第48話 八雲とお風呂!
「ふんふふ〜ん♫」
「おねえちゃん、機嫌いいね。なんかあったの?」
鼻歌を口ずさみながら夜ご飯の片付けをする
確かに今日の八雲はいつにも増して機嫌が良い。まあそれもそうだろうなあ。
「俺らのクラス調理実習があってな。八雲が作った肉じゃが、めっちゃ好評だったんだよ。」
「なるほどぉ…。それは嬉しいね。」
「そうなんですっ!」
片付けが終わったらしい八雲がニッコニコで俺の元へと来てナチュラルに膝の中にすとんと収まった。
「最近はもうこの光景にも慣れてきた。」
「はは…」
ニヤッとした口をパジャマの袖で隠しながら翠が言う。返しずらい言葉が来たなあ…。とりあえず笑っておくことにした。
「湊くんのおかげで調理実習が嫌じゃなくなりました!昔はあんなに苦手だったのに…信じられないです。」
「いやいや、俺じゃない。これは八雲の日々の努力の賜物だ。よく頑張ったな。」
「えへへぇ…」
膝の上に座る八雲の頭をわしゃわしゃと撫でる。すると振り返って自分の頬を俺の手にすりすりしてきた。
いつもだったら「自分なんか」と反論してくるトコだが今日はすんなり素直に受け入れてくれたようだ。
これも成長した証拠だな。それにしても…可愛い…。ほっぺめっちゃ柔らかいし…なんつうか猫みたいで愛おしい。
「あ、じゃあこうしよう。頑張った八雲にはご褒美をあげよう。」
「ご褒美?」
撫でる手を止めたのできょとんと見つめてくる。
「うん。なにか欲しいものとかして欲しいことあるか?」
「うーん……」
聞くと悩みはじめた八雲。
「お兄ちゃん、私には?」
「翠には…考えとく。」
「う、ウソ…マジ!?ありがとう!」
''ダメ''と一蹴されると思っていたのか俺の予想外の返答に喜ぶ翠。
まあ…そもそもこうして八雲と一緒にいてくれるだけでありがたいしな。当然だろう。
「あ!」
翠とやり取りをしていると八雲が声を出した。何か考えが浮かんだのかな?
「何か思いついた?」
「はい!先日、マツリさんに言われたのですが」
''マツリさん''と言う言葉を聞いて少し身構えた。何かとんでもないこと言われるんじゃないか…?
「''日本はお風呂で背中を洗いっこするんだよね''と。昔にもやったことがありますけどもう一度やってみませんか?お礼したいですし。」
「なるほどお風呂ね…それぐらいなら良い…」
まてまてまて…!
冷静に考えてみればお風呂って全然それぐらいじゃないだろ!?
今までなぜか何回も入った事がある方がおかしいもんな…。
「ダメ…ですか…?」
「いや、入ろう。」
八雲のおねだりを断れるものか。
あれこれ考えてはいたが即答した。
「お兄ちゃん…。」
すると翠が真剣な眼差しで俺を見つめる。
「お風呂って…声…響くから。あんまり盛り上がらないようにね…。」
「わ、分かっとるわ!」
——————
一緒に風呂に入ることになったので俺が先に入って待つことに。
せめてもの…として腰にタオル、湯の中に濁り湯の入浴剤をぶち込んでおいた。
(うー…ドキドキする…。)
シャワーを頭上から流し、滝行みたいなことをしていると…
コンコン
扉をノックする音が聞こえたので音の方を見る。
「………!」
うっすらと部屋の光で八雲の見事なシルエットが透けて見えてしまう。
その光景に一層胸の鼓動が高まる。
そういや…ちょっと待て…八雲って前から風呂に入る時、俺がいてもタオルとか付けてなかったよ…な…?
や…ヤバい…!ど、どど…どうしよう…
ガララ〜……
「し…失礼しまぁ…す…」
直前で重大な事実に気づくも八雲は扉を開けて入ってきてしまった。
急いで顔を逸らそうとしたが驚きすぎて間に合わない…!見…見えて…しま……
「タオル…巻いてる…?」
見てみればなんと八雲はタオルを巻いていたのだ。
しかしそれでも肌色の面積は多いし、逆にタオルがピッタリと巻かれることによって綺麗なスタイルが浮き彫りになっている。
だが……
「体…真っ赤じゃん…!!ど、どうしたの…!?」
まだお湯にすら触れていないのになぜかのぼせたように全身が真っ赤になっていた。
彼女は顔を手で隠しながら恥ずかしそうにもじもじしている。
「その…考えてみたら…お付き合いしてからお風呂に入るのって初めてで…。前は意識してなかったので…平気でしたけど今は……」
そう言いながら視線が俺の体へと泳ぐ。
「そんなにじっと見られると……は…恥ずかしいです……」
「かわいい……」
今の八雲を一言で表すならそう、可愛い。
たまらなく可愛い。
「もぉ…!湊くんのいじわる…」
「ご、ごめんごめん…。あまりの可愛さについ…。じゃあ俺から洗うよ、体。」
「は…はい!お願い…します…。」
座っていた椅子からどき、八雲と場所を交代する。その間も心臓はバクバクとまるで和太鼓の演奏のように鳴り響き、聞こえてしまいそうなほどだった。
「ええっと……前は自分で頼む……」
「は…い…。前はまだ…恥ずかしいので…。」
背中ごしでも八雲が恥ずかしがっているのが分かる。
でも''まだ''という言葉に反応してしまった…。まだってことは…。
「じゃあ…お願いします…。」
しゅる…
タオルが解かれ、俺の前にあらわとなった八雲の背中。
華奢でシミひとつない白さで宝石のようだ。
綺麗なくびれも女の子らしくてとても可愛い。
「あ、洗うよ…」
「お願いします…」
ボディソープを何回かプッシュして手に出し、恐る恐る背中にピトッと触れた。
「ひゃっ…!」
「ど、どした…!?」
触れると体をピクンと震わせて八雲が声をあげたので驚いて聞き返した。
「い、いえ…ちょっと驚いただけですので…どうぞ…。」
「…分かった。」
スー…スー…
すげえ…八雲の肌は驚くほどすべすべで触っているだけでこっちが気持ち良い。
それに柔らかくて…なんかこう…女の子って感じがする。細い体は触っていて折れてしまわないか心配になるなあ…。
八雲は相変わらず顔を赤くして俯いていた。
風呂の中は洗う際に出るボディソープの音とお互いの息遣いのみが聞こえてくる。
「ど、どう…?」
「気持ち良いです…。…あ、私もすぐに湊くんにしてあげれるように体、洗っときます。」
「ありがとう。」
俺が背中を洗いながら八雲が俺が洗えない前を洗う。
何気ないように感じるが、八雲が洗っているのを見ると…どこをどう洗っているか分かってしまい、なんて言うか非常に…ドキドキする。
それに巻いていたタオルを外していたので目のやり場に困る…。
ボディソープの音すらも俺の耳には刺激的だ…。
——————
「…私の方は終わりましたので次、湊くんど、どうぞ…?」
しばらくすると体をシャワーで流して立ち上がり、俺に椅子を譲ってくれた。
「お、おう…。じゃあよろしく…。」
「はい…!やるからには全力で湊くんを気持ち良くさせます…!」
椅子に座ると後ろからなぜかやる気メラメラな八雲の声が聞こえた。
「その言い方だとちょっと語弊があるからやめて…。」
でも…八雲に背中を洗ってもらうの…楽しみでもある。
☆☆あとがき☆☆
本日は2本立てでいきます!
本当は1話でおさめるつもりだったのですが…作者がお風呂イベントが好きなのでついつい長くなってしまったので2話に分割します!
2話目は21時ごろに投稿予定ですのでお楽しみを!
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