いですし。」


 「それじゃあ、早く作っちゃいましょうか。みなさんもお腹を空かせていますでしょうし。」


 「はい!」


 料理をする手を早める中、またしても紫央しおやクロエの悲鳴が聞こえてくる。

 どうやら八雲が無双しているらしく、誰も勝てないらしい。

 まさか八雲がここまで強くなるなんて思ってなかったよなあ…俺とずっと一緒にやってたすいすら勝てないんだからすごいもんだ。


 「ゲームも出来ちゃう八雲ちゃん…かっこいい…!」


 …相変わらずマツリさんは八雲にベタ惚れしており、うっとりとした顔で眺めている。


 賑やかなみんなを背景に、俺も少し楽しげな気持ちになりながら料理に取り掛かった。


 ——————


 「うめえええ…!流石湊の飯だな!」


 「うんうん、久々に食べたよねぇ。めちゃ美味しい…。」


 「それは良かった。」


 テーブルに並んだ料理を前に紫央とクロエが絶賛してくれた。

 

 「ですよね!湊くんととこが揃えばどんな一流の方々にも負けませんよ。どれもこれもぜーんぶ美味しいです!」


 隣で美味しそうに箸を進める八雲が俺に言う。八雲がご飯を食べる時は本当に幸せそうに食べてくれるから嬉しいんだよなあ。


 しかし……


 「ま、マツリさん…?どうしたの固まって…。口に合わなかった…かな?」


 なぜかずっと固まってぼーっとしているマツリさんに恐る恐る聞いてみた。

 みんな大好き唐揚げを一つ食べてからずっとこうだ。


 「……ぺきだ…」


 「え?」


 「完璧すぎる…八雲ちゃんのお相手としてperfect完璧すぎるよ湊くん…!!」


 「あ、ああそう…」


 いつものやつだったので安心した。

 だけどここまで八雲の事が好きな人にこう言ってもらえると嬉しくなるもんだ。


 「マツリさん、この前の件は助かりました。ありがとうございますね、ああ言ってくださってとても嬉しいです。」


 追加でデザートの入ったお皿を乗せたお盆を持ってきたとこさん。

 なぜかマツリさんにこの前の件のことを話し始めたのだ。


 「…え?とこさん、先生してるのは秘密なんじゃ?」


 急いで立ち上がりとこさんの耳元で言った。紫央たちは知ってるけどマツリさんにまで言っても大丈夫だったのか…?


 「大丈夫ですよ、これくらいじゃバレないですって!湊様やお嬢様に聞いたと言えば…」


 「え?もしかして新美先生?」


 「…な、なぜ分かったんですか!?」


 「当たり前ですよ…」


 逆になぜこれでバレないと言う自信があったのか知りたいぐらいなもんだ。

 めちゃくちゃ動揺してるこの人に聞きたい。


 「え、えっとマツリさん!実は新美先生は……」


 「湊くん。」


 「ん?」


 「八雲ちゃんに先生までついてくれていてボクは安心だよ!良かった良かった…。」


 「そ、そっか。」


 あくまでこの人は八雲が一番だったのでとこさんがどうであろうと構わないようだ。

 助かった…とでも言うべきか。


 「危なかった…というやつでしょうか…。」


 「で、ですね…。」


 冷や汗を流しながらこそっととこさんが呟く。とこさんって…やっぱり意外と天然なのかもしれない。


 「そういやみんな、泊まってくのは良いんだけ何する?」


 「うーんそうだな…無難に映画とか見るか?それかゲーム。」


 「ゲームはもうやってたろ。映画か…。」


 映画と言われて前回桜ちゃんがうちに泊まった時にホラー映画を見たのを思い出した。

 八雲と翠…ガチガチにホラー映画苦手だったよな…。今回もこんな流れにならないと良いけど。


 「分かったぞ!ホラーゲームやろう!部屋真っ暗にして交代交代でやったら楽しそうじゃね?」


 「げっ…ホラー…」


 紫央が思ってた通りいや、それ以上の回答をしてきたのだ。これにはこの前で懲りた二人も反対するだろ……


 「ホラーゲーム…!おもしろそう…!」


 「ねー…私もやりたいかも…。」


 まさかの八雲も翠も興味津々で紫央の提案に賛成した。

 おいおい…同じ轍を踏まないでくれよ…。


 「なんだ湊、怖いのか?」


 にやあっと笑いながら紫央が俺を見つめてくる。


 「俺は良いんだけど…八雲、大丈夫なのか?」


 「え?何がです?」


 全く気づいていないらしい。まあ…本人がそう言うなら良いか。


 「じゃあホラゲーで良いよ。何個かあったと思うから俺選んどく。お前ら、風呂入ってきたら?片付けとくから。」


 「おっけー!じゃあ紫央くん…一緒にはいろ…?」


 クロエが紫央の腕にくっついて嬉しそうに言う。しかし紫央はめんどくさそうな顔してクロエをはがそうとする。


 「入らなねえよ…!女子たちで入ってきたらどうだ。」


 「ええー。じゃあ八雲ちゃん一緒に入……」


 「ぼ、ボクが!!!」


 クロエの言葉を遮ってマツリさんが勢いよく名乗り出た。だが…ここで八雲とマツリさんを一緒に入れてしまうと一面血の海になる事間違いない…。俺ん家の風呂がまるで殺人現場のようになってしまう…。


 「い、いや!八雲、クロエと風呂入ってきたらどうだ?ま、マツリさんは翠とでも!」


 「え、えええ…そんな殺生な…湊くん…」


 へなへなと椅子に倒れ込み、がっくりとしたマツリさんは俺にすがるような目で訴えてきた。ここで許すわけにはいかない…心を鬼にして断ることにした。


 「私は良いですよ。一緒に入りますか、クロエさん。」


 「いーよー!クロエ、八雲ちゃんと二人で話したかったもんねぇ。」


 「おい、八雲に変なこと吹き込むんじゃないぞ。」


 「はいはーい!過保護だなぁ湊は。」


 「流石の俺でも心配するぐらいだからな。」


 「ええ!?紫央くんも!?」


 「白々しい…。」


 こうして、風呂に入る順番を決めた俺たち。別に一緒に入る必要はないけど入りたいって言うんならまあ良いが…。確かにお湯節約できるし良いっちゃいいか。


 「んじゃ、クロエたち行ってくるね。」


 「お先いただきます。」


 「はーい。」


 「八雲さんに迷惑かけんなよ。」


 「分かってるよーだ!」


 うーん…ああは言ってるけど心配だな…。

 風呂から出てきた八雲が変なこと言い出したらクロエのせいにしておこう。







 ☆☆あとがき☆☆

 本日もありがとうございます!

 実は明日から三日ほど用事があり、更新できるかが少し分からなくなっていますのでご了承ください…。

 ですがなるべく更新できるように頑張りますのでよろしくお願いします!

 ⭐︎やブクマも頂けると嬉しいです!

 


 


 


 

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